第68話 常夏2 近江姫

 藤式部呟き

 「なに?この頃みんなルリちゃんのことを浄瑠璃姫って呼んでるの?

 確かに六条院は極楽浄土のようなもんだけどね。」


 藤式部

 「きょうはいよいよあの姫君の登場です。

 いつかなんかの機会に登場させたいとずっと思ってました。 

 では、始まり始まり。」





 内大臣ナガミチは最近自分の所に名乗り出た娘のことを、内大臣家の人からは認めて貰えず軽くあしらわれて、世間からも馬鹿じゃないかと非難されていると聞いていたので、弁少将ムネヨリが事のついでに源の太政大臣ミツアキラが「娘を探してるのは本当か?」と聞いてきたことを話すと、

 「そうか。

 源氏の所でもこの頃どこの誰とも知れぬ山賤やまがつの娘を引き取って、大事にしてるみたいだしな。

 そうそう他人とは張り合わないあの大臣が、この辺りのことには敏感に反応して非難してきたか。

 これは身に覚えのある証拠だな。」


 弁少将ムネヨリが、

 「あそこの西の対に囲ってる人は、特に難のない人のように見える辺り、それなりの人だと思われます。

 兵部の卿の宮など、すっかり夢中になって結婚のことも言い出そうとして悩んでるとか。

 並大抵の人ではないとみんな思ってるようです。」

と言うと、

 「うむ、それはあの大臣の姫君だと思うから、そんなふうにとてつもない人のように評価されるだけだ。

 人の評価なんてのは大体そんなもんだ。

 実際はそれほどでもあるまい。

 殿上人にも劣らないなら、前から有名になってたはずだ。

 なまじっか源氏の大臣が完璧すぎて、この世にこれ以上ないというくらいの評価を受けているのに、その最愛の妻にすら大切に無傷に育て上げ先行き安泰の子供がいないし、大体において源氏には子があまりできず、不安になってるんだと思う。

 それよりは下の妻だが、明石の夫人が生んだ娘の方が世にも稀な幸運に恵まれ、望みを繋いでるようだ。

 今度出てきた姫君はおそらく実の娘ではあるまい。

 多分、凄く才能があって、置いておく価値のある人だというんで引き取って来たんだろう。」

と余る深く考えずにそう言います。


 「さて、その姫君の聟はどうやって決めるのか。

 兵部の卿の親王を傍に入れて、そいつにやろうとしるのか。

 もともと源氏と特に仲良くしてたし、人柄も目を見張るものがあってお似合いだろうな。」

 などと言っては自分の娘のモトコのことをが悔やまれてならなりません。


 「あんな風にいろんな男に気を持たせておいて、さて誰にやろうかなどとやきもきさせててみたかったのに。」

と羨ましがれば、相当な官位でもない限り結婚を許さないと思いました。


 源氏の大臣ミツアキラが何度も丁重に申し入れしてくるなら、根負けしたことにして承認しようと思うが、あの中将カタトシは特に焦れた様子もないのが面白くありません。


 そんなことをいろいろ考えながら、予告することもなく軽い気持ちでモトコの所へ行きました。


 弁少将ムネヨリも一緒です。


 姫君モトコは昼寝をしてたところでした。


 薄物の単衣ひとえを来て寝転んでる様子は暑そうにも見えず、とにかくちまっとして可愛らしいものでした。


 透き通ったような肌にとにかく可愛らしい手つきで扇を持ちながら、肱を枕にして、そのままになってる髪の毛はそれほど極端に長くはないけど、髪の毛先の感じがなかなか優美です。


