混沌を極めしゲーム実況者5人組は異世界転生してダンジョン配信で暴れ回る
雪兎(ゆきうさぎ)
第1話 5人まとめて異世界転生
自分達『チームコスモス』は5人組のゲーム実況者。自分で言うのもなんだけど、チャンネル登録者100万人越えの有名実況者グループだ。
そんな自分達はイベント会場へ向かう途中事故にあい、死んでしまったらしい。のだが―――気が付くと見知らぬ宿で目を覚ました。
辺りを見渡すとベッドとソファーの上で眠っている4人の男達。見た目は全くの別人だけど寝方的にコスモスメンバーだ。多分。4人とも寝方に癖があるから何となく誰が誰だかは分かった。
にしてもここは一体どこなんだろう……と考えながら備え付けられていた鏡に視線が行く。
鏡を見るとまるで別人だった。青いグラデーションのかかった白髪に水色の瞳。驚いてまだ爆睡中の4人を叩き起すと口々に自分の事を見て『お前誰!?』と叫んだ。
「自分だよ!
「うわマジだ! なんだこれ!?」
明るい金髪に橙色の瞳をした男、恐らく声的に
「僕こんなイケメンじゃなかったよ!? 誰これ!?」
それに続いて青みがかった黒髪に青い瞳をした男、こちらも声的に
「うるせぇなお前ら落ち着け。でもマジで別人だな……」
騒がしい2人に向かって言い放った後、鏡を見ながら呟く赤いグラデーションのかかった茶髪に赤い瞳をした男、声的に
「ふぁあ……マジだ。なんだこれ」
まだ眠そうにしながらものんびりと鏡を見つめる茶髪に緑色の瞳をした男、声的に
4人も完全に別人なんだけど……何故かどこかで見たような見た目をしている。どこで見た事があるんだろうと考え込む。
―――そうだ、思い出した。ファンの人達が描いてくれる自分達のイラストそっくりだったんだ。ファンの人達の想像上の自分達ってこんなに美化されてたのか……と鏡を見つめていると、慶多が何かを見つけたようで声を上げた。
「このスマホみたいなやつの配信閲覧アプリってのを見てみたんだけど、なんか……敵と戦ってるのを配信してるんだよ」
「ゲームだろ」
「いや、リアル」
どゆこと????
慶多の言葉の真相を確かめるために慶多からスマホのようなものを借りてその配信閲覧アプリを開いてみると確かに戦ってた。
生身の人間が、武器を持って、魔法を使ったりして戦っていた。まるでRPGみたいだ。
それを見ていた裕一が徐に『ファイア』と呟くと裕一の人差し指の上に小さな火の玉が出現した。え、何これ、どういうこと?
混乱している自分達を見て裕一が口を開く。
「僕達どうやら異世界に転生したらしいな」
「いやいや、そんな小説とかアニメみたいなことが起こるわけ……」
「でも、見た目も"コレ"もまるでゲームの世界みたいだろ? それに僕達は事故って死んでる。なのにこうして5人揃って何故か生きてる。容姿が変わってな。そして"コレ"が出来たってことはほぼ間違いなく異世界転生してる」
"コレ"と言いながら小さな火の玉を見せる裕一。
でも確かに裕一の言う通り自分達は事故にあって死んだはずなのにこうして生きてる。でも見た目はガラッと変わってるし魔法も使える。
よくある異世界転生ものの小説やアニメのように。
あながち裕一が言ってることは間違っていないような気がする。
そして配信閲覧アプリがあるってことは配信用のアプリもあるはずだ。そんなのゲーム実況者として配信せずにはいられない。
でもどうやって配信するんだろうか。見たところそれらしい機能はこのスマホのようなものには着いていなさげだ。
「とりあえず外に出てみるか?」
「さんせー」
一樹の言葉に全員が口を揃えて賛成する。
宿をチェックアウトし、外に出るとかなりの人で溢れかえっていた。そして周りの人たちも皆派手な髪色をしていた。
キョロキョロと辺りを散策していると、ドンッと誰かにぶつかってしまい尻もちをついてしまった。謝らないとと顔を上げた瞬間スッと手を差し伸べられた。
そこに居たのは綺麗な白髪をポニーテールにした黄色の瞳をした男性と、綺麗な黒髪をポニーテールにした黄色の瞳をした男性だった。
うわ、綺麗な人……と見惚れていると手を差し伸べてくれた黒髪黄色目の男性の眉が心配そうに下げられる。
「大丈夫ですか? お怪我とか、なさっていませんか?」
「ハッ……だ、大丈夫です」
そう言って男性の手を取ると、男性は微笑みを浮かべた。
「私はシェパードと申します。こちらは双子の弟のグウィード。貴方がたのお名前は?」
どうしよう、なんて答えるか……4人と顔を見合せる。2人の名前的に英名の方が良さそうだよなぁ……
英名か……自分が実況者として名乗っていた名前はテネシー。折角だし今日から自分は合歓垣 思羽を捨ててテネシーとして生きていこうかな。
「自分はテネシーって言います」
そう答えると、4人は察してくれたのか実況者としての名前を名乗り始めた。
「僕はアステールです」
「俺はガラシアだぜ」
「僕はクルーク」
「俺か。俺はデュール」
アステールが真琴。
ガラシアが慶多。
クルークが裕一。
デュールが一樹。
それぞれ名乗るとシェパードさんはまた微笑みを浮かべた。するとずっと黙っていたグウィードさんが口を開く。
「シェパード、そろそろギルドに行くぞ」
「あぁ、そうですね。」
ギルド……?
