メガ根くん(KAC20248)
つとむュー
メガ根くん
「部長、ちょっと質問よろしいでしょうか?」
文芸部室で私が一人まったりしていると、ある男子部員がやってきた。
彼の名前は、
私は密かにメガ根くんと呼んでいる。
「今、掌編を書いているのですが、部長の意見をぜひ使用させていただきたいのです」
「使用って君、まさかフミヨモに載せるんじゃないでしょうね?」
「ギクっ……」
どうやら図星だったようね。
私はネット小説サイト、フミヨモを愛用している。
私の影響を受けたのかどうかは知らないけど、彼もそこに投稿しているのだ。
「君はこの間、ヨモマラソンについての私の意見を勝手に載せたよね? あれは『ささくれ』のお題の時だっけ?」
「え、えっと、その……、僕も部長の意見にすごく賛同してしまったので……」
「あれは酷いよね!」
沸々と怒りが込み上げてきた。
フミヨモでは今、ヨモマラソンというイベントをやっていて、私は290話ほど読んでいる。
作品を読めば読むほど良い賞品が抽選でもらえるんだけど、これ以上読むかどうか迷ってるの。
「あの賞品設定は!」
そうなのだ。
290話読んでいる時点で私は、「150名に当たる2000円分お食事券」の被抽選権を持っている。
が、300話を超えてしまうと「抽選30名」になって、当選確率が激減してしまうの。
母数が同程度だとすると五分の一、300話を超える人が半分になったとしても五分の二。これでは読む気がなくなってしまう。
「よくぞ載せてくれたって感じで、今でも感謝してる。だから今回も特別に協力してあげるわ。質問ってなに?」
勝手に載せたことは許せないけど、彼が同じ主張をしてくれたことは嬉しかった。
賛同者が増えれば、運営側も考えを改めてくれるかもしれないし。
「今ですね、「一つだけ好きなものを透明にできる魔法があったら」という話を書こうと思ってるんですが、部長なら何を透明にします?」
「ええっ、透明ィ?」
変な質問だけど、内容は興味深い。
さすがはメガ根くん。
一つだけ透明にできるとしたら——私は何を透明にしたいだろう?
腕を組んで天井を見上げながら考える。
するとある言葉が天から舞い降りてきた。
「そうだ、眼鏡!」
「眼鏡……ですか?」
「眼鏡を透明にできたら、コンタクトなんていらないじゃない」
私は近視だ。
眼鏡がないと遠くのものは何も見えない。
でもコンタクトにするのは怖い。だって目の中にレンズを入れるんでしょ? 痛くなることもあるって話も聞くし。
中学生の時からずっと掛けてる眼鏡。
もしこれが透明になったら、メガ根くんはどんな反応を見せてくれるのだろう?
ふと興味を抱いた私は、静かに眼鏡を外して彼を向く。
「ええっ!?」
目を丸くして私を見つめるメガ根くん。
眼鏡越しに見せてくれる嘘のない瞳が、私は好きなんだ。
「ナイスです、部長」
「でしょ? 君だって眼鏡が透明になったら嬉しいんじゃない?」
すっかり嬉しくなった私は、眼鏡を掛け直しながら訊いてみる。
眼鏡が透明になったら、同じく眼鏡を掛けている彼にだってメリットがあるはずだから。
しかしメガ根くんは、表情を曇らせた。
「あんまり嬉しくないかも?」
「そう? 眼鏡を掛けて入れるわよ、混浴に」
「超ハッピー!」
最高よ、メガ根くん。
浮き沈みのギャップが半端じゃなくて面白い。
透明にしたいものの候補として、さっき私は眼鏡を提案した。
さて彼は、いったい何を提案してくれるのだろう?
