めがねで食費を抑える?

三国洋田

第1話 めがね完成

「ついに、ついに、できたぞ!!」


「何ができたんすか、蛾値女がねめ博士?」


「これだ! 『めがね』だ!!」


「博士、疲れてるんすか? 休んだ方が良いんじゃないっすか?」


「何を言っているんだね、助手君!? 私は元気はつらつだぞ!?」


「いや、でも、それ、どう見てもフラスコに入った黄色い液体なんすけど……」


「違う! これは『めがね』だ!!」


「すぐに救急車を呼んでくるっす!」


「必要ない!? 私は正気だ!!」



「助手君、これは視力を補う道具の『眼鏡めがね』ではないぞ! 『めがね』という名前の薬だ!!」


「ええ~、なんでそんな名前なんすか? ややこしいっすよ」


「仕方ないだろ! これ以上ないほど、ふさわしい名前なのだからな!!」


「はぁ、そうなんすか」



「それで、それはどんな薬なんすか?」


「これを飲むと、体中に植物の根が百万本生えてくるのだ!!」


「根が百万!? そんなの気持ち悪すぎっすよ!? なんのためにそんなもの生やすんすか!?」


「土の養分を吸収して、食費を抑えるためだ!!」


「何言ってんすか!? やっぱり救急車っすか!?」


「私は正気だと言っただろ!?」


「全然正気だと思えないっす!! そこまでして、食費を抑えたいんすか!?」


「当然だろ!!」


「意味分からなさすぎるっすよ!! やっぱり救急車を呼んでくるっす!!」


「いらん!! やめろ!! 迷惑だろ!!」



「ところで、なんでそれが『めがね』なんすか?」


「百万の根だから『メガ根』なのだ!!」


「そういう意味だったんすか!?」



「では、さっそく飲んでみるか」


「本当に飲むんすか?」


「当然だろ! よし、いくぞ!!」


「大丈夫なんすかねぇ?」



「うぐっ!? うぐぐぐぐ……」


「は、博士!?」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


「こ、これ、大丈夫なんすか!?」



「えええええっ!? 両目から根が出て来たっすよ!? 博士、大丈夫なんすか!?」


「目が見えんぞ、助手よ!」


「両目から根が出てるんすから、当然っすよ!」


「他の部分はどうだ?」


「えっ? 他からは…… 出てないっすね」


「な、なんだと!? どういうことだ!?」


「こっちが聞きたいっすよ!」


「……そうか! そういうことなのか!?」


「どういうことなんすか!?」


「『めがね』だから目だけが根になったのか!!」


「くだらない冗談を言ってる場合じゃないっすよ!?」



「博士、その根、どうするんすか?」


「そんなの決まっているだろ! 土の養分を吸収しに行くのだ!!」


「ええっ!?」


「さあ、行くぞ、助手君!!」


「そっちは出口じゃないっすよ!?」



「このあたりの土なら養分が豊富そうっすよ」


「よし、やってみるか! うおおおおおおおおおおおおっ!!」


「うわぁ、本当にぶっ刺したっすよ…… 狂人っすね……」


「やかましい!」



「博士、どうっすか?」


「う~む…… 吸収できてないみたいだな」


「なら、失敗っすか?」


「うむ、残念ながら、そのようだな」


「そうっすか」



「ところで、その根は、どうするんすか?」


「助手よ、研究室にフラスコに入った青い液体がある。それを取って来い」


「なぜっすか?」


「その液体は『ねがめ』といって、根を目にする薬なのだ」


「ええっ!? そんなのもあるんすか!?」


「ああ、こんなこともあろうかと作っておいたのだ」


「そ、そうっすか…… 用意が良いっすね……」


「さあ、取って来い」


「了解っす」



「取って来たっすよ。どうぞっす」


「ありがとう」


 蛾値女がねめ博士が青い液体を飲んだ。



「うわっ!? 根が顔に吸収されていくっすよ!? 博士、大丈夫なんすか!?」


「問題ない。目は治った」


「ええ……」



「さて、めがねの改良をするとしようか」


「ええっ!? まだやるんすか!?」


「当然だろ!! さあ、研究所に戻るぞ!!」


「りょ、了解っす……」



 蛾値女がねめ博士の挑戦はつづく。


 土から養分を吸収し、食費を抑えることができるようになる日まで。


「そんなに食費を抑えたいなら、自炊すれば良いと思うんすけどね……」


「そんなの面倒だろ! 却下だ!!」


「ええ……」


 完。

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めがねで食費を抑える? 三国洋田 @mikuni_youta

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