第12話 俺たちは暗くなるまで一緒に勉強をする
数時間後。
嶋森と柚木崎は、諸々の必要なことを済ませに出ていった。その間に俺もある程度の用意は済ませており、ちょうど落ち着いたところだった。
これから嶋森と泊まるのだと考えると、せっかく落ち着いてきた心拍が上がってくる。
そうこうしているうちに、再び家のチャイムがなった。
「有坂せんぱーい、ただいまです」
「おう。……ってここ、お前の家じゃないけどな」
戻ってきた嶋森と柚木崎は、ラフな服装に着替えていた。嶋森は髪を後ろでくくっていて、柚木崎は下ろしている。手には荷物を抱えていて、そこから本のようなものがはみ出していた。
「先輩もお風呂入ったんですね。よかったー、少し早かったら気まずい展開になるところでした」
「そんなことあるか」
「ありますよ。というか、嶋森先輩はちょっと期待してましたよね」
「きっ、期待なんてしてないです!」
嶋森は慌てたように顔の前で手をブンブンと振る。
俺は相変わらずのため息をつきながら、二人とともにリビングへ向かった。
「それでその荷物は何なんだ。行きは持っていなかっただろ」
「あ、先輩聞いちゃいます? 女の子のヒミツ」
「有坂くん、違いますからね。ただの勉強道具です」
「ああなるほど。ちなみに柚木崎の話は最初から聞いてないから大丈夫だ」
「えぇ! それは流石にひどくないですか……!」
柚木崎は抗議するように俺をじっと睨むと、荷物を机の上に置き、椅子に腰かけた。
嶋森も柚木崎の向かいに腰掛ける。
俺は二人に習って、自室からワークを持ってきて、嶋森の隣に座る。
嶋森が良い頃合いに、「では」と声を上げた。
「そう時間もないですし、始めましょうか。勉強」
◇
それから数時間、俺たちは黙々と各々の課題を終わらせていた。
ぐーと体を伸ばし、時計に目を向ける。時刻はとうに八時を回っていた。
もうこんな時間かと思い、顔を上げる。するとこちらを見ていた柚木崎と目があった。
「そろそろ遅くなってきたので、私はお暇しようかな〜と思います」
「そうか」
「嶋森先輩も疲れているようですしね」
柚木崎はそう言うと俺の隣に目をやった。
見ると、嶋森が机の上に突っ伏して、すうすうと寝息を立てていた。
今日は何かと活動的だったし、仕方がない。
柚木崎はそっと椅子を引くと、荷物をまとめて立ち上がった。
「というわけで、先輩。また週明けに――」
「いや。もう暗いし送っていくよ」
「いやいや、そんな心配しなくても大丈夫ですよ」
「いやいやいや。普通に危ないから、な?」
小声で、お互いに引かない言い合いを繰り広げる。
結局折れたのは、柚木崎の方だった。
「……そこまで言うなら……お願いします」
「おう」
俺は手早くジャケットを取り出すと、柚木崎とともに玄関へと向かう。
少し寒そうだったので、家を出る前に嶋森に毛布を掛けてあげた。
夢は絶対じゃないんだよ、嶋森 夜野十字 @hoshikuzu_writer
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