第3話 『心のめがね』を掛けよう
永痴魔「いえ、HSPはその人の特質を表していますので、無理に治す必要はないんです。というか、HSPであること自体は、決して悪いことではありませんので、そもそも治す必要はないのです」
さゆり「でも、私はHSPで苦しんでいるんですよ」
永痴魔「HSPはその人の『特質や性格』といったものですから、無理に治そうとしたりすると、返って苦しい思いをすることになってしまいます」
さゆり「そ、そんな・・・・・・」
永痴魔「ですから、HSPは、HSPとして、あるがままに付き合っていくことが大切なんですよ」
さゆり「でも、永痴魔先生。それでは、私は一生、HSPで苦しむことになってしまいます」
永痴魔「安心してください。そのために、私はHSPの人に『心のめがね』を掛けることをお勧めしているのですよ」
さゆり「えっ、『心のめがね』ですか?」
永痴魔「そうです。さっきも言いましたように、HSPの人はHSPとして、あるがままに生きていくことが大切なんです。無理して自分を変えようとしては、いけないのです。そんなことをしようとしたら、返って苦しむことになるわけです」
さゆり「・・・」
永痴魔「つまり、こういうことです。・・・HSPの人は、ただ刺激に対して敏感なだけなんですよ。それでは、刺激に対して、敏感の逆の『鈍感』になればいいかというと・・・そんなに簡単に『鈍感』になれるわけはないのです。HSPの人の『刺激に対して敏感』というのは、その人の『特質や性格』なんですから・・・それを変えなさいと言っても、簡単に変えることはできないんです」
さゆり「ああ、確かに、永痴魔先生のおっしゃるとおりですね」
永痴魔「そこで、その代わりに、外からの刺激を弱める『心のめがね』を心に掛けるんです。この『心のめがね』というのは、夏の日光の紫外線による刺激を弱めるサングラスのようなものだと考えてください」
さゆり「サングラスのような、刺激を弱める『心のめがね』ですか?」
永痴魔「そうです。さゆりさん。では、ちょっと想像してみてください・・・
あなたは心に『心のめがね』を掛けています・・・
あなたは、その『心のめがね』を通して外の景色を見ています・・・
外からの刺激は、その『心のめがね』を通して、あなたの心に入り込んできます・・・
その『心のめがね』には、刺激を弱める働きがあります・・・
いま、外で刺激がありました・・・
いつもならば、その刺激は、敏感なあなたの心に突き刺さって、あなたを苦しめます・・・
しかし、今は、『心のめがね』があるために、その刺激は弱められて、なんだかオブラートに包まれたように、ぼんやりとなって、あなたの心に入ってきます・・・
あなたは、刺激を受けたことは理解していますが、刺激がオブラートに包まれているために、以前のように、その刺激を敏感に感じることはありません・・・
これからは、外のどんな刺激も『心のめがね』で弱められ、オブラートに包まれて、心の中に入ってきます・・・
これからは、こうして、のんびりと、ほんわかと、オブラートに包まれた外からの刺激を受け止めていってください・・・」
さゆり「・・・・・」
永痴魔「さゆりさん、如何ですか?」
さゆり「はい・・・なんだか、心が楽になりました・・・たったこれだけのことなのに・・・『心のめがね』って、とっても効き目があるのですね」
永痴魔「そうなんです。この『心のめがね』を使うことによって、HSPの人の苦しみをやわらげることができるんです。また、『心のめがね』は、HSPでない人にも、もちろん効果があるんです。さゆりさん、これから何かあったら、『心のめがね』を掛けてくださいね」
さゆり「はい、分かりました。お陰で心がとっても軽くなりました。もう、私、大丈夫です。永痴魔先生、ありがとうございました」
さゆりがお辞儀をして、カウンセリング・ルームを出て行く。。。
終
心のめがね 永嶋良一 @azuki-takuan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
のんびり古都散策/永嶋良一
★75 エッセイ・ノンフィクション 連載中 35話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます