【KAC20247】折り紙は金と銀が取り合いになるけど、なぜか使った記憶はない。

姫川翡翠

東藤と村瀬と折り紙

「東藤は何色が好き?」

「黒」

「暗いなぁ」

「急に聞いたくせに失礼じゃない?」

「僕は緑が好き」

「はぁ」

「うん」

「え、だからなんなん?」

「折り紙せぇへん?」

「せぇへんけど」

「なんでよ!」

「なんでも何もないやろ。ここマ〇ドやぞ。だいたいどこに折り紙あんねん」

「ここに」

「なんでポケットに折り紙入ってんねん。せめて鞄から出せよ」

「見て。ここのポケットおっきいねん」

「便利でいいですな」

「はい。東藤にはご所望の黒い折り紙あげるわ」

「いや……、俺折り紙なんか折れへんねんけど」

「嘘やろ? 小学生の時流行らへんかった?」

「……」

「ああ、友達おらんかったんやもんな」

「お前デリカシー落としてきたんちゃうか?」

「もともとないけど?」

「可哀想なやつ」

「お前がな」

「まあ、反論はできへんけどな」

「最近僕の中で折り紙が熱いんよ」

「そんな大学生いる?」

「そらいるやろ」

「おらんて。だって俺らもう21歳やで?」

「お前折り紙知らんやろ? すごい人のやつはマジで芸術やからな?」

「ん、まさかの失言やったか」

「ホンマやで。お前それSNSで発信してたら炎上してるからな?」

「それはすみませんでした」

「じゃあ折り紙やろか」

「するかしないかで言えばしないけども」

「お前それSNSで発信してたら炎上してるからな?」

「言い回し気に入ってんちゃうぞ。そんなんで炎上するか」

「僕は赤で折ーろおっと」

「緑ちゃうんかいな。で、何折れるん?」

「僕はカエルしか折れへんで」

「なんやねんそれ。というか折り紙が熱いとか言っておきながらカエルしか折れへんのかよ。小学生レベルやんけ。俺の謝罪返してくれ」

「カエルだけに?」

「というかカエルなら緑でええやろ。なんで赤やねん」

「それはアカトマトガエル折ろうと思って」

「なにそれ」

「カエルの種類やけど」

「そんなんいるん?」

「いるよ。ググってみ」

「……うわホンマや。赤い」

「そして完成品がこれです」

「早っ、うわ気持ち悪! なんでめっちゃリアルやねん」

「でも東藤も黒ってことはあれやろ、キオビヤドクガエルおるんやろ? ほら、黄色いペンあるしこれで模様描きや」

「おらへんわ!」

「ああ、ナゾガエルの方か。じゃあ赤いペンやな」

「違う違う。種類の問題じゃない。てかなんでカエルに詳しいねん」

「ハイ、2匹目」

「うわマジでキモイ! また赤いけど、さっきのトマトのカエルか!」

「ぶっぶー。ほら、足の方ちょっと青いやろ? だからぁ?」

「回答を煽んな。わかるわけないやろ」

「もう、今女子高生の間で大人気のイチゴヤドクガエルやんかぁ」

「聞いたことないわ」

「はい、3匹目」

「お前さっきから早いねん! マジシャンか? なに? やっと緑か。アマガエルか?」

「ああ、惜しい! 二ホンアマガエルではない!」

「黙れ」

「正解は、ボリビアネコメガエルでした! おんなじアマガエル科やからね、いい線いってたで!」

「やかましいわ」

「別名にケショウネコメガエルってある通り、この真っ黒なお目目の瞼の辺りに赤と黄のラインがあるのを見逃しちゃってたなぁ」

「もうええて。なんでそんなにカエルに詳しいねん」

「だって僕カエルやし」

「は?」



「は! 夢か……」


『村瀬。お前ってカエルじゃないよな?』

『急に何? そら違うけど』

『カエルって好きやっけ?』

『好きか嫌いかなら嫌いかな。僕基本的に虫とか爬虫類とかそういうの好きじゃないし』

『カエルは両生類やけどな』

『でも高校の頃カエルの折り紙折ってたことあったくない? なんか高2? くらいの時に、東藤が折り紙が熱いとか言い出して、いらんプリントを正方形に切り出して折ってた気がする』

『ああ……あれな。背中弾いたらちゃんと飛ぶやつな。そういえばそんなん作ってたこともあったっけ』

『で、結局なんなん?』

『うん、寝る前に最近買ったカエルの図鑑読んでたら、色々混ざってわけわからん夢見てたらしい』

『僕の方がわけわからんわ。いらん報告どうも』

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【KAC20247】折り紙は金と銀が取り合いになるけど、なぜか使った記憶はない。 姫川翡翠 @wataru-0919

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