第3話 僧侶よ、前線に行くな
現れた無数のアンデット。
コメント欄にアンデットってランクいくつのモンスターが問いかけると、Dだという返答が返ってきた。それを聞いたクルークは腕組みをしながら『ふぅん』と呟いた。
「お前らのステータスならバフもデバフも要らねぇだろ」
そう言って壁にもたれ掛かるクルーク。いや待ってお願いだから仕事してくれ白魔道士。
バフかけてよと言おうとした瞬間、デュールが飛び出しアンデットを杖でぶん殴った。バラバラに砕け散るアンデット。うわ強……じゃなくて。
「僧侶が前線に出るなぁっ!!」
「いやだって俺だって戦いたいんだもん」
思わずツッコミを入れる。
そうだよね、デュールの事だから戦いたいよね! 戦いたいのはわかるけど貴方僧侶なんだから前線に出ちゃダメでしょ!?
チラッとコメントを見ると、
デュールはというと、低ランクモンスターだし少しくらいならいいだろと杖でアンデットを殴り倒していく。
「もーーーー! アステールも何か言ってよ!」
「僕に振るの!?」
そんなことを言いながら、コメント欄の『使えるなら光魔法使うといいぞ』という助言を見たアステールが光の雨を降らせる。
キラキラと輝く光がアンデットに当たると、アンデットは苦しみながら消滅していった。
「えーっと、デュール! 前衛はガラシアとテネシーに任せて君は後衛に―――」
「え、やだ」
「やだ!?」
即答しやがった。
それを見てケラケラと笑うガラシア。笑いながら近づいてきたアンデットに向かって拳を入れ、粉砕していく。
「駄目だ、おもしれぇ」
涙目になりながら笑い続けるガラシア。でもちゃんとアンデットは倒している。流石は器用な男。
杖でボコボコにしているデュールを呆れた目で見ていると、コメントがどんどん流れてくる。
『いやマジで大物すぎる』
『物理型僧侶笑』
『期待の新星が現れたぞこりゃ』
『てかほんとにレベル1のFランクか?』
『確かに』
『アンデットってDランクとはいえレベル1で倒せる相手じゃない』
レベル1にして秀でたステータスが500なのでとは流石に口が裂けても言えない。だって言っても信じてくれなさそうなんだもの。
もし証拠出せるなら出したいけどと考えながらアンデットを斬り倒していく。
『アンデットには聖水が有効だぞ』
マジか。
聖水なんか持ってきてないよ。聖水かぁ……どうしたものかと考えていると、どこからともなく液体の入った瓶が自分の目の前に現れた。
慌ててそれを手に取ると、『それ聖水!』『使え使え!』というコメントが。
どうしていきなり聖水が出てきたのか分からないけど、とりあえず聖水をアンデットに向かってばら蒔いた。するとアンデットの動きがあからさまに鈍り始める。
先輩冒険者のアドバイスが身に染みる。
そんなことを考えているうちにもデュールは杖でアンデットをボッコボコにしていた。もうツッコミを入れるの放棄しようかな。
ゾロゾロと出てくるアンデットを倒していく。そして最後の一体はデュールがとどめをさした。
『僧侶が前線に出てるとこ初めて見たわ』
『しかもつえぇ』
『俺さ、光魔法使えるならって軽く言ったけど光魔法って限られた人間しか使えないんだよな……』
『あっ』
『あの魔法使いも普通にすごくね?』
『しっかし、サポート職が仕事放棄してんのによく戦えたな』
そんなコメントがどんどん流れてくる。そしてあるコメントが目に付いた。
『ステータスとスキルが気になる。端末操作して俺達に見せてくんね? スキルの詳細も出てくるから』
へぇ、端末を操作してステータスとスキルの詳細を見たり見せたりすることが出来るのか。ちょっと操作してみると『ステータス』という表記がでてきた。
それをタップすると自分達の名前が出てきたので試しにアステールからステータスを表示させると、レベルが5つ上がっており、魔法攻撃が500から550まで上がっていた。
