第6話 来たる文化祭へ向けて
【月曜日の放課後】
ここは研究棟の裏庭・・・
「久しぶりに二人っきりの練習だね!」
そう言うのは、同じクラスの能勢紗華(のせすずか)
ボクシンググローブをはめてやる気満々といった表情をしている。
元々は彼女が『ダイエットをしたい』と言ったのがきっかけで、ボクシングの練習パートナーとなり、殴られ屋みたいなことをするに至ったのだ。
原点回帰・・・したかのように、初心に戻って俺達は練習メニューを順番にこなすことにした。
彼女はすっかりパンチを繰り出すフォームも様になっている。
加えて、ガタイが良いので迫力も抜群だ。彼女曰く…強烈な右ストレートを”必殺”とするらしいが、それはマジで、男子顔負けの右ストレートを繰り出せるようになった。正直、あのパンチをまとも喰らったら一撃で沈んでしまうと思う。
このど迫力ボディーが、汗だくになりながら立ち向かってくる・・・
もうそれだけで興奮度がMAXになってしまう。
俺は攻撃の意思を向けられているのに、あたかも好意を向けられているかのように錯覚してしまう。1分間の殴られ屋トレーニングの最中・・・彼女は容赦無く必殺の右ストレートを俺に当ててこようとするが、流石にそうはいかない。
メキメキと実力をつけている彼女だが、いつも練習に付き合っている俺もガードや回避するスキルは上がっている。
「当たらなければどうということはない」
彼女のパワフルな攻撃を俺はスウェイバック姿勢から巧みに回避していく。能勢よ・・・パワーだけではどうにもならないのだよ・・・
そんなことを考えていた俺だったが、彼女の激しい動きに合わせて、色々なものが上下左右に動いている・・・お◯ぱいは当然だが、彼女の短めなスカートが躍動して白のパ◯ツがチラチラ見えてしまう。
躍動するお◯ぱい、チラチラ見えるパ◯ツ、露わになるムチムチの太もも、少し芋っぽいけど綺麗で可愛い顔・・・脳が・・・脳が破壊されていく・・・
・・・ボコォォォォーーーーーーーーッッッッ!!!・・・
脳が破壊される前にフィジカルが破壊されて助かった。まともにパンチを喰らいダウンしそうになったが踏みとどまった。
ピピピピ!!
途中、邪な感情が沸き起こったため危うくノックアウトされそうになったが、なんとか耐え切った。
「う〜惜しかったな〜でも、疲れたぁ〜」
汗びっしょりの彼女が崩れるように俺に抱きついてくる・・・練習中、彼女にクリンチについてレクチャーする機会があったが、まさかここでしてくるとは・・・しかし、(フィジカル最強とか言ってたけど)ふかふかボデイーを押し当てられたら・・・
・・・ピキンッ!!・・・
俺は脳が破壊されてしまった。
「あ〜もうちょっとで蒼馬くんを倒せると思ったのになぁ〜」
「ははっ、そんな簡単にはやられるかよ!(脳は倒されました)」
「まだまだいっぱい練習しなきゃだね!」
「あの〜能勢・・・さん・・・あくまでボクササイズが目的だから、そこまで気張る必要は・・・」
「ううん。前はダイエット目的だったけど、今は違うの!」
「えっ?じゃあ何が目的なの?」
「私には今、倒したい一人の男の子がいるの!その子はね・・・私のこと『フィジカルモンスター』とか、凄く酷いこと言うんだよ!!」
「ま、マジかーぁぁぁ・・・そ、そんな女子に向かって失礼なこと言う奴もいるんだなーッッ!!」
「そうなの!その男の子をやっつけるのが今の目的なの!」
「そ、そうなんだー」
「それで、その子を倒して、屈服させて・・・私の恋人になりなさい!って言うの!もし断ったらどうなるか・・・わかるよね?ってことも言うよ!」
「へ、へぇ〜そそそそ、そうなんだ〜た、たぶんその男子も今頃震え上がってるんじゃないかなぁ〜」
「その子、何故か色んな女の子からモテるから、私ももう躊躇しないことに決めたの!」
・・・これは、もはや告白・・・いやっ、それとも死の宣告か・・・
彼女とは心の距離が近くなってきたのは感じていたが、その心境をしっかりと聞かされてしまった。
もちろん、今の俺が置かれている状況を鑑みて、直ぐに答えを出して欲しいなどとは言われることはなかった・・・しかし・・・
「今はそんな感じ・・・決意表明みたいなものかな?」
・・・そんな彼女の表情は晴れやかで優しい目をしていた。
【火曜日の放課後】
ここは研究棟の裏庭・・・
「蒼馬くん、よ、ヨロシクお願いします!」
そう言うのは、同じクラスの大倉美優(おおくらみゆ)
少し緊張した表情でこちらを見ている。
ダイエットなどする必要のない彼女が、なぜ放課後俺とボクシングの練習をしているのか・・・?
