独りの心は闇色に染まる

 コロナ禍で宴会を禁じられていた反動、とも言えるかのように。

 何年か振りに行われた宴席では、弾ける人が多くいた。 

 叫んでた。


 黄金色の泡を浮かべたジョッキが次々と運ばれてくる。

 グラスワインの紅も、何度目の前を通り過ぎたことか。



 すごかった。


 早くから出来上がってしまう人達の叫びに、この職場の明日を憂いた。


 なんなら、

 コロナのせいで宴会に初参加の人もいたわ。

 社会人になってから初めての飲み会だったんですって。


 盛り上がって、

 出来上がってしまっている人達は、

 コロナ前の ノリを覚えているからなのね。


 飲みニケーション

 なんて言葉を知らない若者は、圧倒されていたのではないかしら。


 飲みニケーション

 わたしは、正直、好きではなかったわ。

 でも、お付き合いだと思って、出来る限り参加していた。

 あの頃。

 溶け込むことに必死だったし。

 欠席なんかしたら、ますます浮いてしまうから。

 宴席で打ち解けておかなくては、明日からの業務に支障をきたす。


 飲みニケーション

 あの頃を懐かしむ人達は、飲み会のない昨今をつまらなく思っている。

 それにも、気づいてた。

 一方で、社交辞令と愚痴の飛び交う酒盛りの場に、

 わたしが似合わないことも。



 馴染めない自分が惨めだった。



 その惨めさを思い出した夜。


 夜の暗さは、そのまま わたしの心に影を落として


 どんどん 闇へと引きずり込まれる。



 ✶



 独りの心は闇色に染まる。


 それを止めたくて、

 陽の光を浴びようと、窓を開けた。


 何故、今日に限って曇天なのか。




 よく見ると、霧雨きりさめがけぶるように降っていた。















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独りの心 結音(Yuine) @midsummer-violet

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