 女房達は几帳の後ろで物に寄りかかって寝転がり、休んでいたので、すぐに飛び起きることもありません。


 扇を鳴らすと、姫君モトコのぼんやりとこちらを見あげる目も可愛らしく、顔を赤らめてるのも親の目にはただ可愛いなと思うだけです。


 「端近くでのうたた寝のことはきつく注意していたはずだ。

 何でこんな不用心な格好で寝てしまうんだ。

 女房達も近くに控えてないというのは怪しからん。

 女は常に自分の身を意識して守らなくてはならない。

 そんなだれてちゃらんぽらんになってたんでは、品がないぞ。

 まあ、あまり頑なに身構えて、不動明王が陀羅尼を唱えるみたいに印を作ってても困るけどな。

 目の前の人にあまり他人行儀に距離を取ってるのも、高貴なようでいても冷淡な感じで性格悪いし。


 源氏の太政大臣が后候補の姫君にやってる教育というのは、何でも一通りのことを学ばせて、一つのことにこだわるのでもなく、どの分野でもわからなくなってまごまごすることもなく、ゆったりと構えるというのを基本としている。

 まあ、確かにそれは理想だが、人間どうしたって得手不得手があるんだから、得意なものを生かすというのもありだと思う。

 あの姫君が大人になって宮廷に出仕するようになる頃がどうなってるのか、とにかく楽しみだ。」


 そうは言うものの、

 「前は自分の計略通りになんて思ってたこともあったが、それも難しくなってしまい、今はどうすれば宮中で笑われることのないようできるかと、他の人達のいろんな意見を聞くたびに悩んでるんだ。

 ただ片っ端から試そうとして馴れ馴れしく寄ってくる人の願いなんて聞いてたらきりがないし、そんなのを真に受けてはいけない。

 俺にも考えがある。」

など、可愛いなと思いつつ説経します。


 娘君モトコとしては、以前は何も深く考えることなく、実際あんな困った騒ぎになってしまっても、平気で楯突いてたなと、今思うと胸の塞がる思いで、本当に恥ずかしいと思いました。


 宮様からもいつも会えないことで不満を聞いてましたが、右大臣ナガミチがこのように言っているので遠慮して、会いに行くこともできませんでした。


   *


 内大臣ナガミチは北の対にいる新たな姫君のタカヒメコを、

 「どうしたものか、

 勝手に引っ張って来ておいて外聞が悪いからと帰らせるのもあまりに安易だし、何やってんだって感じだ。

 ここに囲っておいても本当に育てる気があるのかと人から言われるのも嫌だな。

 女御の女房達と一緒にして、笑い者になっちゃえばいいか。

 女房達が障害があるのではないかという顔付も、多分そんなに言うほどでもないんだろう。」


 そう思って女御の君ツヤコに、

 「あの人を出仕させよう。

 見苦しいことがあったら、年取った女房などに遠慮なくびしびし言ってもらえばいい。

 若い女房達が噂の種にしてても笑わないようにしろ。

 軽々しく思われるからな。」

と笑いながら言いました。


 「そんな特別ひどいなんてことはありません。

 中将朝臣などがまたとない素晴らしい人だと言ってたのに、それほどでもなかったというだけのことでしょう。

 そんなふうに言われて騒がれてしまって、期待に応えられないもんで、顔から火が出る思いなのでしょう。」

と何とも恥ずかしそうにそう言います。


 その様子に親し気な可愛らしさはなく、とにかく高貴でつんと澄ました中に親しさも具わり、さながら寒い中に梅の花が開き始めた朝ぼらけのようで、多くの言葉を余韻に残すように微笑むあたり、ただものではないと思いました。


 「中将朝臣がそう言ったのは、若さが故の思慮不足だった。」

など言うものの、新姫君タカヒメコの扱いは気の毒なものでした。


 すぐに、この女御ツヤコを訪ねたついでにふらっとその新姫君タカヒメコのを所を覗くと、縁側の方にはみ出すように簾が押し出すように座って、五節の君という遊び好きの若い女房と双六(バックギャモン様のもの)をしてました。