「だって、ストレス発散にもなるし、運動不足解消にもなるし・・・」
などと彼女は供述しているが、その真意はなんとなくではあるがわかるような気がする。
今から4ヶ月程前の一学期の社会科見学の最中に・・・俺と彼女は突発的ではあったが疑似恋愛、疑似デートをしてしまった。後から冷静になって考え直し、お互い納得の上その疑似恋愛を無かったことにした。
しかし、無かったことにしたもののそんなに容易に忘れられるはずもなく、潜在意識の中であの時の高揚感を待ち続けているのかもしれない・・・
「うんっ!楽しいね!」
彼女は特別運動神経が良い方ではないと言っているが、卒なく練習メニューをこなす。考えながら行動するタイプで地頭の良さが伺える。
それが発揮されるのは1分間の殴られ屋トレーニングの時だ。
「お、おいっ近・・・ッ!!」
「ここがいいんだよね!?」
懐に飛び込んでくるようなポジションをとる彼女。
このローレンジからの攻撃ははっきり言って苦手だ。俺は距離を取ろうと後ろへ下がるが・・・
「ダメッ!!逃さない!」
彼女はグイグイと距離を詰めてくる。彼女とは数回戦っただけだったが、既に俺の苦手な部分を感じ取り、それを徹底的に突いてこようと体現している。
彼女の前進に対して、振り払おうと反撃したくても俺からは手を出せない、攻撃できないルールとなっている・・・そんな部分も加味して戦略を立ててくる彼女は、脳筋タイプの能勢とはまた違った厄介さがある。
このお下げの元陰キャ中二少女になんか・・・追い詰められて・・・俺が負けるなんて・・・そんなことあるはずな・・・
ボディーやアッパーを何発も喰らいながらもなんとか1分間を耐え切った。
「あぁ・・・楽しかった〜」
汗だくになった彼女もまた能勢と同じように俺に抱きつくようにクリンチしてくる。
「お、おい!大倉!?」
「だって、疲れたんだもん!」
抱きつかれた状態だと彼女の鼓動が今にも聞こえてくるような感覚になる。丁度いいサイズ感・・・彼女の頭頂部に俺の顎を乗せるとガチッと噛み合うような気がする。
「紗華から昨日蒼馬くんに気持ちを伝えたって聞いたよ!」
「あぁ・・・た、確かに・・・」
そう、昨日…この場所でこの時間帯に能勢紗華から告白のような言葉を掛けられた。
「紗華とは恋のライバルになるかもだけど、それ以上に親友だと思ってるから・・・私も気持ちを隠すようなことはしないって決めた!」
「おまっ・・・それって・・・?」
距離が近い・・・上目遣いで俺を見上げる彼女・・・
「もしチャンスがあるなら、私も頑張りたいってこと!蒼馬くんなら私の考えてることわかるよね?」
「・・・あの時の俺達にまた戻りたい・・・とか?」
頬を染めながらかじっとこちらを見つめる彼女・・・ダメだ・・・もうクソ可愛く見えてしまって・・・鼻血が出そうだ・・・
結局、彼女…大倉も能勢と同様に結論を急ぐようなことはしなかった。
わかっていたけど、彼女の口から本音を聞かされると改めて意識してしまう。
「今日はここまで、じゃあね!!バイバイ蒼馬くん!!」
俺は彼女の後ろ姿をいつまでも見送っていた・・・見送ってしまった。
【水曜日の放課後】
ここは研究棟の裏庭・・・
「先輩!!どうぞ宜しくお願いします!」
そう言うのは、一年下の後輩…葛西奈穂(かさいなほ)
元気の良い彼女は、ウズウズするようにこちらを見ている。
ボクシンググローブを付けて練習する前に、既に俺と葛西は走り込み練習を終えている。彼女は陸上部で中学の時、全国大会までいっている。俺は長距離選手で、彼女は短距離選手・・・200m走を主戦場としていた。運動神経も良く、スピードや瞬発力、反射神経もいい。中学の時は体育祭で他の女子生徒を圧倒していたのを覚えている。
「先輩!!早く先輩を殴らせて下さい!!」
そんな運動神経抜群の彼女は俺に向かってかなり物騒なことを言っている。
「・・・ちょっと暑いな・・・」
「おいっ!!ぜってぇー服は脱ぐなよ!!とんでもない噂が流れてんだよ!!」
「え〜!!ダメですか・・・?」
「絶対にダメ!!」
確かめる必要もなく、こいつ…葛西の矢印は中学の時から俺に対して向かっている。2回告白されたが、訳あって退けている・・・にも関わらず、まだ俺のことを諦めていないのか?彼女のような容姿や運動の実績、性格があれば他の男子を落とすくらい容易なはず・・・
「なぁ・・・どうしてお前は俺にこだわるんだ?幻滅する機会なんて何百回もあったはずなんだけど!!」
「蒼馬先輩!!私と初めて話しをした時のこと覚えてます?」
「いやっ・・・いつだったっけ・・・?」
「春の記録会の時に、競技場まで移動するバスで座席が隣になった時です!」
「ああ、確かに!!」
中学の陸上部時代・・・入部した一年生の初めての大会・・・陸上競技場までマイクロバス移動となったが、その時俺と彼女は席が隣同士になった。初めての試合、緊張する彼女の気分を少しでも和らげてあげようと俺は必死に色々話し掛けた。
とは言っても、俺の失敗談ばかりだったが、俺はこれまでこんなにも失敗を繰り返してきたのにまだちゃんと陸上部でやれてるんだぞ!だから一回の失敗で落ち込む必要もなく、失敗を恐れる必要もないぞ!・・・たぶん彼女にそう伝えたかったと思う。
「あの時から、私の先輩に対する気持ちは何も変わっていません!むしろ、なんで話先輩は私を幻滅させてくれないんですか?」
「おいっ!質問に質問で返すな!!」
彼女が俺に抱く好意はとにかく一貫している。
俺自身もなんだかその好意に甘えているんじゃないかと思う時がある。
葛西…彼女はどんなことがあっても俺のことを好きだから安心だ!
