〇月×日の日記

〇月×日

　今日はとても良いことがあった。

　私は目が悪い。補助用サプリメントを飲んでも規定視力に達さないので、物理デバイスの眼鏡をかけている。

　眼鏡がなくても公道歩行許可は降りているのだけれど、危ないので一応ちゃんとつけて歩くようにしていた。昔は眼鏡がないと何も見えない人が多かったらしいけれど、補助用サプリメントが出来てからは随分と減ったらしい。

　さて、私の眼鏡だけれども、淡い桃色のフレームで化粧をしているように見える機能がついている。この機能目当てに目が悪くない人でも眼鏡をかけていることが多い。

　今日、困ったのはこの眼鏡が勝手に何処かへ飛んで行ってしまったことだ。

　眼鏡をあまりかけたことがない人には分からないと思うが、眼鏡には自分の元へと呼び寄せることの出来る機能もついている。これは、眼鏡がないと見えにくい人間の為につけられた機能で、寝起きに眼鏡を探す時にすごく便利なのだ。この機能を悪用して好きな人の眼鏡を呼び出して出会いを演出する人もいるらしい。怖いよね。

　この眼鏡、たまにバグってしまうのが、玉に瑕だった。バグった眼鏡は、ぱたぱたとつるの部分を動かして勝手に何処かへ飛んでいってしまう。大抵は、途中で力尽きて安全なところに着地することが多いのと歩くだけなら問題のない視力の人が多いから良いんだけど。

　私はへとへとになりながら、眼鏡を必死に追いかける。あの速さで走れたら、次の運動試験で良い点数が取れそうだなって今思ったけど、多分むり。あれは眼鏡をなくしたら困るという意思があったから出来た偉業なのだ。

　眼鏡を追いかけてた私は、あるものを見つける。

　なんと！　憧れの早崎先輩が私の眼鏡を保護してくれたのだ。早崎先輩と少しの間だったけど、喋れたので今日は本当に良い日！

　バグっちゃうことが多かったから、買い換えようかと思ってたけど、やめることにした。今度会った時にあの眼鏡の子だって早崎先輩に覚えてもらえてるかもだしね。