第2話 これでレベル1?

自分達は受付嬢のところまで行き、事の経緯を話した後、冒険者登録をしてもらうことになった。まずはアステールからステータスを見てもらうことに。



【アステール】

職業"魔法使い"

レベル"1"

攻撃力"50"

防御力"100"

魔法攻撃力"500"

回復力"0"

魔力量"1000"

スキル【魔力貯蔵】、【魔力消費量軽減】



魔法攻撃力と魔力量が……めちゃくちゃ高い。どういうことだろうと顔を見合わせる。こんなのレベル1のステータスじゃない。

次にガラシア。



【ガラシア】

職業"武闘家"

レベル"1"

攻撃力"500"

防御力"100"

魔法攻撃力"0"

回復力"0"

魔力量"200"

スキル【強固な身体】、【状態異常無効】




武闘家だから魔法攻撃力はゼロなのはわかる。が、攻撃力が500なことに驚かされる。

次にクルーク。



【クルーク】

職業"白魔道士"

レベル"1"

攻撃力"50"

防御力"100"

魔法攻撃力"500"

回復力"0"

魔力量"1000"

スキル【バフ効果持続時間UP】、【デバフ効果持続時間UP】



クルークがサポート職なのがなんだか頷ける。クルークにならば任せられそうなんだけど、やっぱりこっちも魔力量が1000になってるしスキルも普通に強過ぎやしないか?

次にデュール。



【デュール】

職業"僧侶"

レベル"1"

攻撃力"500"

防御力"100"

魔法攻撃力"0"

回復力"500"

魔力量"1000"

スキル【回復量UP】、【魔力消費量軽減】



デュールは『俺僧侶かよ』とか不満げだったけど、良く見てくれ、攻撃力500って書いてあるぞ、多分これ物理型僧侶だ。ゴリラ僧侶だ。そしてアステールと同じ【魔力消費量軽減】がついている。

そして最後に自分を見てもらった。



【テネシー】

職業"魔法剣士"

レベル"1"

攻撃力"500"

防御力"100"

魔法攻撃力"500"

回復力"0"

魔力量"1000"

スキル【想像抽出】、【魔法の箱】



自分は魔法剣士なんだ。魔法を使える剣士か……うん、かっこいいな。スキルの【想像抽出】と【魔法の箱】っていうのがなんなのか気になる。それにしても……



「この数値……何?」



本当にレベル1の段階で秀でたステータスが500もあるのがおかしい。

受付嬢に頼んでもう一度見てもらっても確かにステータスはそのまま。間違いはなかった。

不正だってしていない。

受付嬢は唖然としながらも自分達が受ける試験の内容を話し始めた。



「こ、これから皆様にはゴブリン20体の討伐をしていただきます。そして、倒した時に落とす魔石をこちらに持ってきてくだされば試験は合格となります。よろしいですね?」

「はーい」



受付嬢の説明を聞き、自分達はゴブリン狩りに出掛けた。

そして見つけたゴブリンに向かって軽く武器を振ると、ゴブリンはまるで柔らかいバターのようにするりと真っ二つに切れてしまった。その感覚に驚いていると隣から『ええっ!?』という声が聞こえてきて何事かと思いそちらを見やるとアステールが顔を真っ青にして固まっていた。

視線の先には氷の塊の中に閉じ込められたゴブリンが10体程。



「砕いてみっか?」



ガラシアがそう言って拳を構える。そして軽く氷の塊を殴ると、氷の塊はゴブリンと共にバラバラになってしまった。足元には10個の魔石が転がっていた。


残り9体………なんだけど。



「なにこれ!? いくらなんでも強すぎない!?」

「俺達サポート職の意味あるか?」

「無いな」

「いやそんな事ないからね!?」



デュールとクルークの言葉を即否定した後、わなわなと自分の手を見つめる。確かに転生ものの主人公たちは最強だったりするけれど、これはいくらなんでも強すぎる。強過ぎていっそ清々しいよ!?


自分達の力がとても恐ろしく感じてしまった。



「んじゃ。俺はこの杖でゴブリンぶん殴ってくるわ」

「デュール!?」



いや貴方僧侶!!

