はさみ手弱女
釣ール
はさみ手弱女
地方だけの問題だと思っていました。
夜の畑に高校生が帰る時に立っている老人。
その光景を見てから何人も上京していった。
行く場所がなく、ただ老いていく恐れを先人はよく分からない日常で他者に教えてしまう。
わたしはつい見てしまった。
逃れられない光景を。
いつか誰も残らなくなる未来からやってきたのかもしれない女性が老人をなでていた。
なぜ未来から来たのか分かったのは、女性がぶら下げていたブランドがこの年にはないものだったから。
なら人間なのだろうか?
それなのに現代の若者であるわたし達に厳しい老人がなぜあの女の人に笑顔を見せるのだろうか?
お迎え?
不謹慎だがそうとしか思えない。
この世は地獄。
なら楽しそうに振る舞う未来の女性に心を開くのも当然か。
さりげなく見えた錆びているハサミ。
なぜあれだけ旧時代なのだろうか?
何もない地方の何処へ消えたのか分からない二人。
ただもうここには戻らないのかもしれないとわたしは思った。
靴が残っていたから。
はさみ手弱女 釣ール @pixixy1O
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