【KAC20248】めがねの僕も、めがねじゃない僕も

りおん

めがねの僕も、めがねじゃない僕も

 僕、木下きのした大悟だいごは、小さい頃から目が悪く、ずっとめがねをかけていた。

 めがねなしの生活に憧れたこともあって、高校生になった今はコンタクトも持っている。ただ、コンタクトはめんどくさい気持ちになってしまい、めがねをかけることの方が多い。

 しかし、そんなめがね生活を変えたいと思った出来事があった。同じクラスの杉崎すぎさき花音かのんさんが、僕のめがねをとった姿を見て、


「なんだよー、めがねなしも可愛いじゃん」


 と、言ってくれたのだ。僕は女の子にそんなことを言われたことがなくて、かなり焦ってしまったが、嬉しかった。

 杉崎さんはギャルっぽい見た目と行動力で、僕もからかわれているようで驚かされることが多い。僕は女の子に趣味を笑われた過去があり、女の子と話すのが苦手だった。それでもストレートに僕と向き合ってくれる杉崎さんに、僕はどんどん惹かれていった。

 杉崎さんとなら、僕も緊張せずに話すことができるようになった。そんな杉崎さんと放課後二人きりになった時に、


「な、なぁ、今度一緒に遊びに行かないか……?」


 と、誘われた。

 僕は嬉しかった。今まで女の子と一緒に遊びに行ったことなんてなかったが、杉崎さんとなら楽しい時間が過ごせそうだと思った。

 お、女の子と一緒に遊びに行くということは、で、デートになるんじゃないかと気づいたのは後からだったが……。


 デート当日、僕はいつもかけているめがねをやめて、コンタクトにして行った。待ち合わせ場所で杉崎さんは僕を見て驚いていたが、


「き、木下も、いつもと雰囲気違うな……か、カッコいいよ」


 と、言ってくれた。

 女の子にそんなことを言われたのは初めてで、僕はかなりドキドキした。

 こんな僕にも、カッコいいと言ってくれる人がいる。

 女の子に笑われていた頃の自分に言ってあげたい。

 そのうち、自分が好きになる女の子が現れるよって。 


 めがねの僕も、めがねじゃない僕も、杉崎さんは笑わずに見てくれている。

 僕はそれが一番嬉しかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20248】めがねの僕も、めがねじゃない僕も りおん @rion96194

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