第3話 とりあえず必要なのは倫理よ倫理

「君本当にふざけているね」

リオと呼ばれる男は先ほどまでのカラッとした笑顔とは打って変わってこちらを蔑んだような目で睨んだ。部屋の温度が3度ほど下がる。

「自分は他の世界で事故にあって、気がついたらメイドの姿をしていたと?」

「嘘はついてないんですけどね…嘘みたいは話で申し訳ないです」

「まあこの国で僕に嘘をつく人間なんていないだろうからそれはわかるよ」

どうやらこの男は相当な権力を持っているらしい。ただの3P変態男だと思っていたが…いつの間にか銃が抜かれたレッグホルダーは頼りなく私のふとももにへばりついている。

「まあ…持って3日かな?」

「3日…って何がです?」

「ん?君の命」

「え、死にます?」

「普通にね」

「普通に!?」

「だって当たり前だろ。フランネル家のメイドでもない。出生も分からない。その感じじゃ家族も友人も恋人もいないんだろ?それに…一国の王の大事な夜伽を邪魔したんだ。ああ、コレも持ってたね」

くるくると彼が手で回しているのは私のレッグホルダーにあった拳銃だ。彼の手にまるでおもちゃのように、役目を放棄して諦めた顔をしている。そもそも使い方も分からないし私の手にあってもおもちゃだったかもしれないけど。でもなんだか裏切られたようだ、初期装備をとられたみたいな悔しさがある。

「あ…」

「何?」

「えっ…というか王なんです?“王子”ではなく、“王”?」

「そうだよ」

金髪のサラサラした髪にシワ一つ無い白い肌。どう見ても20そこらの外見だ。どう見ても若すぎる。

「若すぎる」

「嘘つけない女は嫌いじゃないよ。でも自己紹介はこれで終わり」

ふわりと笑う若すぎる彼の表情がやけに不気味に見えた。

「選ばせてあげよう。一応珍しい来客だし、君がここから逃げ出すとは思えない。足腰弱いだろ?」

「まあ普通にデスクワークなので」

「3日、この牢で自分がこの城にたどり着いた経緯を事細かに記して打ち首になるか今この銃で自害でするか」

ひゅ、と喉から乾いた音が出る。ああ余命3日ってこんな気分なのか。それも打ち首…口の中に嫌な鉄の味が広がる、ような気がする。

「お、ようやく黙ったな」

「…」

「静かな女も嫌いじゃないよ」

「あ…、その書きます」

「ああそうだろうね。君に自害する根性があるとは思えなかったからさ」

「でも本当に…本当にあなたを殺そうとかそういうつもりはなくて…3日で無実を証明してみせます」

「無実を証明するのはいつも他人さ君じゃない」

若すぎる王はもう一度ニコリと微笑むと「これは貰っていくね」と銃を指で回しながら鉄の扉の奥に消えた。








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メイビーもっと、闇であれよ DJ家系ラーメン @s_yusurika

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