ダンディーな男は地下アイドルマネジメントに置いてもダンディーであり続けたい

朱鷺羽処理

第1話「ダンディーな男は何があっても動じない」

 この世には2種類の男がいる。

 感のいい奴なら俺が言うまでもなく答えには辿り着いているだろうが敢えて言うならば、ダンディーかダンディーじゃないかだ。

 ダンディーがダンディーたるにはどう足掻いても外せない条件が二つある。

 まず一つ。何時いかなる事態でもクールに振る舞える屈強な精神力を持っている事。

 二つ目は美しいビジュアルだ。顔立ちだけで無く立ち振る舞い、ファッションセンスなどダンディーには要求されるハードルが多く存在する。

 だがその高い壁を乗り越えた先にこそ、漢の極地という物が存在する。そうは思わないか?


「信哉!いつまで寝てんの!早く起きてっ!」


 今日もか……心地良く深い眠についていた俺を覚ます甲高い女の声には聞き覚えがある。

 うっすら瞳を開けて時計を見るに時刻は11時といった所か……ダンディーな男にはその気がなくても女が付き纏って来てしまうのが世の理。

 ダンディーな男は高尚さだけで無く罪深さすらも兼ね備えている。そう、ダンディーとは同時に罪人でもあると言う事だ。

 まともに記憶していないが泣かして来た女の数は軽くポルトガルの人口は超えてくるだろうな。

 だがその涙の数だけ人は強くなれるのだと長年生きて来た俺は身に染みてわかっている。

 俺はその罪を背負いつつもまだ眠いので再びその瞼を閉じ再び暗闇へと誘う事にした。


「何しれっと二度寝しようとしてんだああぁぁぁぁ!!」


「おばぁぁぁぁっ!!?」


 背中に衝撃が走る。ふ、どうやら背負い投げをされたらしいな。

 だが強靭な肉体を持つダンディーな俺の前ではか弱いレディーの攻撃などでは傷一つつける事はできない。

 それが残酷ながらも間違いなく存在するこの世界の現実だいだだだだだだ。


「いつまでカッコつけてんのこのダンディーバカ!!9時には現場入りしなきゃって言ってたでしょうが!!バリバリ大遅刻かましてんの!現在進行形で!!」


 何時いかなる時も平静さを忘れずに取り乱してはならない。これがダンディーな男の鉄則だ。

 俺は澄ました顔を崩さずにひとまずわかばを取り出し寝起きの一服を決め込む事にする。


「なーにタバコ吸おうとしてんのよ!!大遅刻かましてるって言ってんでしょーが!!1秒でも早く準備すんの!!」


「万里菜。男にはどうしても外せないルーティンってもんがある。何度も同じ事を言うのは俺は嫌いだぜ。わかったらとっとと俺の中に戻ってカクヨムネクストでも読んでるんだな……ってあちゃちゃちゃちゃあぁぁぁ!!!?」


 俺の煙草は即座に女に奪われ俺の右手の甲に焼印が力強く捩じ込まれてしまう。

 だがダンディーな男はこの程度の痛みはどうと言うことも

「無いわけないだろおおぉぉぉ!!??一生物になったらどうするつもりだぁ!?」


「髭ボーボーの体毛ボーボーのおっさんが一丁前に肌気にしてんじゃないわよ」


 敢えて言い返さない。ダンディーな男ってのは野暮な事を最も嫌う。


「言い返せないだけでしょうが。これ以上うだうだ言ったらぶちのめすわよ」


 これ以上痛いのは嫌なのでそそくさと着替えて俺の担当する地下アイドル達が既に現場入りしてるであろうライブハウスへ今日も向かう。

 俺の名は|浮川信哉うかわのぶや45歳。この世で一番ダンディーな男でありたいと思ってるダンディーな男だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンディーな男は地下アイドルマネジメントに置いてもダンディーであり続けたい 朱鷺羽処理 @kareaman

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