第2話
私がなんとなく突っ立ってる人がいるなって見ていた像、あの人創設した人だったのか。雨の跡だかなんだかしましまになっているけど、大切なものではあるらしい。
そんなものを見張っていようとは、校長も暇だよな、と思う。自分に時間が少ないってことで、私は他人のそいつの使用法が気になって仕方がない。
「ポスター、地味だったかな。もっと派手なの作った方がいっか?」
「さらに派手なのは掲示許可が下りないだろう」
「そんなんもぎ取りますわ」
「校内の秩序を保つために、掲示板を見てやってくれ」
「はぁ。努力しましょう」
なんだかわからないけど、それで中尾の暴走を止められるなら。
中尾は意味を外さず『天下一』の優等生だから、たいていの望むことは思うがままになってしまうので、良識ある周りの人間が引き止めるべきなんだと思っているから、即返事。
いったいどんな派手ポスターを貼りこんだんだか、先生のこの様子からすると、期待できるものに間違いなさそうだけど、戻って見てくる余裕はもちろん、今の私にあるわけない。
「小野里」
「はい」
今向きを変えようとしたとこだったのに。
「中間はなかなか大した余裕で手を抜いてたが、期末は本気で力見せろよな。西野はおまえの将来なんかカンタンに潰すぞ」
「そですね。そんなこと気を回さないだろうって知ってます」
わかっているならなぁと、一色いっちゃん息を吐く。いっちゃんはこの町で生まれて育ち、小中高に至るまで一学年先輩として育ってきている、修平について意見する権利を持っている人だ。
長らくの付き合いに敬意を表して、忠告はありがたく心にオサメルことにする。
そいでではっ。
「それでは急いでいたので。さようならです、先生」
私は素早く体を反転させながら、芽久と中尾に手を振った。ありがたいけれどいつまでも聞いていても、今聞いたこと以上は内容ないと思う。
期末ね期末ね。はい、ちょっとはがんばんないと、ってわかりましたとも。
校庭の砂を蹴散らし、アスファルトの道路に飛び出した時に、もう一度声がかかった。塀を越えて向こう側になっている。
「お、のざとー」
しつこいなー。
「はぁい?」
「佐々木が向かってるぞ。待っててやれば?」
ササキ? あぁ、芽久の言ってた。
「ダメです、後回しです。さよーならー」
捕まってしまってはたまらんと、私は落ちかけた速度を戻し、さらには上げた。断りきれない用事だったらどうしようとかそんなことよりずっと前の段階、内容聞いている時間だって惜しいくらい。
スピードとしては、警察に追われる犯人級。この上のにはもう、巨大な岩に追われる探険家レベルという、生命に関わるハイクラスしかないくらいの速さ。
どんな用事だろうと重要度は劣っていることになっている。私が急いで戻らなければ、おっさんは眠りの国に永久市民登録だ。
――永久?
あぁ。それでいいんじゃない?
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