第17話
「おい、オッサン!その話は本当か!」
いきなり現れた俺に驚く様子もなく、当たり前のように話を続ける。
「オウよ。俺のじいさんのじいさんのじいさんの……じいさん?の頃よ。畑が魔物に襲われてよゥ。すごい数いたんだ。五十匹の魔物だァ。俺のご先祖は諦めて荷物をまとめてた。ひっく。ううぅ……。すると、ベルクラフトが現れて、魔物を全部吹き飛ばしちまった。すげえ男よ、ベルクラフトはよぉ。巷で言われてるよなあああ、臆病者じゃあ、ねえんだ……」
酔っ払いは話すだけ話すと、ベンチに倒れ込んで大きないびきをかき始めた。俺は呆気にとられながら、元居たベンチに戻って食事を始めた。味もおいしいはずだが、今の話が頭の中でぐるぐると回って食事に集中ができない。
(ベルクラフト……)
大魔術師ベルクラフトは不思議な存在だ。「大魔術師」と呼ばれる一方で、「臆病者」とも呼ばれている。今の魔術体系を創り上げたのがベルクラフトであると同時に、同時代の英雄たちに比べると逸話が極端に少ない。戦場に出て行かなかったからだと言われている。
ベルクラフトの時代は、魔物の出現数が今よりも格段に多いうえ、国の数も乱立していて、戦乱の世と呼ぶのにふさわしい。
(ベルクラフトの逸話のなかに、ロアの集落のようなものを解決した物があるかどうか、調べてみるか)
俺は、ひとつの方針が決まったことで、いくぶんすっきりした気持ちになっていた。
「よし、夕食まで時間がある。探してみるか、ベルクラフトの話」
***
私がこうして本当にひとりで歩くのもなんだか久しぶりな気がする。今日まで三週間くらいリヒターと一緒に過ごしていた。
今日は街についてから、私とリヒターは別行動をとることにした。お互いにやりたいことがたくさんあるから。
私は矢と食材の補充、肩に穴が空いてしまったジャケットの補修、新しい服も欲しいし、なにより同郷の仲間がいるならばぜひ会いたい。
そうして先ほどからこの街を散策しながら必要な物を買い揃えていくと、あっという間にお昼の時間になった。私は目についた料理屋に入ってオススメのメニューを頼んで、料理が出て来るまでお茶を飲んで待っていた。すると、店の壁に不思議なものがかけられているのが目についた。
「あの、その壁の絵って……」
「ん?ああ、ベルクラフト様の絵だね。この街が大昔、まだ村だったころに魔物から救ってくれたっていう言い伝えがあってね。そのときのことを描いた絵さ」
料理屋の主人が教えてくれた。絵に描かれているのは、奇怪な魔物をまとめて薙ぎ払う、若い男の姿。これがベルクラフト。
「ベルクラフトにそんな話があったんですね」
「誰も覚えちゃいないがね。ベルクラフト様はそんなことを気にしている素振りもなかった、とばあちゃんから聞いた。ばあちゃんはそのばあちゃんから聞いたと言ってたし、いったいいつのことなんだろうねえ」
主人がそう言いながら、私の前に注文しておいた料理を出してくれた。
「ほい、野兎のハンバーグ、おまち」
「ありがとう!いただきます!」
なにはともあれ、まずは食事だ。私は目の前の食事をゆっくり楽しんだ後で、これからのことを考えることにした。
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