第3話

父親はすでにロックンロールの爆音で快楽に達しながら泥酔していた。私はそんな父親を素通りし、家の外へ出た。外には星が一つ二つ誇張しており、目を凝らしてみればパラパラと細かな星もいた。月は半分ほど欠けていた。私は車庫から自転車を引きずり出し、サドルに跨っては彼女の指定した場所へペダルを回した。


夜は非常に静かで私の自転車の音のみが周りには響いていた。数十分程夜の町を彷徨い、とうとう彼女の指定したスーパーマーケットに着いた。駐輪場に自転車を停め、スーパーマーケットの入り口に近づいてみれば一人の女性が入り口前の壁にもたれかかっていた。耳にはピアスがびっしり開いており、細く筋が露呈している首にはネックレスがかかっていて、虚な目をしてこちらをギラリと睨みつけた。しかし、恐怖よりも先に何処か輝かしい懐かしさが私の脳みそに回ってきた。あの人だ。

「よう、来たか。」

女性にしては少々低い声で私に言ったかと思えば彼女は私にタバコの箱を押し付けた。箱からは一本タバコがはみ出しており。新品ではなく既に数本使い切っていた。

「タバコ?なんでだよ?」

焦りを隠す為にタバコを眺めながら小声で問いかけた。

「関係ない。吸え。」

彼女の声や目付きはどんどん苦しくなってきた。吸う以外の選択肢は無い気がした。なので渋々タバコ一本を口ではさみ、ライターの火をタバコの先端に近づけた。私の震える手により細かく震える火はタバコにかすり、形を変えた。そしてボッとタバコに火がつき汽車の様に煙が上がった。その様子を彼女はただ黙って見ていた。夜、星空の下での出来事でした。

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