「ギルドって……?」
思わずそう問いかけると、2人は目を見開く。
まるで知らないのかと言いたげな表情だ。いやだって、知らないものは知らないんだもの、仕方ないじゃないか。
「驚きました……ギルドを知らない方が居るとは」
「ギルドっていうのは簡単に言うと冒険者がクエストを受けたりする場所だ。お前らは見たところ冒険者じゃなさそうだな」
グウィードさんの言葉にこくこくと頷いていると、シェパードさんは顎に手を当てて考える素振りを見せた。
「生活するにはお金が必要です。お金を稼ぐには冒険者になった方が手っ取り早いのですが……危険と背中合わせなので気軽になってみませんかとは言えな―――」
「良いじゃないか? 冒険者になろうぜ」
「そうですよね、なりたくな…………んっ?」
一樹……じゃなくてデュールがどこか楽しげに言うと、シェパードさんは驚いたように目を見開く。そうだった、デュールは根っからの戦闘好きでゲームでもいつも前線に出ては死んでを繰り返してたっけ。
後、負けず嫌い。
そして普通にゲーム強い。
でもこの世界で冒険者になれば自分達でモンスターと戦うことになる……んだよね。ゲームのキャラクターを動かして戦うのとは訳が違ってくる。
下手したら、死ぬ。
―――けれど4人はなんだか乗り気だ。まぁ、かく言う自分も乗り気なんだけどね。
乗り気な自分たちを見て、シェパードさんはやれやれと言った様子で溜め息を吐く。
「では、私達についてきてください。道中でギルドで出来ることなどをお教えしましょう」
「助かります!」
シェパードさんの言葉にアステールが答えると、シェパードさんは自分達の前を歩き始める。自分達はシェパードさんの後を追うように歩き始めた。
そして、ギルドで出来ることをシェパードさんに教えてもらった。
まず、冒険者登録。その時に試験を受けることになるのだが、試験の前に自身の職業とレベル、ステータスを確認することが出来る。
次に魔石の換金。モンスターを倒すと魔石というものを落とすらしい。それをギルドで換金してもらってお金に変えたりする事が出来るらしい。
そして最後にクエスト受注。冒険者のお金稼ぎはクエストをこなして報酬を得るのが主になってくる。
こんな所らしい。
「他に質問などありますか?」
「あ! そうだ、ダンジョン配信を見たんだけどさ、あれって俺達も配信したりできるのか?」
ガラシアがそう問いかけると、グウィードが答えた。
「嗚呼。冒険者登録をしたあとに支給される魔法具がダンジョンに入ったりモンスターを感知すると自動的に配信モードになる。まぁ、設定が必要になるがな」
「へぇ……そりゃ便利だな」
グウィードの説明を聞いてクルークが呟く。
「設定をしっかりすれば先輩冒険者からのアドバイスコメントも見ることが出来るようになりますよ」
先輩冒険者からのアドバイスコメントか。確かにそれは有難いね。
そうこうしている内にギルドに着いたらしい。『ここですよ』とシェパードが扉を開けるとそこには大勢の冒険者の姿があった。
「んじゃ、早速登録しに行くか」
「デュールめちゃくちゃ乗り気じゃん」
あからさまにワクワクしているデュールを見て自分は苦笑いを浮べる。でもまぁ、自分の職業とかレベルとかステータスとか気になるし、早く見てもらおう。
自分達は意気揚々と受付嬢の元へと向かった。
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