スキルの【魔力消費量軽減】はそのままの意味だった。魔法を使う時の魔力の消費量が減る。そして【魔力貯蔵】もそのままで、魔力を蓄えておくことが出来る。だからあまり魔力を回復するポーション等を使わなくて済むみたい。
ガラシアのレベルも5つ上がっていて攻撃力が550まで上がっていた。【強固な身体】はモンスターからの攻撃を受けてもダメージを軽減することが出来るし、【状態異常無効】はそのまま。状態異常攻撃を食らっても無効化させることが出来る。
クルークのレベルも5つ上がっていて魔法攻撃力が550になっていて、スキルの【バフ効果持続時間UP】と【デバフ効果持続時間UP】はそのままの意味だった。
デュールのレベルも5つ上がっていて攻撃力と回復力が550に上がっていた。スキルの【回復量UP】はそのまま、回復量が普通よりも上がるもの。もうひとつはアステールのスキルと一緒だから割愛。
自分のレベルも5つ上がっていた。攻撃力と魔法攻撃力が550まで上がっていて、そして気になるスキル【想像抽出】は頭の中で考えたアイテムをその場で、何も無いところから作り出して出現させることが出来る。もうひとつの【魔法の箱】は限界のない収納箱みたいなもので、でも実際に箱がある訳じゃなくて手をかざした物を何も無い空間に収納することが出来て、簡単に取り出せるらしい。え、普通に便利過ぎん?
『スキルも強いけど、何だこのステータス』
『レベル5で550って……有り得ねぇ』
『1パーティーに1台この魔法剣士の女の子が欲しいんだけど。スキルが万能すぎて』
『え、君ら何者??』
『Bランクの俺氏涙目』
コメントを眺めながらメンバーと休憩していると、自分の【想像抽出】スキルで甘いものが出せるかという話になった。
とりあえずマドレーヌを想像するが、流石に出てこなかった。作り出すことが出来るのは戦闘やサポートに使えるアイテムのみらしい。
試しに回復薬を想像したら回復薬が出現したからね。
「いやぁ、それでも便利だなそのスキル」
ガラシアがまじまじと回復薬を眺めながら呟く。
「ね、戦闘とかサポートに使えるアイテムに限られてくるみたいだけど、普通に便利」
ポーションとか回復薬とか切らしてもこのスキルさえあれば簡単に出現させられるし。お金が浮くな。
そんなことを考えながら持ってきていたチョコレートを頬張る。
チラリと同接数を見てみると100人ちょっとだったのが400人に増えていた。
「わ、見てくれてる人が増えてる」
やほー、と手を振るとコメントが流れてくる。
『そりゃあんな面白いもん見たらなぁ』
『人も増えるって』
『ほぼ物理型僧侶の影響だな』
ですよねー。
デュールのあの行動は誰でも印象残るよなぁ。僧侶なのに杖でボッコボコにしてのけたし。
『光魔法を使えた魔法使いの人もすげぇ』
『あんな爆笑しながらも空振りせずに攻撃入れてた武闘家も凄いよなぁ』
『僧侶は言うまでもない』
『魔法剣士も剣の腕高ランクレベルだったしな』
『白魔道士マジで仕事しなかったな』
コメントがどんどん流れてくる。
Dランクモンスターであるアンデットの群れに勝てたってだけでこんなにも評価されるとは思わなかった。
まぁでも自分達はFランクだし、ひとつ上のランクのモンスターを簡単に倒せたから褒められてもいいか。
後、本っ当にクルーク仕事しなかったんだけど。
「倒せたからいいけどさ!? クルークも仕事してよ!」
「僕が出る幕なかったろ」
「いや念の為かけてよ!?」
ギャンギャン騒いでいると、アステールが『まあまあ』と宥めてくる。
ダンジョンで騒ぐと変にモンスターが集まってきそうだしそろそろ黙るか……
そして少し休憩した後、自分達は立ち上がりダンジョンの奥へ足を進めた。
混沌を極めしゲーム実況者5人組は異世界転生してダンジョン配信で暴れ回る 雪兎(ゆきうさぎ) @Snow_0913
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