「ところで君は、その魔法を使えるとしたら何を透明にするのかな? 服以外で」
するとメガ根くんは眼鏡に人差し指を当てる。
キラリと瞳の奥を輝かせながら。
「僕なら文字を透明にしますね」
「文字を?」
「そうです」
「そんなことして意味あるの?」
「ありますよ。だってこんなこともできちゃいますから」
「ちょ、ちょっと君、どこ触ってんの!? 部室に誰も居ないからって」
急に頭に感触が降ってくる。
メガ根くんは私の頭に掌を乗せていた。
いやいや、背がほぼ同じだからって先輩に対してなでなではないでしょ。仮にも私は部長なんだし。
嬉しいニャー、とか絶対言ってあげないんだから。
「文字が透明なら何をしてもバレませんし、全年齢のフミヨモにも掲載できます」
「掲載できても誰も読めないじゃない。後で覚悟しなさいよ。やっぱりエッチなことしか考えてない」
エッチなことしか考えてない、と言われてカチンと来たのだろうか。
メガ根くんは、文字を透明にするメリットを饒舌に語り始めた。
でも私は頭に乗せられた手が気になってしょうがない。
この手がなでなでに発展したら、私はとろけてしまいそうだから。
「まあ、文字を透明にするメリットは分かったけど、このエッチな行為はいつまで続くの?」
本当はなでなでして欲しい。
そして彼の秘密を明かして欲しい。
「僕と部長がお互いの凄いところを褒め合って、その良さに陶酔するまでですけど」
それで私の頭を触ってるってことなのね。
きっと私が学年トップであることを知っているからそういう行動に至ったのだと思うけど、実は私は頭が弱点なの。
だから必死に強がって見せる。
「言っとくけど私、割と不感症よ」
そしてメガ根くんの前にしゃがんで彼の大切な場所を凝視した。
こうすれば、なでなでしやすくなるでしょ?
「ちょ、部長。そ、そこは僕の大切なところなんですが……」
「何言ってんのよ。君だって、私の大切なところを触ってるでしょ?」
「だって最高なんですもん、部長の頭って」
「当たり前でしょ。しかし君のは大きいよね?」
そうなのだ。
メガ根くんの大切なところはかなり大きい。
制服のズボンの上からその存在を存分に主張している。
実は私、最近弟のあそこを見てしまったことがある。
だって借りていた漫画を返そうと部屋に入ったら、オナニー中だったんだもん。
身内だから自慢するわけじゃないけど、すっごく大きかった。ああいうのを巨根って言うのかな。詳しくは知らんけど。
それ以来、どうしても男の人の前に目が行ってしまってしょうがない。
そしたら気付いたの、弟が制服のズボンを穿いたら、そんなに大きくは見えないのよね。ちょっと盛り上がってる程度?
でもメガ根くんは違う。制服のズボンを穿いていてもかなり盛り上がっている。どの男子よりも高く大きく。
メガ根くんがオナニーをしたら、どんな風になるんだろう?
それが私が彼をメガ根くんと呼んでる所以なの。
「僕、初めてなんです、女子にそんなこと言われたのは」
「弟のあそこみたい。自慢じゃないけど弟のあそこって結構立派なの。君だって別に隠すことないじゃない」
「弟さん、部長にあそこを見られちゃったんですか(ぐすん)」
きっと弟にとっては黒歴史なのだろう。
涙目になったメガ根くんの表情が、そう語っていた。
「もう、我慢しなくてもいいじゃない」
「ダメです、部長。そんなに吐息を吹きかけたらたら血液が大移動しちゃいます」
これはすごい。
しゃがんだまま息を吹きかけると、少しずつ前の部分が隆起していく。
これから一体、どれだけ大きくなるのだろう?
しかしメガ根くんは必死に我慢し始めた。
「フミヨモのお題は八百文字以上なら何文字でも問題ないんで、頑張ります!」
いやいや、そこまで我慢されちゃ、見たいものが見れなくなってしまう。
だから私は、単刀直入に切り出した。
「君はメガ根なんだから、やせ我慢なんてしないでさっさと血液を移動しちゃいなさい」
すると彼は言ったのだ。
目の奥に涙を溜めて訴えるように。
「そうなんです。僕はメガ根だから血液の移動量がすごいんです。このままでは貧血を起こして意識を失ってしまいます」
儚くもうつろな表情にドキリとした一方、私の頭の中は真っ白に。
ちょ、ちょっとそれは困る。
男子が倒れてきたら、私にはとても支えることはできないだろう。
私は息を吹きかけるのを止めて、慌てて立ち上がろうとした。
「なこと、あるわけないじゃないですか。勃起用の血液は脾臓に蓄えられてるんですよ。学年トップでも教科書に載ってないことには弱いんですね」
勝ち誇ったようにメガ根くんは私の頭を撫でた。
私はたまらず降参してしまったの。
「嬉しいニャー!」
メガ根くん(KAC20248) つとむュー @tsutomyu
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