・・・という持ち駒感覚…キープ要員で彼女を扱っていないか・・・俺は!?
俺は”助平”で”性癖の歪んだ変態”で最低な人間だけど、超えちゃいけないラインはわきまえているつもりだ・・・だから今出来る本気で彼女と向き合うことにした。
1分間の殴られ屋トレーニングを始める前・・・
「おいっ!葛西・・・お前がどれだけ本気か確かめてやる!!俺のことが好きなら、その気持ちをその拳に込めて向かってこい!!俺はそれを全力で食い止めてやる!!」
そう挑発すると、彼女は少しうつむいて考え、俺の方を向きなおす。
「わかりました。全力で相手させてもらいます!先輩を病院送りにするくらいでいきます!」
こうして、彼女との対戦が始まった・・・
「やぁぁーーーー!!!」
深く屈んで拳を構え、ほぼ真上に高く跳び上がるアッパーカット!!凄まじい渾身のパンチを開始初手で繰り出してきた。
「てめぇーサガットかよ!?殺す気か!!??」
「そのつもりです!!それが先輩に対する気持ちです!!」
まごうことなき彼女は全力本気だった。
しかし、俺は俺で簡単に負ける訳にはいかない。
最近ずっと女子達のパンチを浴びせられ続けているので、ちょっとやそっとじゃ俺を崩すのは無理なことを見せつけてやる!
俺は彼女の動きを全神経を集中させて見極めながら回避する。多少のパンチを被弾してしまうのは仕方ない!大きいのを喰らわなければいいと割り切って、なんとか1分間を耐え切った。
「はぁ・・・はぁ・・・俺の勝ちだ!!」
彼女は本気で強かった。本気で立ち向かってきた。
・・・そんな彼女を見ると・・・彼女は泣き出していた。
「うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ」
本気だったからこそ悔し涙が出る。俺は俺の挑発に見事に応えてくれた彼女に感謝して、彼女が落ち着くまで隣に座った。
「葛西・・・なんかよくわかんないけど・・・理解したよ!」
「グスッ・・・何を理解したんですか?」
「俺のお前に対する気持ち!」
「えぇ〜!?教えてください!!」
「俺はお前を異性として見るよりアスリート仲間として見ているかもしれない・・・一応今は・・・」
「・・・今ってことは・・・いずれ異性として見てくれる可能性があるってことですよね?」
「わわわわ、わからん!!」
彼女はめちゃくちゃポジティブ思考だ。そうでなければずっと好きでいてくれるはずがない。
俺は中学の時から常に彼女に追いかけられている立場にいた・・・
・・・しかし、いずれ彼女は俺を追い越して、逆に俺が彼女を追いかける立場になるのではないかと・・・そんなことを一瞬考えてしまったのは否めない。
・・・つまりは現段階ではよくわからない。
【木曜日の放課後】
ここは部活棟の屋上・・・
「今日はありがとう。それじゃあ始めようか!」
そう言うのは、一年上の先輩…中院箕月(なかのいんみつき)
彼女は万全の状態(既にボクシンググローブ装着済み)で俺を迎えてくれた。
完全無欠の生徒会長・・・男女問わず人気があり、文武両道、全校生徒憧れの存在・・・そんな彼女が俺に目を付けてくれたきっかけは、俺の姉・・・平見優香(ひらみゆうか)の存在があったからだ。姉貴はこの高校の元生徒会長でそれを引き継いで二期目となっているのが中院先輩だ。
そして、この秋先輩は生徒会長の任期を終え、新生徒会長が決まる。
その新生徒会長に中院先輩は俺を推薦しようとしている・・・いやいや俺はそんな柄じゃない!姉貴→中院先輩→俺・・・二家で生徒会長を独占させようって、摂関政治でもやるつもりか!?
しかし、そんな生徒会長選挙の前、生徒会長任期最後のイベント・・・文化祭特設ステージの催しで中院先輩が担当するはっちゃけイベントに『1分間の殴られ屋バトル』を採用しようと言うのだ。
「それ、本気なんですか?」
「もちろん!」
人前で女子生徒達から殴り掛けられ続ける・・・なんという絵面だろうか?
