エージェント林畳克典
たたみや
第1話
「ふあああっ、今日も死にぞこなったなー」
あくびをしながらエージェント
彼は商店街で小さなメガネ屋を営んでいる老人だ。
そこに今をときめく2.5次元俳優の
古ぼけたメガネ屋に相応しくないような長身でスタイルのいいイケメンが、颯爽と店に入る。
「なあじいさん、この店面白そうだな」
蓮が唐突に克典に話しかけてきた。
正直言ってかなり生意気な立ち居振る舞いだ。
「メガネをお求めかいな?」
「ああ、ちょっとばかし変装してないとファンに気付かれちまうからよ」
「おお、何だか見たことある顔じゃな」
「そうだろ、なんたって俺は」
「あの、2.9次元俳優の……」
「2.5! 2.9ならほぼ3次元じゃねえか! それにじいさん俺のこと分かんねえだろ」
「すまなかったな」
克典がちょっとしょげた感じで答えた。
「それならゲン担ぎに、末永く愛されるメガネはどうじゃ?」
「そんなんあるのか? 興味あるな」
「『カー〇ルおじさん』モデルじゃ」
「確かにそうなんだけどさ、もっと薄いメガネがいいぜ」
顔の線が細い蓮に厚手のレンズはキツイかもしれない。
「うーん、それなら偉い人の気分になれるメガネはどうじゃ? これは薄めのやつじゃ」
「偉い人か、ミュージカルでもやることないからなあ、興味あるかも」
「そこにあるやつじゃ」
「へー、これは誰モデルなんだよ?」
「『増税メガネ』モデルじゃ」
「んなこったろうと思ったよ!」
「『増税クソメガネ』モデルもあるぞ」
「一緒じゃねえか! 言わんとしている相手はよぉ!」
芸能界にいる以上、評判が悪い人のモデルというのは身に着けたくないだろう。
「そうか、ではモテるメガネはどうじゃ?」
「俺はすでにモテるんだが……、まあいい。見せてくれ」
「この『乙〇』モデルはどうじゃ?」
「モテるっていうか一線超えるじゃねえか! 〇〇不満足とか本出しときながらすげー満足してるしな!」
「ついでに『山〇新〇』モデルもどうじゃ」
「チョメチョメはやめろ!」
変に問題を起こしている人のモデルは流石に縁起が悪い。
「それならこれはどうじゃ? 若手でイケイケの芸能評論家のモデルじゃ」
とっておきと言わんばかりに、克典が高級そうな箱からメガネを取り出す。
「いいじゃん、このメガネか?」
「そう、これこそが芸能評論家『パーピー
「誰なんだよそいつ!」
結局、蓮のお眼鏡に叶うメガネは見つからなかった。
エージェント林畳克典 たたみや @tatamiya77
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