第16話
「オレはオレの心を著しく傷つけた代償も請求したいとこだけど、未成年だしな。警察だって連れてったって本人と親に注意する以外できることってないと思う。佐々木の様子からすると、ありゃ親は慣れっこだろうし、堪えないよなー、きっと」
「修ちゃんちみたいだね」
「だな」
芽久の言葉にうなずいてるけど、あんたがするのは納得ではなく反省なのでは。身にツマサレルとかいう言葉もあるんだし。
「二度としないように注意したとこで、聞きゃしないだろうなー。あれじゃ」
「それで修平みたいな大人になんのよ。怖いよね、成長が」
しみじみ。
「おまえ達もだよ」
「ぎゃっ」
そんな声はもっぱら私の。暗がりから徐々に姿を現したのは、警察にお勤めの兄上様ではないですか。
これ以上はないってくらい渋い顔をしているのは、――こんなんだもん、当然だろう。私は夜よりも黒くなった。ど。どどどどうしよう、こんな事態。
「そこ三人、学生らしく反省してもらうから。一色先生」
「任せときなさい、小野里君」
「いっちゃん! どうしてここに?!」
「騒ぎが聞こえるくらい学校近くに住んでるからだ! よそのクラスの生徒だと思って息をついてりゃ三人もぞろぞろと。先生はいつだって雑用が溜まってるんだ。覚悟しとけよ、ものすごいぞ」
続いて出てきたいっちゃんに、感覚を失った私は驚けなかった。雑用? そんなんでいいなら、いくらでもやる。兄上様が与える罰よりは、どう転んでも軽いはず。
と。その兄上様がこっちを向いた。
「静佳」
「わぁぁ、ごめんなさいっ。もう絶対にしないですっ」
「しでかしたことがどうとかより前に、決められていたルールを一つ破ってるよな。わかるか?」
「……門限?」
「高校生にもなって外で遊んでて時間を忘れたわけじゃないだろう、確信犯だな、そうだろう」
出された二択に少々迷う。子供の領域に自ら落ちて行ってでも、忘れていた方がいい気がする。
確信犯て過失じゃないから罪は重たくなるはずだ。それくらいなら忘れていたと言ってしまえば、この先どれだけの子供扱いを受けて我が家の法律外でも法の守護者のお兄ちゃんに虐げられるのだとしても、時計も読めないくらいの幼児に退行したふりをして精神鑑定……――バカなのか? 私は。
「確信してました、すみません」
「自粛してろ、多角的に」
はい。万華鏡並みに様々に。
うなだれた私の様子に心を動かされたわけではない、身内のことは家に戻ってからだということで、お兄ちゃんは芽久と中尾も範囲に入れた。
中尾はおとなしく優等生的な顔をして、芽久はいつもと変わらないかわいらしい芽久の顔(どんな時も)。
「反省しつつ真っ直ぐ家に戻ること。明日からは神妙に先生の言いつけに従うこと」
「はい」
とっとと神妙な私たちに重々しくうなずいて見せる。それから私相手の時に勝るとも劣らない調子の、本当に嫌そうな顔で息を吐くと、わずかなその身長差を有効に使って、修平のことを見下ろした。
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