第15話

 食事の片付けまで終わると、だいぶ日が傾いてきていた。俺たちはこの場所でそのままキャンプをして休むことにした。テントを張り、焚火を囲みながら、俺はロアに質問した。


「これからどうしようか」

「私もずっと考えてた。どうしようかな。仲間に会っても、その人たちと一緒に過ごす以外の未来が想像できない。私たちは故郷を追われて、どうにかしたいはず。それは共通してるはずなの。でも、もう三か月も経つ。なんにも派遣されている形跡もないってことは、散り散りになった私の仲間たちはきっと助けを求めても相手にされていないんだと思う。森の種族は軽視されがちだし、どこに行っても身分を証明できない」


 俺はじっと焚火を見つめた。乾いた木が燃えて、ぱちぱちと鳴る。集落があれだけの魔物に囲まれて、どうにかする方法があるんだろうか。このまま魔物が辺り一帯を占拠していく、なんてことがありうるんだろうか。

 俺は、ロアに提案することにした。


「魔物は自然消滅することはない。時間が経つことで事態が好転することはないが、悪化する一方だということは想像ができる。だから、もしロアの集落が『世界で初めて』の出来事なのだとしたら、世界はこのまま滅びてしまうかもしれない」


 魔物は自然消滅しない。食事も睡眠も必要としない。魂が肉体を得ただけで、生命が種族を維持しているわけではない。木にぶつかれば魔物の形に木が抉れる。明確にバケモノだと認識できてしまう。


「でも、もしロアの集落で起きたことが、歴史上なんども起こっていたことなのだとしたら、誰かが対処したり、対処する方法があるはずなんだ」


 ロアの目が見開かれる。自然消滅しない魔物がこの世に蔓延っていないということは、こんな惨事をどうにかする方法があるはずに違いないのだ。


「だから俺は、なにか方法があることに賭けて情報を集めても良いのかもしれない、と思う。幸いここは世界で一番、魔術に関して発展している法国だから」


 ロアは少しだけ考える素振りを見せた。迷っているというよりは、言葉を選んでいるような、ほんの少し。


「やろう。私も方法があるなら、全部試したい」


 俺は頷いた。やろう。やれることを全部。





 

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