 手をひたすら擦り合わせて、

 「小さい目出ろ、小さい目出ろ」

という声がひどく早口でした。


 「うわ、何だこりゃ。」

と思ってお供の先導しようとするのを手で制して、それでも妻戸のわずかな隙間から障子の開いてるところを覗き込みました。


 五節の方も同じような興奮した調子で、

 「お返し、お返し。」

と賽筒を掴んだまま、すぐには振りません。


 何か思うことがあってそうしてるのでしょうけど、まったく何も考えてないかのように振舞います。


 見た目は弾けるような可愛さがあって、髪も綺麗で前世の罪も軽かったでしょう、額が狭く早口なのが玉に疵なようです。


 取り立てて美人ではないが、全く他人だと言い張ることもできず、鏡に映った自分の顔と照らし合わせても、」不愉快なくらい宿世の縁を感じました。


 「こうしてらっしゃるのは、まだ不慣れでどうしていいかわからないとかだったりするのか。

 いろいろ忙しくて尋ねることもできなかったが。」


 そう言うと例によって早口で、

 「こうしているのは何の心配もないからです。

 長いことどういう人かわからないけど逢いたいと思っていた人のお顔をいつも見れないということで手詰まりな感じがします。」

と言います。


 「確かに、自分の傍で使う人があまりいないから、近くに置いて慣れさせようと今まで思ってたけど、そうもいかないみたいだな。

 大体人に仕える人と言うのは、どうであれ自分からその中に加わり、周囲の人もそれを容認できる者でなければ安心して任せられない。

 それですら、その女が主人の子と知られるとなれば、親兄弟の面汚しになる事が多い。

 まして。」

と続けようとしたところ、空気も読まずに臆面もなく、


 「何でよ、そんな大げさに考えてお傍に引き立てるなんて窮屈なこと言うの、尿瓶持ちでも十分だというのに。」

と言えば笑いをこらえることができずに、

 「そんなことさせたりはしないよ。

 こうして巡り合えた親に孝行したいというなら、物を言う時の声をもう少しゆっくりさせたらどうだ。

 そうすれば、俺も安心して長生きできる。」

と冗談を言う大臣に、にっこり笑ってこう言います。


 「早口は生まれつきのことです。幼い頃言葉を喋り始めた時にも亡き母もいつも悩んでは治そうとしてました。妙法寺の別当大徳が産屋に入って来たのでその口調がうつったと嘆いてました。どうすればこの早口が治るのやら。」


 そう言って落ち着かない様子にも、親孝行の気持ちが深く表れていて、哀れに思います。


 「大徳が近くに入ってきたというのは災難だったな。

 その大徳の前世の罪のむくいだ。

 発話障害や吃音は大乗を誹った罪だとされてるからな。」

と言うと内大臣ナガミチは、我が子ながら女御ツヤコであれ、自分すら気が引けるような人にこれを合わせるのは恥ずかしいし、


 どういう理由でこんな怪しげなのを疑わずに家へ迎え入れたんだ、と思いました。


 女房達もみんなこの人と一緒にいるんなら、いろいろ言いふらすに違いないと考え直し、

 「女御が家に戻ってきた時だけそちらの方へ行って、その人の振る舞いなどを見習うと良い。

 特になんてことない人でも、そうした立派な人と交わり、それに慣れていけばそれなりの者になるはずだ。

 そういう気持ちで接すると良い。」


 そう言うと、

 「それは大変嬉しいことであります。ただ何としても何としても皆様方の仲間に入れてもらってわかってもらえることを寝ても覚めてもずっと前からそれ以外のことを思ってたわけではありません。お許しいただけないなら水くみでもいいから使ってほしいと思ってます。」

