第5話 はなさないでってのが一番厄介。

 

 

 立場により誰が敵やとか悪やとか決め付けて自分の正義を執行するのはそら簡単で。


 支配者側はより単純明快な図式を求めるし民衆はそれにまんまと踊らされる。それが双方にとって心地良うて楽やからな。何も考えんでええし。


 世界の危機とかいう実感無いモンよりも日々の食い扶持のほうが大事やろ? そこいらの路地で野垂れ死ぬ誰かさんの現実には勝てんよ。


 誰が正攻法で真正面からやって来るって言うたんやろなぁ。自分が敵さんなら、んなアホな真似すると思う?


 大軍勢の圧倒的物量で叩き潰す。時間は掛かるが確実。反面、国力にどんな余裕があっても長引けば不満が貯まるし政情が不安定になりやすい。


 なら少数精鋭で親玉を叩いて終わりにする。一見楽そうで短期間なら懐もさして傷まん。ただ普通ならそれだけで終わるかね?


 そこにはその親玉を慕って従ってきた色んな奴らが居るやろうに。そいつらが第二第三の親玉になるか、細かく散らばって手がつけられんようになる気がするけど。


 人ってのは楽な方に流れたくなる。余所者を引っ張ってきて旗印立てて上手いこといけばそれで良し、もしアカンかっても所詮は使い捨てやから気軽に何度でも繰り返す。


 権力者は自分らにさえ火の粉が降り掛からんかったらよろしい。犠牲になるんはいつでも下っ端の誰かさんと来た。


 そんなモン見せられて気分の良い奴なんか居るかっちゅうねん。


 そこに正義なんぞあらへん。これは単なる俺のの問題や。


 案の定全く想定しとらんかったんか、呆気ないぐらい簡単に首都は陥落した。


 いうても王城でふんぞり返っとるような連中を一族郎党根絶やしにしただけやけどな。その後のあの国がどうなろうと俺は知らん。


 また同じように向かってきたら? そん時はそん時や。別にこっちから態々なんぞ名乗った覚えも無いしなぁ。



 それよりついでに拾ってもうたコイツ、どうしたもんか。


 気まぐれで育てたら俺より強なるし、嫁さんになるって鼻息荒いねんけど?

 

 

 

 

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