恥と恥と

明(めい)

第1話

12歳から小説を書き始め、13歳から小説の投稿生活を始めました。


ええ、13歳からです。妄想をよくする子でした。


今でいう中二病のような。


読書量も少なく、語彙力もなく、書いている量も少ないのに、この年齢特有の謎の自信と夢を持って原稿用紙に文字を埋めていました。


手書きの時代です。


きったない字で、小説とも呼べないモノを小説だと思い込み、とりあえず既定の枚数を自信満々に書きました。


穴あけパンチで穴をあけて黒紐を通して結ぶ。これがまた難しい。ズレて揃わない。


まあいっか、と楽観的に思ってズレたままちょっと穴の部分が破れたりなんかしても気にせず、「これが完成原稿!」と謎の達成感を味わっていました。


自己満足もいいところです。


原稿を郵送するのが主流の時代でしたので、今度は茶封筒に黒マジックで宛先と宛名を書くのですが、これもなかなかうまくいかない。


マジックで文字がぐちゃぐちゃになります。父親からまず先に鉛筆で書きなさいと言われて、鉛筆で書いてからマジックで上塗りする形に。


父よ、なぜ応募自体を止めてくれなかったのか……。


13歳の少女は郵送したあと、あり得ない妄想に浸ります。


受賞したらどうしよう。


電話はまだかな。まだかな。


あ、受賞するとパーティーとかあるんだ。どんな格好をして挨拶をしよう……。


最終の事前連絡なんて知らなかったため、発表されるその日まで電話連絡を待っていたのを思い出します。


発表日。あ、電話なかった駄目だった。


そしてまた翌年、同じことを繰り返します。きったない字で夢見心地の駄文を書き、出版社に送りつけ、あり得ない夢想をし、発表されるまで電話を待ちます。


一次二次通過、とかも知りません。無知です。無知の知すら知らないただの無知です。


大賞とか佳作とかそればかり気にしていました。


今から思えば多分、漢字も間違えているし誤字もたくさんあったでしょう。


文法の使いどころも、諺や慣用句すら間違っていたでしょう。


小説としての体も成していなかったでしょう。


下読みさんは頑張って読んでくださったかもしれませんが、頭を抱えたでしょう。


ゴミ箱行き確定の原稿を読んでいただきました。読んでいただいていたのかな?


私は出版社に毎年毎年、個人情報と恥と、駄文を送り付けていました。


これはもう、テロかもしれません。


恥も知らずに毎年ガンガン子供の書く駄文を送り続けていたので、もうはた迷惑なテロ状態です。


とある出版社のデータベースに名前は残っているかもしれません。


ウン十年前から出版社に名前を知られているかもしれないのが恐ろしい。


独身なので同じ名前のままです。ああ、恥ずかしい。


そういうわけで、ちょっと避けてる出版社があります。出版社から見れば痛くもかゆくもないかもしれませんが、個人的に恥だけは残り続けています。


恥を知らないって怖い。若気の至りって怖い。


そしてまだアマチュア……。


13歳の時よりは大分書けるようになったけど、未だ出版社にテロをし続けています。


あああ、ごめんなさい。


黒歴史です。

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