と気を良くしてより一層長々と喋り出したので、言ってもしょうがないと、

 「まあ、その、そんな卑下して薪を拾おうなんてしなくても、女御の所にいればいい。

 ただ、あのお手本としてきた法師だけは勘弁を。」

とわざとボケて言ったのもスルーして、大臣の中でも特に立派で威厳があって華やかなで、普通の人では会うことも姿を見ることもできないのも知らぬげに、

「ではいつから女御殿の所に参りましょうか。」

と言えば、

 「吉日などを指定すべき所だがな。

 まあ体裁を考えることもないな。

 そう思うんだったら今日からでも。」

と言い捨てて行ってしまいました。


 立派な四位五位の人達に守られて移動するにすら、とにかく圧倒的するような力を見せつけているのを見送って、

 「ええ、うわあ、お父さんなんて凄いの。あんな血筋だったというのに粗末なあばら家で生まれ育ったってこと?」


 それを聞いて五節が、

 「そんな大げさに騒ぐと、こっちが恥ずかしくなるでしょ。

 普通の親で大切にしてくれる人を探したらどうなの。」

と、ひどいことを言います。


 「いつもいつもあなたはそうやって人が傷つくことばかり言ってひどいじゃないの。大臣の娘になったんだからそんなため口叩かないでよ。本来あるべき身分になったんだからそう扱って。」

と怒った顔も親し気で愛嬌があって誇らしげなのは、ある意味高貴とも言えるもので罪のないものです。


 ただ、滋賀のど田舎で得体の知れぬ下人たちの所で生まれ育ったので、物の言い方も知りません。


 特に何ということもない言葉でも、穏やかな口調で落ち着いて話すなら、耳に入ってきた時に大事なことのように聞こえるし、面白くもない歌物語でもそれっぽい口調でもったいぶった感じで最初と最後を不明瞭に歌い上げると、良い歌なのかどうかわからなくても何となく面白そうに聞こえるものです。


 逆にたとえどんな深い意味のある良いことを言っても、心地良く聞こえてこないようなチャラい調子で口をついて来る言葉は、がさつな感じです。


 それに、言葉に訛りがある上に思ったことをずけずけ言う乳母のもとで覚えたような言葉は、態度が悪いふうに聞こえてしまうものです。


 全くどうしようもないわけではないが、三十一文字の上句と下句の繋がらない歌を早口で次々と詠みます。


 「これで女御殿に参上するように言われたのに、なかなか行かないようなことがあると機嫌を損ねてしまうわ。夜には行きましょう。内大臣の君がこの世でかけがえのない人だと思ってるにしても、あの方々に冷たくされたんではこの家にはいられなくなっちゃうし。」

と言います。


 そんなに大臣ナガミチの気持ちは軽いのでしょうか。


 まず手紙を書きます。



 《逢うよしもないという芦垣のすぐそばに居ながら、影踏むばかりの近くまできて勿来(なこそ:来るな)の関を設置するのでしょうか。

 知らなくても武蔵野といえば紫の王家の縁もあって畏れ多いことですけど。

 あなかしこ、あなかしこ。》



と線の途中がかすれたようになって、点がたくさん並んでるような書体になってしまっていて、裏には、



 《実は、日の暮れる頃にも参上しようと思ってますが、嫌われるとかえって行きたくなるものでしょう。

 いやいや、不審に思って逢わないというのでしたら水無瀬川の水屑となるものを。》



 そしてまた隅っこに、



 《生え揃わぬ常陸の浦はいかが崎

    どうすりゃ会える田子の浦の波


 吉野の大川水のなみなみならぬ思いです。》




 そう青い紙一重ねに、古めかしい草仮名に近い荒っぽい書体で、どこの流派とも知れず、行の軸が左右ぶれているにもかかわらず、字の最後を下に長く伸ばして連綿させようとして、無理に気取って書いたような感じです。


 行の下の方が詰まってしまうと横に曲げて書いたりして、行が傾いて倒れそうになってるのを、上手く描けたとほくそ笑むように見直しては、またそれをやたら小さく巻き結んで撫子の花につけました。


