で、結局お前は誰

シエナ:皆さんが……倒してくれて……守り切れて……よかった……(バタンキュー)。

イリーナ:きゃあ! シエナさん! 回復をー!

メメル:おあー! 起きろー!(頬をぺちぺち)

ニコラス:……おっと、わたしとしたことが、つい熱くなってしまったようですね。

ルートフィールズ:いいと思うよ。それだって、君だ。

ニコラス:……そうですね。

イリーナ:あら? あらあらあら? MPがありませんわ! メメルさん、お願いします!

メメル:おう!(ころころ)ぎゃー! ここでファンブルかよ!!(回復魔法に失敗したらしい)

ルートフィールズ:おや……ニコラス、助けてやったらどうだい?

ニコラス:仕方ないですね。【キュア・ウーンズ】(ころころ)はい発動しましたよ。

シエナ:ん……あれ、私……。

ニコラス:おはようございます。調子はどうですか?

シエナ:あなたが助けてくれたんですね。ありがとうございます。

ニコラス:いえ。イーヴ様の神官として……そして共に仲間を守り切った仲間として、当然のことをしたまでです。

シエナ:……そうですね。本当に、頼もしい人です(手を差し出す)。

ニコラス:ふっ……お手をどうぞ(引っ張り上げる)。

イリーナ:ああ、よかった……そういえば、ハルーラ様が仰っていた危機というのはこのことだったのでしょうか。

ルートフィールズ:さあ、それはどうかな。まだアレを調べていないしね。

GM:よかったー忘れられてなかった。皆さんの視線にお答えするように、声がします。「いやー! よくやった! 惚れ惚れするような安心力だったぞ! さあ、ワシを抜け!」と、台座の上の黒く、丸い球体に突き刺さったペンが喋っています。

一同:喋った!? 

ルートフィールズ:……抜いていいと思う?

ニコラス:さ、さあ……。

GM:「抜け抜け! ワシの名は〝神々を知る〟アーキディー・ウィーぺ! 偉大なる神学者たちの手を渡り歩いてきた由緒正しき魔法のペンであるぞ!」

メメル:〇ィキペディアだこれ!

GM:すぐバレた。えーと、詳細なデータが知りたければ、セージ技能レベル+知力ボーナスの「宝物鑑定判定」をお願いします。

イリーナ:ワタクシの出番ですわね。(ころころ)達成値は15ですわ。

GM:お。ジャストです。データ出しますね。


〝神々を知る〟アーキディー・ウィーペ

黒く重厚な雰囲気を醸し出す万年筆。武器にはならない。

このペンで書いた内容はアーキディー・ウィーペ自身の記憶として収集、蓄積される。所有者が問いかけると自動的に記憶を検索し、内容を朗読する。あと、書きやすい。


一同:ほ、欲しい……!

GM:おっとみんなから中の人が漏れ出した。

ニコラス:自分の創作〇ィキにしたい……!

イリーナ:それな! ですわ……!(机ばったんばったん)

GM:とりあえずはみ出た中身はしまっておいてください。で、誰が抜きます? ペン曰くプリーストレベル高い人だとよりうれしいって言ってるけど(にこにこ)。

ニコラス:先ほどは失礼しました。こほん。ところで、抜く前に1つ質問が。あなたはなぜその〈奈落の核〉に突き刺さっているんですか?

GM:「吸い込まれたのだよ!」……えーと、こいつの話をまとめるとですね。前の主人が死んだあとしばらく放置されていたんですが、気が付いたらこの魔域に迷い込んでおりまして。

ルートフィールズ:ああ。なるほど。魔域に迷い込んだこれの趣味が反映されてこんなダンジョンが出来上がったと。

GM:はい。本来なら迷宮を作るほどの強さもないでしょうしね。知性があったが故の事故というところでしょうか。

ニコラス:全く、迷惑なペンですね(苦笑い)。

シエナ:イリーナさん。欲しいなら、あなたが抜くべきでは? セージですし。一番ぴったりだと思いますけど。

メメル:そーだそーだ。誰もいらねぇなら売っちまおうぜ。高く売れそうだしよ。

GM:え、ひどい……(がびーん)。

ニコラス:わたしもこの盾があれば十分なので、どうぞ。

ルートフィールズ:僕らだとこのペンのお眼鏡にかないそうもないしね。プリーストレベル低いし。

イリーナ:はい! 売られる前に抜きますわ!(すぽーん)

GM:イリーナの手に万年筆が収まった。きらーん。

イリーナ:アーキディー・ウィーペさん、これからよろしくお願いいたしますわ!