あまりにも浮世離れし過ぎて、斬新に見えてくる逆転現象を狙うつもりかもしれないけど、ちょっとリスクがあり過ぎませんか?イベントで会場がダダすべり状態になったら、次の日から学校に来なくなりますよ。
「でも会長!催し物として体裁が立つくらいにはなりそうですね!もうこれ以上企画を煮詰める必要はないのでは?」
「いやっ、こうして君と練習するのが楽しいから・・・ついついね!」
高スペックの会長にそんな思わせぶりな発言をされたら、男子なら当然勘違いしてしまうだろう。
「まさか、俺に会いたいから呼んだんですか?だったらいつでも参上しますよ!そんなことありえないと思いますけど・・・!」
「いやっ、そうなんだが・・・」
中院先輩は只々俺に会いたかったから、適当な口実(文化祭の演し物)を作って会長権限で俺を呼び寄せてるだけらしい・・・それをはっきりと会長の口から聞かされた。
いやいやいやいやいや・・・まだ信じないって!!!
「会長は俺が平見優香の弟だからって、過大評価し過ぎなんですよ!」
「そんなことないよ。君は自分を過小評価しすぎなんじゃないかなぁ・・・?先日の幼馴染の彼女もそうだけど、君のことを慕う女の子は多いんじゃないかなぁ。」
「まさか・・・そんなことは・・・」
今週に入って、毎日告白・・・・いやいやこれは何かの間違いだ。
「そ、そうですよ!俺みたいな一般ピーポーが古から続く名家、中院家のご令嬢にお近づきになるなんて大逸れた話ですよ!」
「ちなみに私は次女だから家のことは気にしないでいい。私はいずれ平見家の君達兄弟の間に入りたいと考えてるんだ!」
「けけけけけけけけけkkk、、、、いやいや、確かに俺の姉貴が会長のお姉さんになる・・・いやいや話が飛び過ぎです!!」
時々、中院先輩はぶっ飛んだ行動、ぶっ飛んだ発言をしてくることがある。それがどんなに常軌を逸していても会長のカリスマ性により真実性、正当性を感じてしまうのが非常に厄介だ。
「全校生徒憧れの存在の隣に立つのは俺じゃないです・・・何の実績もない俺じゃあ手に余ります・・・」
「・・・果たしてそうかなぁ・・・?」
「会長・・・俺に何かあると思いますか?・・・言っちゃあなんですが、俺に何かあるとすれば他の男子より性癖が歪んで変態だってことぐらいです!」
「まぁ、それはよく他の女子から聞いているけど・・・君のいい所は他にもある!」
「何でしょうか・・・?」
俺が変態だという噂が会長の耳まで届いている近況を知り、俺はちょっとショックを受けた。
「君は私の攻撃から耐え切れる!」
「えっ?それって殴られ屋のことですか?」
「いやいや、そりゃあそうですよ!」
会長が言うには、1分間の殴られ屋トレーニングをこれまで数多くこなしてきた。特に会長とは体力が尽きるまで何回もインターバルでこなしてきたため、対戦回数は多い。
「私は護身術など武道も多少嗜んできたつもりだが、君の牙城はなかなか崩せなかった。」
数多くこなした1分間の殴られ屋トレーニング・・・その対戦の中で、会長は本気で俺をノックアウトさせようと挑んできた時もあったそうだ。それでも何とか耐え切られて実は凄く悔しかったらしい・・・会長は思ったことを本音で話してくれるので可愛い一面もある。
「君の忍耐力は自信を持ってもいいんじゃないかなぁ!」
「そ、そうでしょうか・・・?・・・では、会長の全力を見せてもらえますか?」
「ああ、もちろん!」
こうして、会長と1分間の殴られ屋トレーニングをすることになった。
確かに会長は文武両道と言われるだけあって、ボクシングにおいても飲み込みが早く、体の動かし方をわかってる人間だ。とはいえ、俺だってスポーツはやってきてるし、二週間とは言えボクシング経験者・・・簡単にノックアウトされるはずはない。
「まさか、会長がこの俺を本気で倒しにこようとしてたとは思いませんでした。」
「あぁ・・・私は欲張りなんだ・・・君がこんなに手強いとは思わなかった。」
お互いに煽りあって1分間がスタートする。
会長はグッと踏み込むように足を開いて体勢を整えた・・・護身術から知識の応用なのだろうか?居合のような構えをとる。
そして、物凄い形相でこちらを見ている。見極められているような気がする。
「・・・この一撃で終わらせる・・・」
そう呟くとすぅっと力が抜けたような、内に秘めた静かな間合いを作り出した。
・・・もうこれ、剣豪だろ!!??
間合いに踏み込んだら確実に仕留められそうな危険な匂いしかしない。
だからといって、このまま1分間距離を取って時間が経過するのを待つ
・・・そんな選択を俺が取るとでも?
