第4話

肺に煙が回り何度も咳き込み、涙目にながらタバコ一本吸い終えた。次に彼女は少々口角を上げ、ビール缶を取り出した。

「飲めよ。」

私の手に強く置かれたビール缶はそこまで冷たくはなかった。しかし、もう関係ないと思い一気に缶の蓋を開け体を傾け体にアルコールを漂わせた。冷たさがなく気色悪い感覚と、飲んだことのない味に加えてアルコールが私の体をむさぼっていく気がした。気がつけば私はビール缶を飲み干していた。すると彼女は何処からか白の服を私に押し付けてきた。不服げにその服を奪い広げてみればそれは良く記憶に残っている白のワンピースだった。

「それ見てコーフンしてたんだろ。」

隣で彼女はタバコに火をつけ私に言った。ワンピースは少し泥で汚れており懐かしさと自分の恐怖心や不安感を鬱陶しいくらいに刺激し、気持ちの悪い汗が滴るのを感じた。

「好きだから来たんだろ。ついてこいよ。」

強く冷たく言い放つ彼女にどこか安心感が湧いた。私は既に未成年でありながらタバコ一本吸い、ビール一缶飲み干してしまった逸脱者なのである。どうもまた人間界に紛れこめる自信がなかった。父親は酒に溺れて母親は夜逃げした。惜しむ物なんてないと思った。


私は月光が良く届く夜の街で彼女についていくことにしました。

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輝かしい逸脱 続櫂之介 @anraades3

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