第2話 なんで異世界売ってんだよ その②

「いてて、ここどこだよ」


あの出来事から一体どれほどの時間が経ったのだろうか。

俺は意識を失い、気づいたら……

手足に手錠のようなものが柱とくくりつけてあることに気づく。

俺は必死に拘束を解こうと暴れる、しかし誰か来たようなので話し合いに持ちかけてみる。


「いやいや、俺なにかした!?」

「まあ落ち着きたまえ」


拘束されている俺の前に現れたのは、腕に腕章をつけた黒い服を着た俺と同い年くらいの男がこちらへやってくる。こいつは見たところ服から看守のようだ。


「おっと、俺としたことが。失礼、俺の名前はルミナス。時間がない、ここから出るぞ」


そう言いながら、金色に輝く少し錆びついた鍵をポケットから取り出す。


「なんで俺はここで拘束されている、答えてくれ」

「君が言っているというものは、ここにとっては異世界。そして、異世界人の大半は反逆者としてされている。これがこの世界の現実だ」

「投獄?何を言って……」


おいおい嘘だろ。

キラキラ輝く異世界ライフを堪能できると思った矢先にこれかよ。


「どうもあんまり喋りすぎると俺も消されちまう。俺は君にこの世界に来たからには楽しく生きてほしいと思ってる。たとえでもな」


そう言いながら男は持っている鍵で着々と俺の拘束を解いていく。

なんだか手慣れた様子だ。


俺の拘束具をすべて解く。

そうして俺のほうへ小声でこう言う。


「俺はニセの看守だ、お前をここから連れ出すために来た。詳しい話はだ。脱出経路ルートはもう確保してある、安心しろ」

「わ、わかった」


すると、カツン、カツンと石階段を降りてくる音が聞こえる。

畏怖からか、緊張からか、俺の鼓動は途端に早くなる。


「とりあえず、お前はここで待ってろ」


男はかぶっていた帽子を深く被りなおすと足跡の聞こえたほうへと消えていった。



「とりあえず、お前はここで待ってろ」


俺の名前はルミナス。今は新しく異世界から来た人間の救出作戦実行中だ。

この足音だと看守は1人、いや2人だな。


「やあルミナス君、調子はどうかね」

「先輩、お疲れ様です」

「ルミー、あんた最近眼の隈すごいよー、ちゃんと寝てる?」

「エル、俺は大丈夫だ。お前こそ女なんだから、美容には気をつけろよ」

「もう!ルミーって昔からそういうところあるよね」


屈託のない会話。

俺はこの監獄に溶け込むため、ここに入った5年前から仲の良い人間を計画的に2人作った。

ミリル・アタは俺より5個上の先輩。黄緑でショットカットの髪に不気味な笑みは誰もが恐れている。まあ、騙しやすくて一番助かる。


エル・ファロスは俺と同い年の同期。茶髪のロングに愛想のある奴だが、こいつに拷問をさせたらもう誰も手を付けられない。こいつも騙しやすくて、しかも俺に対して優しく接してくれる。まあただのいいやつらだ。


「実は、手錠が壊れちゃったみたいで」


俺は平気な顔で嘘をつく。


「そうか、なら2人はここで待っててくれ、新しいものを持ってくる。エル君はルミナス君の見張りを変わってやってくれ」

そうして階段を上り始める。


「了解しました、ルミー、昼ごはんでも食べてきたら」

「ああ、そうだな。でもその前に奴を拘束しておかないと、ここで待ってて」

「そうね、確かロープは……はいどーぞ」


俺はエルからロープを受け取ると、異世界人の牢屋に向かう。



カツン、カツン、ブーツで歩く音が聞こえる。


「どうやら時間がないらしい。今から急遽作戦を変更する」

「作戦って……どうやってここから抜け出すんだよ」


俺はルミナスからもう見張りが変わるので、時間がないことを知った。

つまりこの短時間でなんとか脱出しなければならないのだ。


「これを使う」


するとルミナスはポケットから小瓶を取り出した。

クリムウェル睡眠薬?日本語でそう書かれてある。


「これはもう今は使われていない。なぜなら1錠摂取しただけで昏睡状態からの仮死状態に陥ってしまう劇薬シロモノだ、これをお前に飲ませて看守の目をなんとかかいくぐるぞ」

「おいおい、それって俺飲んでも死ななよな」

「仮死状態にはなるが死にはしない。だから安心しろ」


俺は恐る恐る青色の薬を1錠摂取する。

すると途端に眠気がやってくる、これが昏睡ってやつか。



「……よし、心肺停止、呼吸停止……にしっかり見えるな。よし、行ける」


俺は男を持ち上げるとすぐにエルのところへ向かう。


「エル、まただ。異世界人の男が1人また命を絶っていた」

「そうね。またね。墓に埋めてあげよう」


俺とエルは男の死を上司に報告すると、墓場に向かった。


「今月でもう15人目。俺たちって今まで何人の人間を殺してきたんだろうな」

「その話も15回目。毎回同じこと言うけど、死んで当然のことをしてきたから死んでるんじゃないの」


死んで当然のこと。とか、そんな言葉よく平気な顔で言えるよな。

この世に死んでいい人間なんているはずがない、しかも何も罪を犯してない異世界人は特に。


「そして何があってもそれが私たちの仕事なの!この国のために、黙って!大人しく!働くのが私たちの仕事なの」


墓場についてすぐに墓穴を掘り始める。

流石に俺でもすべての異世界人を救い出せるわけではない。

何人か助からずに犠牲になってしまったやつも多くいる。


「ふう、終わったな」

「ええ、さ、戻りましょう」


そうして俺とエルは監獄の中へ戻った。

















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この国終わっていたので、クーデター起こして改革に導こうと思います~異世界からやってきた「俺」でもこの国救えるくらいの政治家にはなれますよ 希望D @darkmater001

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