わかっていてもノコノコと飛び込んでいくのが俺だろ!!と意を決して俺は飛び込んだ。
・・・当然、鋭いパンチが飛んでくる。一発目を読みでかわしたが激しく追撃が始まる・・・ボコォォォォーーーーーーッッッッッ!!!!・・・体がくの字に曲がるんじゃないかと思う程のボディーブローを叩き込まれる。
「強ぇぇ・・・」
もしかしたら男女合わせて学内生徒の中で一番強いんじゃないかと思う程、強烈な攻撃が飛んでくる。もうこのまま叩き潰されるのも仕方がないという思いが脳裏を駆け抜けるが、会長はそれを望んでいるのだろうか?会長は俺を倒して満足するのだろうか?
俺を倒すために全力で向かってくる・・・俺を倒せば喜ぶに違いない。当然のことだ。
それでも、会長は全力で立ち向かってもなかなか崩れない、崩せない俺が壁のように鎮座することを望んでいるんじゃないか・・・?
そんなことを考えたら、簡単に地面に頭を降ろすことは出来ない変態なのだ・・・俺は!!
「!!!!!!!」
俺は踏みとどまって、右に左に会長の注意を揺さぶる。間合いをごちゃごちゃにしてしまう作戦だ。そんな乱戦のまま規定時間の1分を回った。
ピピピピピという終了のアラームとともにドッと倒れこむ二人。
「やっぱり、君は私の理想だ!」
ニコッと嬉しそうな満面の笑みで俺を見つめる会長・・・戦っている時の凛々しい顔(鬼の形相)とは180度正反対のような女神の微笑・・・これは反則だ!!
「私の隣は嫌か?」
それから俺は会長と隣り合わせに並んで話をした。おそらく会長は、俺のネバーギブアップ精神旺盛な性格を評価してくれているのだろう。姉貴伝いにそんな性格を聞いて、自分でも確かめて・・・それでいて評価してくれたに違いない。
「手に余りますね・・・」
「じゃあ君がくるのを待つんじゃなくて、私から君の隣に行けば良いのかな?」
会長・・・そんな笑顔で俺を見つめないでください。蛇に睨まれた蛙になります。
【金曜日の放課後】
ここは近所の大きな公園内・・・
「蒼にぃ!じゃあいっくよ〜!!」
元気な声で気合を入れるのは、幼馴染の後輩…波島彩香(なみしまあやか)
俺と彩香はそれぞれの自宅に荷物を置き、俺はボクシンググローブだけを持ってこの公園へやってきた。
「私も練習するから、当然蒼にぃも付き合うよね!?」
そう言う彼女に無理矢理ここへ連れられてきた。そして彼女とボクシング練習をおこなった。
「動きが激しいから服がはだけちゃうね!」
彩香はそう言って、胸の谷間アピールしようとしているが、そんな単純な誘惑に反応する俺ではない!(勃◯)
「・・・って、こんなことしても蒼にぃには響かないよね?私知ってるんだ!蒼にぃに響かせるにはボクシングに向き合って全力でトレーニングすることだって!!」
流石幼馴染だけあって、俺のことをよくわかっている。『色気よりも熱血』アピールする部分をわきまえている・・・でも、少しは色気を出してくれてもいいんだが・・・(ムッツリ)
しかし、特定の運動部には所属してこなかった彩香だが、運動神経はよくセンスもいい。本気で練習するば化けそうなポテンシャルを感じる。見た目ギャルだからこそより一層インパクトがある。
そして、1分間の殴られ屋トレーニングをする時がやってきた。
「やっと蒼にぃをボコボコに出来る!この時を待ってたんだ〜」
「はっ?何言ってんの!?お前なんかにやられる訳ねーだろ(笑)」
「それはこっちの台詞…蒼にぃより私強かったもん!!」
「はっ?いつの時代のこと言ってんだ!?パラレルワールドか?」
「小学校の時、プロレスごっこで私蒼にぃ倒したもん!」
「いやいや、いつも俺がお前を泣かせてただろっ!?」
「泣かされたけど、最後私勝ったもん!」
思い返してみると、小学校時代・・・俺と彩香は時々プロレスごっこをして遊んでいた記憶がある。俺の容赦ない攻撃で彩香はよく泣いていた。そして彼女を泣かしてよく怒られていた苦い記憶もある。
ある時、怒られながらも懲りずにまたプロレスごっこをしていたが、反撃してきた彩香…彼女に腕を取られてしまい、足を絡められ自由を奪われる。
『ヤバい脱出しないと』と思ったのも束の間、彼女に体重をかけられながら、ぐるっと回転させられ、足を取られる。
『こ、これは・・・』俺は彩香に逆エビ固めを見事に決められてしまった。
『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッッッッ!!!』
程なくして俺はギブアップ・・・彼女は加減を知らないからあの時は本気で死ぬと思った。俺が初めて彩香にプロレスごっこで負けた一戦となった。そういえばそれ以降、俺は彩香とプロレスごっこをしなくなった・・・まるで、俺が彼女に再び負けるのが怖いからしなくなったみたいじゃないか!?(実際、そうなんだけど)
あの時の彩香の勝ち誇った笑顔が印象的で、その後彼女が飽きるまでお馬さんごっこ
させられた記憶がある。
・・・そこから、俺の性癖が歪みだしたような気がする。俺のような変態を生み出した要因の一つはこいつだったよ、そうえいえば!!??
