心のめがね

永嶋良一

第1話 心理カウンセリングへようこそ

場面:

 町のマンションの一室。ここは、『なが痴魔ちま・心理カウンセリング』のカウンセリング・ルームだ。木目調の壁に果物の油絵が掛けてある。床は明るい茶色の絨毯。部屋の中央に応接セットが置いてある。応接セットのソファにはカウンセリングに来たさゆりと、カウンセラーの永痴魔が向き合って座っている。


永痴魔「さゆりさんですね。どうされましたか?」


さゆり「永痴魔先生。それが・・・私、物事に非常に敏感で・・・職場でも、家庭でも、ついつい深く考えてしまうんです。仕事なんかで失敗でもしようものなら・・・この仕事は自分に向いていないんだ、もう、この仕事はやめた方がいいんだって、いつも悪い方に深く考えてしまって・・・深く深く落ち込んで・・・それで、そういったネガティブな感情が、いつまでも頭に残って消えないんです」


永痴魔「さゆりさん、失敗して落ち込むことは、誰にでもありますよ」


さゆり「でも、永痴魔先生。私の場合は、人より考え込んで、落ち込んでしまう頻度が多いんです。また、落ち込む深さも人より、はるかに深いんです。それで、その落ち込みが、いつまでも、いつまでも続くんです。・・・気持ちの切り替えがうまくできないというか・・・これではいけないと思うんですが、どうしても、悪い方、悪い方に考えがいってしまって・・・本当に生きづらくって、本当に苦しいんです。それで、永痴魔先生にどうしたらいいのかを教えていただきたいんです」

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