やぶ医者の娘④

ハマハマ

めがね萌え

 急におかしな事を言い出したと思わないで頂きたいんですけれど、めがね萌え、ってご存知ですか?



 この町一番のやぶ医者夫婦――あたしのお父様とお母様なんですけれど、お父様は若い頃からめがね男子なんですって。


 いえいえ、やぶと言っても野巫やぶ医者です。

 まじないなんかで病や怪我を癒そうってぇおかしな医者の事なんですよ。

 二人の腕は確かなものでございますからご安心くださいね。


 お父様は幼い頃から野巫の教本たる野巫三才図絵やぶさんさいずえを読み過ぎたせいでお目を悪くされたんですって。


 対して、かつてであらせられたお母様は『白髪が増えた』なんて言ってはおられますが、老眼などには程遠く裸眼です。


 あたしはお母様に似たのか平気ですけれど、この何年か野巫三才図絵を読み耽っていらっしゃった葉太お兄様は、どうやらお父様に似たのかお目を悪くされてしまったのです。


 それでついこの間、舶来の品を扱うお店で葉太お兄様のめがねをあがなったのですけれど――


 これがもう、あたしには刺激的すぎて鼻血が出そうな日々を送っております。


 お父様から剣術も習って逞しく、さらに優しく理知的で凛々しい葉太お兄様が、少しとぼけた丸めがね。

 カッコいいと可愛いの同居。

 そんな目で見つめられてはあたし……もう……

 

 実の兄にこのような想いを抱いてはいけないと、頭では分かっているのですけれど。


 葉太お兄様ももう十四、あたしは十三。

 もちろん未だ大人ではありませんが、幼い子供ではありません。


 特に齢ひとつの頃から大人の様に喋り始めたあたしは、四つの頃から葉太お兄様をお慕い申し上げておるのです。


 萌えるなと言う方が無理というもの――――




 本格的に野巫やぶを習い始めてはや五年の葉太お兄様も、ずいぶんと野巫を使い熟される様になりました。

 もちろん巫戟ふげきの力の一方――かんなぎの力しか持たない葉太お兄様は、あたしと違って『地の部』までしか扱えませんけれど。


 そんなあたしたち野巫使いの兄妹は、町の人の困り事を解決して回っているのです。

 ここのところ地脈が乱れているのか、しばしば妖魔が現れたりなんかもいたしますので割りと忙しくしてるんですよ。




「良子、今日もお疲れさま」

「ええ、葉太お兄様も」


 小さないたちの妖魔が悪さする前にとっ捕まえて、山に帰したその帰路。


「さぁ、帰ろう」


 あたしを労い優しく手を引く葉太お兄様が、時折り振り向き見せる笑顔が――



 カッコいい! 可愛い! 好き! 大好き!




                おしまい




⭐︎⭐︎⭐︎ ⭐︎⭐︎⭐︎ ⭐︎⭐︎⭐︎ ⭐︎⭐︎⭐︎


「やぶ医者の女房」番外編!

野巫使いの兄妹のラブコメが!


今夏スタート!


(ウソ)


……いやもしかしたらやるかも(*⁰▿⁰*)

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やぶ医者の娘④ ハマハマ @hamahamanji

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