まぁもう一つは兄弟喧嘩で姉貴にボコられていたことも一つだと思われるが、”三つ子の魂百まで”とはよく言ったもので、幼少期からの思い出が今日の変態へと続いていることを思い知ることになった。
「プロレスごっこの時、蒼にぃ…私の胸を触ってそれから責任とってくれてないんだけど!!」
「知らん!!全く記憶にございません!!」
「ウソ!責任を取って結婚してくれるって言ってたもん!」
「いやっ、それは言ってない!盛りすぎ!」
・・・殴られ屋トレーニングの最中・・・お互い集中力を揺さぶるように掛け合いをしていた。
「シュッシュ!!」
柔軟性は抜群の彼女だから、パンチモーションはしなりがあって凄く様になっている。こういうとこは才能の片鱗を感じる・・・しかし、そんな彼女に対しても一切容赦をしないのが俺だ!!
何発かは被弾したものの決定的な一打は全てかわして1分間は終了した。それから何試合かおこなったが結果は同じだった。
「う〜蒼にぃのばかぁ!!」
「甘い甘い!!今のお前じゃ俺を倒すことは不可能!!」
「じゃあ、私が蒼にぃをノックアウトさせたら、責任とってもらうからね!?」
「えっ、いやっ、そんな話は聞いてな・・・」
「絶対だから!!覚悟してよね!!??私蒼にぃのお嫁さんになるから!!」
無理矢理すぎる論法で押し切られてしまった。
・・・ガキの頃のように・・・最後の最後に反撃を喰らうなんてこと・・・まさか・・・そんなことないよな?
【・・・そして土曜日(0時頃)・・・】
24時を回り、日付が変更した深夜・・・俺は自宅の自室・・・ベッドの中で眠りにつこうとしていた。
・・・俺の名前は平見蒼馬(ひらみあおば)17歳の高校二年生・・・
・・・ 人 生 詰 み ま し た ・・・
終わった。完全に終わったわ。俺は、、、
どどどどどどどどうしようもない!!
月曜日は〜♪ 能勢紗華に告られ〜♪
火曜日は〜♪ 大倉美優に告られ〜♪
水曜日は〜♪ 葛西奈穂の気持ちを確かめ〜♪
木曜日は〜♪ 中院箕月先輩に追い詰められ〜♪
金曜日は〜♪ 波島彩香に勝手な約束をされ〜♪
・・・ ど う す ん の ? こ れ ? ・・・
己の優柔不断さ、思わせぶりな態度が招いた末路がこれか!?
多分俺、刺されて地獄に落ちると思う・・・
その夜は寝たのかどうかも記憶にない程、俺は憔悴しきっていた。
日が昇り、午前の自宅・・・今日は土曜だから学校は休みだ。
死んだような目をしながら、リビングのソファーに俺は腰掛けていた。
「あーくん、一緒にプリン食べよ〜♪」
のほほんとした能天気に話しかけてくるのは俺の三つ上の姉…平見優香(ひらみゆうか)
「姉貴・・・」
俺は姉貴が手に持つプリンとスプーンを奪い取って、全てを振り払うかのように無心でかきこんだ。
「あーくん!!まだ私一口も食べてないよ〜!!」
その後俺は、姉貴にもの凄く怒られ、しばかれた。
「それであーくん何があったの・・・?おねーちゃんが聞いてあげる!」
この一週間・・・毎日何があったのかをかくかくしかじか姉貴に説明した。
「そんなことがあったんだ〜てっきりあーくんは箕月ちゃんといい感じなんだと思ってたけど、まさか他の女の子にまで手を出して収拾がつかなくなってたんだね〜」
「いやっ、そうなんだけど・・・はっきり言われたら死にたくなる・・・」
「あーくんモテモテだね〜」
「・・・・・・・・・」
「モテモテでも女の子と付き合うのは苦手なんだよね?エッチ本やDVDばっかり買ってきていっぱいになってるもんね?」
「えっ?なんでそれを?」
「クローゼットから入れる天井裏に隠してあるのバレてるよ!」
「うっ、ウソだろっ!!??」
「おねーちゃんのお宝水着写真も混ぜておいたんだけど使ってくれてる?」
「知るか!!??そんな写真!!」
完璧な隠蔽スポットだと思ってたのに・・・どこの場所にすればいいのかまた新たな悩みのタネが生まれることになった。
「・・・それで結局のところ、あーくんは誰が一番好きなの?」
「いやっ、それぞれで関係性を築いてきたし、思い入れもいっぱいあって・・・誰に決めるとか・・・決められないというか・・・」
「決めないままでいたら、みんなを傷つけることになるよ。」
「・・・だからこうして悩んでます・・・」
姉貴の言うことはごもっともで、このままズルズル行けば破滅へと向かうのは明白だ・・・しかし、生まれてこのかた女子に興味津々、女子大好きであっても付き合うとなれば想像もできない(したくない))童貞野郎の俺は、この問題に直面し、何をすればいいのかわからないお手上げ状態になっている。
「私が思うに・・・あーくんは優柔不断な性格でも責任感は強いから、こうって決まれば何があっても絶対に守り抜くような堅物的なところはあるよね?」
「・・・確かに、姉貴が言ってることはわかるような気がする・・・」
「じゃあ、既成事実を作っちゃえばいいんだよ!!」
「なんかきな臭い話になってきたような・・・」
「今箕月ちゃんに文化祭のことで時々相談されてるんだけど・・・ちょっと箕月ちゃんと話してみるね!!あーくんのことはこのおねーちゃんに任せて!!」
姉貴はそう言って、サムズアップポーズ・・・いや〜これは・・・信用していいのか・・・?