 便所掃除のわらわは清楚で気さくな人で、女御ツヤコの所に行きました。


 女房達の詰所にもなっている台盤所に寄って、

 「これを渡してくれ。」

と手紙を渡します。


 下仕への人が知ってて、

 「北の対に仕えてる童だ」

と言って受け取りました。


 大輔たいふの君と呼ばれてる人が女御ツヤコの所に持って行って、解いて手紙を見せます。


 女御ツヤコが少し笑いながら置いたものを中納言の君と呼ばれてる人が近くにいて、横からチラ見します。


 「随分斬新な手紙のようですねえ。」

と興味を持ったようで、


 「正しい草仮名を見たことないのでしょうね。歌の意味も支離滅裂ね。」

と言って女御ツヤコは手紙を渡しました。


 「返事をこれに劣ない気品でもって書かなくては、田舎もんだと思われますね。」

 すぐに書きなさい。」

と中納言の君に振ります。


 顔に出すことはなくても、若い女房達は意味もなくおかしくて、みんな心の中で笑ってます。


 返事をと言われても、

 「古歌の言葉ばかりを繋げて文にしても、伝わりくいし。

 下々に下す宣旨のような代筆だとすぐにわかってしまっても気の毒ですし。」

と言って直々の手紙のように書きました。



 《芦垣の近くで聞こえない声を上げる不安な気持ちだったとは、悔やまれます。


 常陸国の駿河の海の須磨の浦に

    波よ来なさい箱崎の松》



と書いて読んで聞かせれば、

 「あらやだ。

 本当に自分で書いたと思われちゃうわ。」


 痛いなとは思いましたが、

 「そこは読んだ人がわきまえるべきことです。」

と言って手紙を紙に包んで持っていかせました。


 新姫君タカヒメコはそれを見て、

 「なかなか面白い詠みっぷりね。松(待つ)とおっしゃったのなら。」

ということで、思いっきり甘い香りのする練り香を念入りに薫きこみました。


 紅などを真っ赤に塗りたくり、髪を梳いて整えれば、それなりに見栄えがして愛嬌もあります。


 逢った時には、また余計なことを言うのでしょうね。






 「さざなみ姫来たーーーーーっ。」

 「えっ、そんな有名なの?」

 「幻の処女作って噂には聞くけど、実際知ってる人は稀だという。」

 「花山の御門の頃じゃなかったっけ。」

 「初出仕したけど馴染めなくて昇殿拒否になってた頃書いてたとか。」


 (注、「さざなみ姫」という作品は史実にはありません。)


 「いかが崎って確か近江よね。」

 「波の花が咲き散る所。」

 「『昔の人はみんな先に歌枕を置いて後に思う心を表す』って公任さんの髄脳にもあったから、間違ってはないわね。」

 「草の生え揃わないってのは小野だっけ。」

 「小野は草が生え揃わないから『隠れることができない』って意味だったわね。古歌にあったと思う。」

 「なかなか渋い所を突いて来る。」

 「常陸の浦は常陸の安積の浦の玉藻。」

 「引っ張ってはいけないが、私は引っ張って来ても仲は絶えないよって意味だっけ。」

 「私は逃げも隠れもしないし、引っ張って来ても大丈夫だよってこと?」

 「そんなところじゃない?」

 「それでどこに隠れてるかというと、近江の伊加賀崎。実際近江に隠れてて、中将に引っ張られてきたからね。」

 「でっ、田子の浦の波は波の数を数えて待ってますってこと。」

 「地理的には出鱈目でも、『隠れることもなくて近江から引っ張られてきたこの私をどうするつもりですか、あなたにどうすれば会えるのですか、波の数を数えて待ってます』って、ちゃんと意味は通じるし、案外凄いんじゃない。」

 「斬新すぎてついて行けない。」

 「浄瑠璃姫にできるかしら。」

 「案外さらっと返したりして。」

 「それに比べると中納言の君の返しの方はただ歌枕を並べただけで何の工夫もない。」

 「いかにも二流の女房のしそうな。」

 「一応『松』は掛詞にしてるけど。」

 「それだけね。」

 「それはそうと、早口ってやはり前世の縁?」

 「うまく喋れなかったりと一緒で、教えて治らないのは大抵前世の縁でしょ。」

 「生まれつき目が見えなかったりと一緒。」

 「悪いのは前世で、本人に罪はないってこと。」

 「生まれながらに知ってるのも前世の知識だというし。」

 「前世って凄い。」

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