服が透けるめがね

水曜

第1話

才能。

生まれつきもった天賦の才。

ただ才能と一口にいっても色々とある。


体が大きい。

足が速い。

暗記が得意。

絶対音感がある。

などなど。


トモヤには誰にも負けない唯一の才能があった。それは目が良いことだ。特に何をしたわけでもないのだが。天才的に視力が並外れていた。二キロ先の人影を見分けることさえできる。そして、特にケアをしているわけでもないのに視力が落ちることは一切なかった。


そんなトモヤが今、眼鏡店を訪れている。


ある日、小さな町の眼鏡店で、突如として「透明めがね」という商品が登場した。このめがねをかけると、服が透けて見えるという効果があり、その奇抜なアイデアに人々は大興奮した。


「本当に服が透けて見えるの?」


トモヤはこの透明めがねに興味津々だった。服が透けるめがね……そんなけしからん……いや、夢のようなアイテムが実在するのだろうか。もし、これが本物なら。あれやこれやら、できてしまうではないか。けしらん、本当にけしからん。けしからんけど、本当だったら是非欲しい。


「もちろん本当です。ばっちり透けますよ」


トモヤの質問に店員は自信満々に答える。嘘を言っているようには見えなかったが。念には念を入れておくことにする。何せ物は透明めがね。ある意味、人類の夢ともいえるようなアイテムだ。


「本当の本当に透けるんだね?」

「本当の本当に透けます」

「本当の本当に本当に透けるんだね?」

「本当の本当の本当に透けます」

「本当の本当の本当の本当に透けるんだね?」

「本当の本当の本当の本当に透けます」


しつこいくらいに確認をとるトモヤ。それに律儀に付き合う店員。


「本当の本当の本当の本当に本当に透けるんだね?」

「本当の本当の本当の本当に本当に透けます」

「本当の本当の本当の本当に本当に本当に透けるんだね?」

「本当の本当の本当の本当に本当に本当に透けます」

「本当の本当の本当の本当に本当に本当に本当に透けるんだね?」

「本当の本当の本当の本当に本当に本当に本当に透けます」


もう必死である。


「お客さん、そんなに心配なら試着してみますか?」

「是非お願いします!」


ついに禁断のめがねを手にして、おそるおそる掛けてみる。

すると……ぐにゃりと世界が歪んだ。


「あの、視界がぼやけて何も見えないんだけど!」


周囲を見渡しても、人らしきものが何とかぼんやり判別できる程度。

眼がやたらと痛いし、吐き気すらしてくる。

そこに店員が呑気に言った。


「ああ。その透明めがねは度が究極的にきついですから。でも、服は確かに透けていますよ」



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服が透けるめがね 水曜 @MARUDOKA

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