結局、姉貴が何かするそうだが、全容は教えてもらえなかった。
「その代わり、あーくん!これからどんなことがあっても受け入れる覚悟だけはしていてね!!あーくんに覚悟さえあれば、この問題は立ち所に解決するから!!」
信用できるのは不明だが、俺は姉貴の言葉に少しは楽になった。
【翌週月曜日】
放課後、俺は生徒会室に呼び出されていた。
「失礼します!」
生徒会室の扉を開けると、そこには中央に中院生徒会長、左にクラスメイトの能勢と大倉、右に後輩の葛西と波島・・・先週気持ちを表明された女子生徒達が勢揃いしていた。
「失礼しました。」
と、俺は扉を閉めてその場を離れようと試みたが、途中で阻止され、彼女達の前に突き出されてしまった。
・・・終わったよ・・・
そう思っていた俺に、なぜ今日はここに全員が集まったのかを生徒会長から聞かされることになる。
「1分間の殴られ屋ボクシングが来る文化祭の演し物に正式決定されました!」
以前からその話は聞いていたが、半信半疑でまさか実現するとは思っていなかった。
目の前にいる女子生徒達と放課後キャッキャとするトレーニング・・・その風景を文化祭のステージ上で演し物にされるのだ・・・それってヤバ過ぎないか!?
「大丈夫、ちゃんとルールも設けてあるんだ!」
そう言って、会長から詳細を説明される・・・1分間の殴られ屋ボクシング・・・挑戦者(女子生徒)がボクシングで1分間サンドバッグ役(俺)を殴って殴って殴りまくる・・・挑戦者のパンチがヒットしたら1pt、クリーンヒットしたら3pt、ノックダウンで10pt、KOで20pt・・・この合計値を競い合う方式の演し物だそうだ。
合計値で一番高かった挑戦者が優勝となる。サンドバッグ役にどれだけパンチを浴びせられたかを競う競技である。
「会長!!質問があります!!サンドバッグ役は?」
「もちろん君だ!!」
「一人だけですか?」
「もちろん君一人だ!!」
「へぇ〜」
思わず俺は声が裏返った。
「ちなみに挑戦者は?」
「ここにいる五人だ!!」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇえ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!???」
もう演者が決まってんのかよーと突っ込むよりも先に、このとても親密なお知り合いの女子生徒達と勝負するのか・・・いや、これは挑戦者とサンドバッグ役(殴られ屋)との勝負ではない・・・挑戦者同士の戦いなのだ!
「もしかしてですが・・・その合計値を巡って皆さんが戦う訳ですか?」
「そういうこと!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇえ〜〜〜〜〜〜〜〜そそそそ、それって!!??」
「そうだよ、蒼馬くん!!」
「そういうこと!!」
「絶対私勝ちますから、先輩!!」
「ここで勝って蒼にぃを私のものにする!!」
・・・話の概要が見えてきた・・・文化祭の演し物で彼女達は決着をつけるつもりである。
「・・・会長・・・ちなみに・・・これは誰の入れ知恵でしょうか?」
「君のお姉さんだ!!」
あのクソ姉貴ッッ!!まーくん私に任せて!!って言ってたのはこのことかーー!!!???
