めがね越しの真実

ミハナ

めがね越しの真実

僕は無類のめがね好き。

そんな僕が、僕が思う理想のパーフェクトめがねという彼の存在を知ったのは7年前の新入社員歓迎会。

むすっとしてた彼は近寄り難かったけど、正直一目惚れで、アタックかけまくって了承を得たのはその一ヶ月後。

ノンリムフレームが似合う、超絶男前で、身長も高く、絶対にめがねを触らせなかった彼。

それだけでもめがねに絶対の警戒を払っていた彼が、ついに気を抜いたのが今の瞬間だったのだ。

これはもう千載一遇のチャンス、ノンリムフレームのツルが青いのも初めてマジマジと見たけども。

そっと寝てる彼から抜き取って、しげしげと翳し、慎重に掛けてみた時だった。



「これ、伊達めがね―――――! ! !!」


思わず叫んでしまって、慌てて口を閉じるも遅く、彼は怪訝そうに起きてしまった。

「なんだ、あきら、今更知ったのか……」

などと宣う事実。

かなり口説き落として、七年目。

こんな真実は知りたくなかった。

「僕がめがね好きなの知っての狼藉か! ! 騙すなんて最低だ! !」

「明……」

彼にぎゅうっと抱きしめられる。

嬉しいけど、嬉しくない。

「明が知ろうとしなかったのが悪い。オレはいつ知られても良かったんだ。明が好きだから、めがねだけで判断しないだろうと思ってな」

優しいバスの低音が耳を擽っていく。

さらりと頭を撫でられ、更にぎゅっと抱きしめる腕に力がこもった。

「けど、違ったのか……お前はまだめがねだけに固執してたのか……? 」

そう言われると僕も弱い。

パーフェクトな彼が、しょげている。気落ちしている。それは大層胸をときめかすんだけど!

でも! 騙してたことには変わりがない! !

「別れー「別れられるのか? お前家庭能力もないし、男が苦手だったオレを可愛げで口説き落としたのは明だろ。今更オレをフれるのか」


そう言われるとぐうの音も出ない。

伊達めがねでも似合っていたのは事実だし、彼を僕の可愛い容姿で口説き落としたのも、男を好きにさせたのも真実で。

そして、今更伊達めがねだからと言って、彼を嫌いになれないのも事実だった。


「……無理、大好きすぎる……でも、騙してたのは謝って」


僕が折れるしかなかった。

この七年で骨抜きにされた僕は、もう彼以外に考えられないのだから。


ソファに押し倒され、初めてめがね無しの彼を見上げたら、やっぱり僕の胸はときめいた。

「めがね無しのオレの姿でも惚れさせてやるから、覚悟しとけよ」

「あ、結構……っん、おこだったのね……」

彼が服の裾から手を入れる、それだけで甘い声を上げる僕に、彼はにやりと笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

めがね越しの真実 ミハナ @mizuhana4270

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