小学生の時におこづかい帳で裏金作ってた話

只野夢窮

本文

 ぼく、裏金作ってたことあるんですよ。

って言っても逮捕されるようなガチのやつじゃないですよ。

ほら、おこづかい帳ってあるじゃないですか。あれ。あれで裏金作ってたんです。

もう少し詳しく説明しますね。

小学4年か5年生のころの話なんですけど、親にね、おこづかい帳渡されてね。ほんでおこづかいを月1000円に上げてやると。その代わりおこづかい帳にきっちり使った日と内容と残高を書けと。ほんで、それが一致してないと次月のおこづかいはですよと。まあそういう話になったわけです。

 親がおこづかいを減らしたくてやってたわけじゃないと思いますよ。親は真面目にお金の教育のつもりでやってたと思います。

 でもね、あなた。いい大人が出張だなんだで領収証もらってても数字が合わないとか言ってることもあるぐらいなのに、小学生がね、それも当時の小学生のお小遣いの使い道なんてね、駄菓子屋か自販機のジュースとかですからね。レシートもないわけですから。そんなのね、全部記憶しておいてね、数字がぴったり合うなんてことはないんですよ。そんなことあるわけないです。

 案の定、もう次の月から財布の中の現金とおこづかい帳上の残高が一致しないわけですよ。もうね、今でこそいい大人になったから月1000円なんてはした金ですけどね、当時の小学生からしてみたら大金ですよほんまに。大ごとするわけです。

 それもまだ現金が多いんだったらいいですよ。だって親に見せる時だけ現金抜いておけばいいからね。でも実際は現金が少ないんですよね。そりゃそうだよ、記帳漏れのミスがほとんどなんだからね。そうなるとあるべき現金がないわけだからごまかしようがないよね。


 あるんだな、これが。

まずおこづかい帳のね、まあ遊びにでかけた日にね、自販機でジュース買ったとか。あんまり一日に詰め込むと怪しまれるから、複数日に分けてね。架空の出費を計上するのよ。それで無理やり金額を合わせる。

 最初はもう、おこづかい帳を提出する時にバレないか、ドキドキビクビクですよ。小学生にとって親なんて神みたいなもんで、悪さなんてなんでもバレそうな気がするものですからね。でも親だって小学校高学年の子供を四六時中監視してるわけじゃないし、ジュースやお菓子のゴミを外のゴミ箱に捨てたって別に何らおかしなことではないわけですからね。要はバレようがない。それでどんどん調子に乗って行くわけです。

 そのうちつじつま合わせ以上に架空の出費を計上していくわけ。要はお金を使ったことにしておいてプールする。当時やってた通信教育のおまけでね、ダイヤル式の鍵がついた(と言っても、プラスチック製のチャチなやつだけど)箱があったからね、それに現金を隠しておく。いったん現金プールしちゃったらもうこっちのもんですからね。そうなったらもう極端な話おこづかい帳にはほとんど事実通りに書いておけば問題ないわけです。数百円多い少ないぐらいの話はね、プールした現金でつじつま合わせればいいんですから。

 もっというと、現金の使い道だって思い通りになるわけですよね。例えば親っておこづかいでゲーム買ったりするとまあいい顔はしないんですよね。ゲームというのは買い与えるもので、内容や量は自分でコントロールしたいと。でも架空の使い道で現金プールしておけばいくらでも自分の裁量で貯金してほしいもの買えるわけですからね。

 ま、この話、オチはあんまりないんですわ。親としてもことに何ら疑問は抱かなかったようですし、おこづかい帳は高校生に上がった時になくなりました。親としてはお金の計画的な使い方を考えてほしかった、という程度のことなんでしょうし。一度もバレませんでしたよ。4,5年ぐらいでしたかね。

 この話に何かあるとすれば、それは教訓でしょう。子供に親が無茶なノルマを課せば、子供はズルや隠蔽を覚え、それに何ら良心の呵責を覚えなくなる。

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小学生の時におこづかい帳で裏金作ってた話 只野夢窮 @tadano_mukyu

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