ハマハマmeetsメガネs

ハマハマ

儚く散ったメガネたちへ


 ハマハマはメガネおじさんである。


 思い起こせばン十年前の、中学三年生の頃からの付き合いだ。


 必要な時だけ掛ける様にしていた高校一年の頃。

 クラスメイトのク◯シゲくんから『ハマジってメガネかけてる方が良いよな』という様な事を言われた事を覚えている。

 褒められてはいない様な、ワタシとメガネの相性を褒められた様な、なんとなく複雑な気持ちながらもアレから常時メガネ掛けるマンへと成長を果たした。


 割りと一途なワタシだが、その内実はメガネ取っ替え引っ替えだ。

 さすがにワンナイトメガネなんて事はないけれど。


 忘れもしない高校一年。

 豪速球を投げる先輩にメロメロになり、初めてのメガネはワタシから離れて行った。


 ――運動部全てが使う更衣室が大掃除でカバン置けず、ハンドボールコートのすぐ外にカバン置いてその中に剥き出しのメガネ入れといたら先輩の豪速球直撃で昇天――



 摂津峡という川。

 一緒にこの身を投げたのに、ワタシだけ助かってしまった事も……


 ――友人の結婚式で流す様の動画撮りに行った川。岩よじ登ってたら川に落っこちて、ざぶんと沈んで浮き上がれたのはワタシのみ――



 周りには外国人だらけの夜行バス。

 真っ暗な車内であんな……メガネの尊厳を踏み躙られる様な……


 ――ミャンマー行った時の長距離夜行バスが道凸凹なのに飛ばすもんだからめっちゃ揺れるのよ。だもんでメガネ外れて飛んでって、車止まった時に探したら……すでに事切れて――

※スペア持って行ってました



 まさか我が息子たちに……何人ものメガネを手籠めにされようとは……


 ――長男氏に三本、次男坊に二本。彼らが小さい頃に折られた――




 そしてワタシは生涯で一度だけ浮気した。

 ワンナイトコンタクトレンズ……


 二泊だか三泊だかでスノボに行った際。

 両手両脚を押さえつけられ……無理矢理……


 ――逆エッジで吹っ飛んで、背中から落ちてゴロゴロ斜面を転がり『はーびっくりした〜』なんて起き上がってゴーグル外したらメガネ折れてた。


 一緒に行ってた視力同じくらいの友人Hがスペアあるから貸してくれるってんで安心してたら、これまた視力同じくらいの友人Kが新雪に向かってプロレスごっこしてメガネ折りやがったんですよ。


 Hはさらに、予備でワンデー持って来てると仰った。

 Kは絶対に出来ないと慄いた。断固拒否の姿勢。


 『ならばワタシがコンタクトレンズと一緒になろう』

 メガネを裏切るフレーズを口にすると、むくつけき野郎どもはワタシの手を、脚を、目蓋を押さえつけたのです。


 どうしてもビビっちゃって目蓋が開かなくって。

 上目蓋、下目蓋、加えてなぜか両手脚をそれぞれ友人たちに押さえられつつなんとか入れて貰ったんですよねぇ。


 こんなこと言っちゃメガネがヘソを曲げるかもしれませんが、その日のスノボはすこぶる快適でした。曇らないズレない。


 けれどもあれ以来、一度もコンタクトレンズに手を伸ばした事はありません。


 だってワタシはもう、メガネ無しでお外出るの恥ずかしいんですもの。



 砕け散ったメガネたちよ――安らかに眠れ……

 今までありがとう。

 これからもどうぞよろしく。

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