第2話 それはHSPなんです

永痴魔「それは、辛いですよね。では、どうすればいいのかというお話の前に、さゆりさんご自身のことをもう少し考えてみましょう」


さゆり「私自身のことですか?」


永痴魔「そうです。さゆりさんは、職場や日常生活の中で、次のようなことはありませんか?

(1) 状況や人の感情を深く読み取ってしまって落ち込む

(2)五感で受ける刺激や、心理的な刺激に対して非常に敏感で疲れやすい

(3)共感力が高く、人の気持ちに振り回されやすい

(4) 小さな変化や刺激に気付きすぎて、返って傷ついてしまう

・・・どうですか?」


さゆり「あっ、私、それ全部に当てはまります。永痴魔先生、この4つは、いったい何なんですか?」


永痴魔「これは、HSPの人が持つ4つの特徴なんですよ」


さゆり「HSP? HSPって何なんですか?」


永痴魔「HSPというのは『Highly Sensitive Person』の略で、『非常に繊細な人』と訳される心理学の用語なんです。分かりやすく言うと、HSPは、さゆりさんのように、外部からの刺激に対して非常に敏感な人のことなんです」


さゆり「永痴魔先生。そのHSPというのは病気なんですか?」


永痴魔「いえ、病気ではありません。HSPは病気や障害ではなく、先天的な気質の一つだと考えられています。つまり、『外部からの刺激に対して非常に敏感な特質や性格』というべきものなのです。それで、そのHSPの特徴がさっきの4つなんですね。この4つの特徴はそれぞれ英語で次のように言われています。

(1)Depth of processing(深い処理)

(2)Overstimulation(過剰刺激)

(3)Empathy and emotional responsiveness(共感と感情的反応性)

(4)Sensitivity to subtleties(微細なものへの敏感さ)

 そこで、この4つの先頭の文字を取って、これらを『DOES』と呼んでいます。『DOES』は英語の動詞の『ダズ』ですね」


さゆり「まあ、『ダズ』というのは覚えやすいですね。でも、私、HSPなんて初めて聞きました。これって、昔から使われている言葉なんですか?」


永痴魔「いえ、HSPは心理学者エレイン・アーロン博士によって1990年代初頭に提唱された概念なんです。ですから、かなり新しい心理学の考え方なんですよ」


さゆり「ということは、1990年ごろからHSPの人が増えてきたというわけなんですか?」


永痴魔「いえ、そうではないんです。HSPの人は昔からいたんですが・・・HSPという言葉や概念がなかったので、HSPの人に焦点を当てることができなかったんですよ」


さゆり「永痴魔先生。HSPの人が昔からいたということは、HSP自体は決して珍しい特質ではないということなんですね?」


永痴魔「ええ、そうです。HSPは決して珍しい特質ではありません。現代では、約20%の人々がHSPだと言われています」


さゆり「そ、そんなに・・・・・・」


永痴魔「どうです、さゆりさん。HSPの人って結構、多いでしょう」


さゆり「20%というと、五人に一人はHSPなんですね! 私、なんだか安心しました。今までは、私だけがいつも落ち込んでしまうんだって思っていましたから・・・みんな、そうだったんですね・・・」


永痴魔「そうなんです。HSPはどこにでもある特質なんですよ。ですから、安心していただいていいんですよ。それで、さゆりさんは、まずご自身がこのHSPという特質を持っていることを理解してください」


さゆり「分かりました。私はHSPだから、外部からの刺激に対して非常に敏感に反応して、物事を悪い方へ、悪い方へと考えてしまっていたんですね。では、永痴魔先生、どうやったらHSPを治せるんですか?」

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