そう思っていたけれどこの僧侶、攻撃力500だったんだった。黙って見ていると、デュールが軽く殴っただけでゴブリンは地に伏した。そして魔石へと姿を変える。

あ、ゴリラ僧侶確定だわコレ。


そんな自分たちを見ていたクルークは徐に口を開く。



「『攻撃力増加』付与」



突然バフがかけられる。すると先程よりも攻撃力が上がったような気がした。試す為にゴブリンの群れの真ん中まで突っ込んでいき、武器を振るうとあんなに居たゴブリンがまるで豆腐のようにスパスパと真っ二つにあっさり切れてしまった。


そして8つの魔石がコロコロと足元に転がってくる。


あっさり20体、討伐してしまった……


しばらくの沈黙。それを破ったのはクルークだった。



「最強過ぎて笑えてくるわ。ま、それじゃあギルドに報告に行くかぁ」

「そ、そうだねぇ」



踵を返してギルドへと向かうクルークの後を追ってギルドへ戻ると、受付嬢は驚いたように目を見開く。

こんなにも早く戻ってくるとは思わなかったらしい。初心者冒険者ならもう少し時間がかかってもおかしくないのに自分たちはあっさりとやってのけてしまった。



「確かに……魔石20個ですね。では、正式に貴方がた5名をFランク冒険者としてギルドに登録したいと思います!」



そう言って受付嬢は笑う。

Fランクかぁ……どうやらランクはF、D、C、B、A、Sの6段階で構成されているらしい。私達は冒険者になりたての初心者Fランク。


受付嬢曰く、Fランク冒険者が受けられるクエストは薬草の採取やスライムやゴブリンなどの低ランクモンスターの討伐くらい。自分たちとしてはもっとなんかこう、冒険してみたいんだよねぇ。


レベル1でこのステータスならレベルが上がっていったらどんな風になるんだろうか。チートの中のチートになりそうで恐ろしい。


そんなことを考えていると、デュールが口を開いた。



「ダンジョンで配信したいので魔法具ください」



うーん、ド直球。

はよはよと急かすデュール。受付嬢は『ダンジョンは危険と隣り合わせなんですよ!?』と説得するがデュールは聞く耳持たず。



「俺たちのこのおかしなステータスなら簡単なダンジョンなら行けそうな気がしたんで」

「それでも……あぁですが、冒険者登録をした方には配信のための魔法具を渡す決まりですし……仕方ありません。ですが、無茶だけはしないでくださいね?」

「はーい」



気の抜けた返事をするデュール。

そして渡されたのは翼の生えたカメラのようなもの。受付嬢に設定の仕方を教えてもらいながら設定し、これでダンジョンに入ったりモンスターの気配を感知したら自動的に配信モードに切り替わるようになった。

そしてコメントも見えるようにしてもらった。


うん。こういうのゲーム実況していた時の生放送を思い出すね。



「それじゃあ早速ダンジョンに行くか」

「え、今から!?」

「嗚呼。腕試しだ腕試し」



デュールの言葉に思わず声を上げる。


どうやらデュールはFランク冒険者がどこまで行けるか試してみたいらしい。ここから近いダンジョンを受付嬢から教えてもらい、自分達はそのダンジョンに向かって出発することにした。




*




ダンジョンの入口まで来ると、魔法具がひとりでに動き出し、配信を開始し始めた。

自分達はというと配信者スイッチが入り、それぞれ自己紹介をし始める。



「どうも! 僕はアステール、今日冒険者になったばかりの魔法使いだよ」

「右に同じく武闘家のガラシアだぜ!」

「白魔道士のクルークでーす」

「不本意ながら僧侶になったデュールでーす」

「魔法剣士のテネシーでっす!」



すると初配信なのにも関わらず同接100人を超えた。どうやらFランク冒険者がいきなりダンジョンに行くという暴挙に出たので気になって見に来たらしい。

『死ぬなよー』とか『本当に大丈夫か?』とか心配のコメントが流れてくる。



「まぁまぁ、やってみないと分からないでしょう! て事でレッツゴー!」



自分はそう言ってダンジョンに足を踏み入れる。

かつりかつりと足音を立てながら奥へ奥へと進んでいく。その間にくだらない話で盛り上がっていると、『呑気だなー』『案外こいつら大物かもしれないぞ』というコメントが流れてくる。


しばらく歩いていると、前方からなにやら気配を感じて立ち止まる。そこには無数のアンデットがいた。いきなり戦闘かぁ……まぁいいや。



「やりますかー」



そう言って自分達は武器を構えた。

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