会長は姉貴に心酔している部分があるから即採用したのだろう。
「勝者には君のお姉さんからのお墨付きと、ずっと眠らせていたこれを使うことも許可をもらった!!」
そう言いながら、会長は木箱から二枚のチケットを取り出した。
「勝者には”無料温泉旅行ペアチケット”をプレゼント!!」
姉貴が高校二年の任期最後の文化祭で9×9マスのガチ大ビンゴ大会を開催したそうだ。温泉旅行券争奪を掲げて大々的に催したが、それを誰よりも早くビンゴを完成させてしまったのが姉貴だった。主催者が真っ先に上がってどうすんだという結末を迎えてしまい、失敗の烙印を押される催しで得た景品の無料温泉旅行ペアチケット・・・向こう5年間有効のこのチケットは黒歴史として生徒会室の奥深くに保管されており、それをいよいよ使う時がきたと前生徒会長の姉貴も快く了承したそうだ。
「このペアチケットの一枚は君のものだ・・・サンドバッグ役を務めてもらう訳だから当然だし、十分に体を休めてほしい・・・そして、もう一枚は・・・」
「 こ の 五 人 の 中 か ら 勝 負 に 勝 っ た 者 ! ! 」
既成事実を作っちゃえばいいんだよ!!と言う姉貴の言葉がわかったような気がする。確かに、これはみんなの前で勝負して決まる訳なので言い逃れしようもない。
「・・・この企画・・・引き受けてくれるか?」
「会長・・・1分だけいいですか?少し考えます。」
そう言って、俺は生徒会室を出て廊下を歩きながら端から端まで折り返してくる。
・・・・・・・・
能勢紗華(のせすずか)・・・ボクシング練習を始めたきっかけになった女の子。パワフルだけど心優しく明るくナイスバディ
大倉美優(おおくらみゆ)・・・かつて互いに疑似恋愛した女の子。性格は似た者同士で気が合う。元中二のくせに可愛い
葛西奈穂(かさいなほ)・・・中学陸上部時代の後輩、見た目は美人で俺をずっと好きでいてくれてそれに甘えた部分もあったけどちゃんと見ることにした
中院箕月(なかのいんみつき)・・・姉貴の後輩で俺の先輩。全校生徒憧れの存在だけど、俺にはとぼけた態度でずっと構ってくれ、それ以上を望もうとしている先輩
波島彩香(なみしまあやか)・・・ギャルの幼馴染。疎遠だったけどずっと俺を慕い続けてくれていた。俺の性癖を歪ませたきっかけ
・・・・・・・・
う ん 。 誰 か を 選 ぶ な ん て 不 可 能 だ !
俺は再び生徒会室へ戻った。
「会長!その企画了解しました!謹んでお引き受けいたします!」
その言葉に目の前の彼女達は少し驚いた表情を見せたがすぐに気を引き締める。
「・・・ただし、そのルール・・・俺がみんなのパンチを全てかわしたり、ガードしてポイントを0に抑えれば、勝者はなしってことになりますよね?」
「そういうことになるな。」
「よしっ!!じゃあ、俺は誰一人にもポイントを奪わせずに完封することを目指して文化祭まで準備します!!そういうことなんで、よろしく!!」
俺は、誰かを選ぶなんて不可能だ!
勝負の結果を受け入れることは出来るかもしれない・・・しかし、そこに俺の意思、俺の想いはあるのか・・・?
俺は彼女達全員を完封し、温泉旅行チケットを二枚ゲットする・・・それから俺が行きたいと思う彼女にもう一枚を渡す・・・自分の未来は自分で切り開く!!
文化祭までは約一ヶ月・・・俺は決意を胸に生徒会室を出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「平見くんですね!!事情は聞かせてもらいました!!」
部屋を出て、俺はすぐに声を掛けられた。
「私達は生徒会役員!!中院生徒会長ファンクラブの幹部です!!」
そう言うのは5人の生徒会役員男子の面々・・・ファンクラブ代表の三住先輩から聞くと闇の組織”中院箕月ファンクラブ”の幹部生徒らしい・・・
「平見くん、あなたは今度の文化祭の演し物で会長を完封すると言いましたよね!?」
「き、聞いてたんですか!!??」
「我々はあなたを応援します!!ぜひ一緒に会長を完封しましょう!!」
「なぜ手伝って・・・ってまさか?」
「今度の文化祭で会長以外の女子様が勝てば、ようやく会長はあなたを諦めるでしょう・・・そうなれば、いよいよ俺・・・いやっ我々がお近づきになれるチャンスが開かれるのです!!会長が卒業する前に戦乱時代が到来することになるのです!!」
彼らは文化祭で会長に負けてほしいのだ。そのためにサンドバッグ役である俺を全面的にバックアップしてくれるという提案だった。
・・・それからだ・・・
「平見!!俺たちに任せろ!!」
クラスメイトや隣のクラスの男子・・・能勢のことが好きな連中・・・
「平見くん!僕らからも支援します!」
大倉のことが大好きな隠れファン連中・・・
「平見さんですね!!練習するなら俺らに任してください!!」
体育会系中心の後輩連中・・・これは葛西のことが好きな連中・・・
「平見ー俺にもなんかあったら手伝わせてくれっ!!」
チャラ系の男子達・・・彩香のことが好きらしい
俺のことを諦めて次の恋に進んでもらいたいと願う男子達が恋敵である俺をまさかの全面バックアップしてくれるというおかしな現象が起きている。
来たる文化祭まで約一ヶ月・・・それぞれの思惑が交差しながら、俺は戦いの準備を進めることになる。
放課後サンドバッグ 8mg(ハチミリグラム) @8mgnohome
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