GM:「うむ。ご主人よ。これからもワシに神々の奇跡を見せておくれ!」ペンが突き刺さっていたところから〈奈落の核〉がボロボロと砕けていきます。そして時空の裂け目みたいなものが生まれました。出口のようです。

メメル:よっしゃ! これで帰れるな!

シエナ:はあ……いろいろあって大変でしたね……。

ニコラス:では最後に別れの挨拶を……。

GM:うん。でもその前に出口に吸い込まれるよ。

一同:え?(固まる)

GM:出口にぎゅんぎゅんと吸い込まれた皆さんは、暗い空間に放り出されました。何が起こったと目をまわしていると、皆さんの前に虹のベールを被った女性が現れます。

メメル:あ! 返事がねぇただの屍みてーな女神!!

シエナ:こら!! メメル!! 面と向かってそんなこと言っちゃいけません!(頭にチョップ)

メメル:あイテ!

GM:「ああ、皆さん、この度はありがとうございました。これで恐らく、世界は救われました!」

ルートフィールズ:そこは断言してほしいな(苦笑い)。

ニコラス:ええ。全く(同じく苦笑い)。

GM:「この〝奈落の魔域〟はその魔法のペンの『様々な神々の一端に触れたい』という欲望が反映されていました。その結果、私たち神々がラクシアに降ろした魂が吸い寄せられ……その……センティアンが誤爆する事態となり、私たちもとても困ってしまいまして……」

一同:誤爆(笑)。

GM:「あなた方が出会えたのもペンが『様々な神官に出会いたい』と願い、入り口を開いたから。このまま放置していれば、そこから悪しきセンティアンたちが2つの大陸に跋扈し、大変なことになっていたでしょう。本当に、本当にありがとうございました!」(ぺこり)

イリーナ:つ、つまり、何もかもこのアーキさんの嗜好が原因と……。

GM:「えへん」(胸を張ってみた)

メメル:趣味悪ぃな、お前。

GM:「ぐはっ!」(胸を押さえた)

ルートフィールズ:まあ、おかげで納得がいったよ。なるほどね。

GM:「彼らもお礼を言っていますよ」ハルーラが指し示した先では、見覚えのある人たちがオーロラの上を歩いています。皆さんに気づいて手を振ってますね。

シエナ:あの方々は……!

ニコラス:よかった。出られたのですね。

メメル:じゃーなー! 次はもっと酒飲めるようになっておくぜー!(両手ぶんぶん)

ルートフィールズ:僕もお酒に強くなっておきたいな。

イリーナ:またお会いしましょう!

GM:「さあ、アビスの崩壊に巻き込まれないうちに、元居た場所に戻ってください。そしてまた、世界を救ってくださいね」と、出口が光り出す。

ルートフィールズ:ここでお別れのようだね。

イリーナ:そんな……せっかく仲良くなれましたのに。

メメル:まあどっかでばったり会えんだろ。おれもテラスティア中回りつくしたら、アルフレイムに行ってみっかな。

イリーナ:そうしましょう! 私たちなら、また世界を救えますわ!

ニコラス:ありがたきお言葉。ご期待に沿えるよう、精進しますね。

ルートフィールズ:弱きを助けるのはミリッツァ様の教えだからね。もちろんだよ。

シエナ:……ルートフィールズさん、あなたの本気、とても素晴らしかったです。

ルートフィールズ:ふふ。君の防御があっての振舞いだったさ。

シエナ:それからニコラスさん……最後の一撃、恰好よかったです!

ニコラス:……いえ、わたしの方こそ。同じ守りを司る神の信徒として、あなたに敬意に表します。また縁があれば、どこかで。

シエナ:はい。また会いましょう!


――気が付くとそこはダンジョンの外だった。

 あの出会いは夢だったのか、現実だったのか。あやふやで頼りない記憶だけが残っている。でも確かに私たちは出会ったのだ。共に戦った心強い仲間たちのことを、きっと忘れない。


 またいつか会える日を信じて、冒険者たちは歩き出した。


おしまい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【SW2.0+2.5】お前ら全員プリースト!【リプレイ】 八幡@笑う酔いどれ亭 @yoidoretei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