アイウエア カケテイコ
作家:岩永桂
「……髪切った?」
アイウエア カケテイコ
「ハモ兄さあん、今日も収録、おつかれさまでした」
ハーモニーさん(ハモ兄さん)に気安く声掛けする業界人。
「小籠包が美味しいお店見付けたんすよお。今からどうです?」
右手を挙げて呼応するハーモニーさん。
ハーモニーさんは過去に昼の帯番組と夜の生放送をやっていた時期があって
日本一忙しい司会者としても有名だ。
ハーモニーさんといえば、サングラス。
色眼鏡ともいうし、若者はアイウエアなんて母音だらけの名称を作っちゃったね。
眼に傷があるから、と本人は語るけど、芸能事務所の面接時に
「顔面にインパクトがないから色眼鏡掛けてTVに出るのはどうでえ?」
と、僕と同じ業種の方々にアドバイスされたとか。
確かにハモ兄さん、サングラス、似合っています!
引退は近い、そう宣言している場に居合わせたこともあるし、
お昼の帯番組は丁度いいタイミングで大団円を迎えた。
今の大御所芸人たちが若手の時に世話になった番組だったから
狭いステージに今の大御所がひしめき合って
非常に面白味のある構図になっていたな。
(共演NGとかいわれてた方々もその日だけは無礼講)。
(大御所MはここぞとばかりにDEEP KISSを強要!)
(ああ、グラビアの子とかじゃなくて、共演NGの人とです)。
ハモ兄さんの轍には伝説が生まれ、
ハモ兄さんが向かう未来には安息が待っている。
カチンカチンに冷えた麦酒を、昔ながらの栓抜きで空け
自分の分は自分で注ぐハモ兄さん。
泡で白い髭を作りながら満面の笑みを浮かべる名司会者。
最後までTVで勇姿を見たかったけど
こうやってけじめを付けて勇退する姿もかっこいいなあ。
様々なゲストにマイクを向けて話を聴いて来たこのお方が
今、無邪気に己語りをなさっている。
その姿がなにより嬉しいし、我こそが名司会者だ!
中華テーブルを挟んで、マイクに見立てた箸を握り締める、
昔ながらの業界人。
春の到来と共に、ハモ兄さんは自由を夢想するのであった。
アイウエア カケテイコ 作家:岩永桂 @iek2145
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