第14話 第一の実験
「さて、ここに三つの薬があります」
私は持ってきた三つの【女人転母】を格子の前に置く。男たちは警戒心を剥き出しにしながら三つの薬を見下ろす。
「この薬は【女人転母】といいまして、人族社会において男性の性犯罪者における刑罰として用いられています。その効能は種族変化及び女体化、女の尊厳を弄んだクズは女になって尊厳を蹂躙されろ、ということです。因果応報、良いことも悪いことも返ってくるものです」
「テメェ……まさか、これを飲めというつもりか!?」
男Aが眉間に皺を寄せ、怒りに顔を赤くする。
人を射殺さんとする強い殺意の一切を私は無視し、
「はい。貴方たちには一人一本ずつ、【女人転母】を飲んでもらいます。それぞれヒューム、エルフ、リカントになってもらいます。ヒュームとエルフは第一の実験、リカントは第二の実験に参加して貰うことになりますね。それにしても良かったですね、美人さんになれますよ?」
【女人転母】はその性質上見た目は美しいものになる。
醜い獣を誰も目に止めることはなく逆に煙たがり突き放す。それもそれで罰にはなるが、用途が用途である以上意味がない。
美しい女に成り果てるのは醜悪な人間の欲望を揺らすためだ。
「ざっけんな!!こんな事が許されると思っているのか!?」
「それに、俺らが女になったからって女を抱けねぇじゃねぇか!!」
「許される、許されない……そんなもの、私は興味ありませんね。それに、女でも女は抱けますよ?」
男Bと男Cの負け犬の遠吠えに首を傾け、長杖を手に取る。
「まぁどうでも良いです。そもそも、貴方たちに拒否権がありませんので吠えても無駄ですよ」
杖の先端を男たちへと突きつけながら、私は笑みを浮かべる。
人の記憶を読み取る魔法があるのなら人の体を操作する魔法も存在する。その気になれば男たちを操ることは不可能ではない。
(……まぁ、不可能ではないだけで現状は無理なのだが)
呪詛魔法の特性上杖を突きつけ魔法をぶっ放すなんて事は出来ない。魔法を扱うためには工程を積み重ねなければならない。
それ故に、男たちには自発的に動いてもらわないとならないのだ。
嫌悪、そして恐怖。それらを押し殺し、私を睨みつける男Aは考え込み、
「ちっ……約束は守れよ」
「ええ、わかっています」
男Aは【女人転母】を手に取り、蓋を開ける。
男Cの男Bも覚悟を決めたようでそれぞれ【女人転母】を手に取り、蓋を開けた。
そして、【女人転母】を一気に飲み始めた。
「……んぐっ!?」
薬液の入った瓶が空になった瞬間、男たちに変化が生じ始めた。
男たちは瓶を床に落とし、胸に手を当てる。
筋肉が張った体は次第に丸みを帯びていく。
平らな胸は膨らみ始め、豊かな胸を作っていく。
ウェストは引き締められ、髪は長く伸び始める。
「ぐ……耳、が……!!」
「嫌だ……こんなの嫌だ……!!」
可愛らしい声で嘆くのは男Bと男Cの二人。
男Bの耳は長く尖り始め、男Cは耳が狼のそれとなり臀部から尻尾が生え始める。
(男Bはエルフ、男Cはリカントか。呪いによる変化は順調だな。期待通りの成果を出している)
変化は10分程で完全に終わり、牢屋の中にはヒューム、エルフ、リカントの見た目は美しい女たちが座り込んでいた。
その様子を眺めながら、私は席を立つ。
「【女人転母】の成功、おめでとうございます。これでようやく、実験を行うことができます」
「くっ……!!さっさと始めやがれ……!!」
エルフは大きな乳房を揺らしながら立ち上がり、私を睨みつける。
そんな様子に飽き飽きとしながら杖に魔力を込め、待機させていた死体たちを地下へと入れる。
「あ、アニキ!?何で生きて……!?」
「テメェ……どれだけ人を馬鹿にすれば良い!!」
「ひ、酷い……!!」
ヒュームは酷く狼狽し、エルフは格子に掴みかかり、リカントは膝から崩れ落ちる。
死体となり、それでも動くリビングデッドたちを側に置き、私はヒュームとエルフへと視線を向ける。
「第一の実験は『アンデッドと生者の間で子供を作れるか』というものです。理論上子供を成すことできますし、死者の腹から子を産み落とす事例も存在します。期間としては1年ほど。24時間常に犯されて下さい」
「はあっ!?」
「狂ってやがる……」
私の説明にヒュームとエルフは愕然とする。
アンデッドが生まれるのは魂と『穢れ』のバランスが『穢れ』に大きく偏った結果として生まれた動く亡者。
自然的な発生においては肉体に残った魂の残滓に『穢れ』が蓄積することで生まれる。また、様々な研究でアンデッドは生者と同じように血が巡り体温があることが証明されている。
(ようは魂で動くか『穢れ』で動くかの違いでしかない。なら、アンデッドと生者の間に子供が産まれても不思議ではない。……可能性としては低いだろうが)
肉体が死んでいる以上子を作る能力は低くなることは予想がつく。低い以上、時間がかかる。
持って道具の中から緋色の針を取り出し、エルフとヒュームに投げつける。針はエルフとヒュームの胸に突き刺さり、溶けるように消え、蓮の花を思わせる紋様が胸に刻まれる。
「【返花】、その特性は好嫌反転。好意と嫌悪を反転させる呪いです。心が壊れても困りますのでね」
牢屋の鍵を開け、射殺死体と剪断死体に首輪を持たせ牢屋の中に入れる。
首輪はヒュームとエルフに取り付けられ、私はリカントを腹パンで気絶させ牢屋から連れ出して鍵を閉めた。
「ああ、貴方たちの肉体は他者の精気で食事を摂りますので食事も水分補給もいりません」
「ひっ……」
「や、やめてくれ……」
今までの強気が何処に消えたのか、顔に恐怖の感情を貼り付けるヒュームとエルフに笑みを向け、リカントを背負い地上に出る階段を登る。
背後から悲鳴が聞こえてくる中で私は笑みを浮かべるのだった。
―――――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。作者の黒猫のアトリエです。
現在15話以降の話を書いているのですが煮詰まっていて筆があまり進んでいません。
そのため、次回の更新は少しの期間が空くことになります。
誠に申し訳ございませんが、ご理解のほどよろしくお願いします。
TS転生ダークエルフの異世界禁忌収集〜ダークエルフにTS転生しましたが異世界で禁忌を集めながら生きていく〜 黒猫のアトリエ @8101918
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。TS転生ダークエルフの異世界禁忌収集〜ダークエルフにTS転生しましたが異世界で禁忌を集めながら生きていく〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます