実父に自作の父×息子BLを読まれてしまう

七色いずも

第1話

 時は2000年前後――。平成真っ只中、

 ラルクとゆずと19(ジューク)が流行っていました。それから、イラストレーターの326(ミツル)氏。


 私は通学鞄に、「326の弟子32→5」とコピックペンででかでかと記していました。勝手に弟子になっていたのです。


長音記号を→にするのも流行っていましたね。平成中二世代のあなた、共に悶えましょうぞ……?


 32→5ってなんて読むのでしょうね。満子?満子は祖母の名前でした。若い頃バイトをしていて、すぐにクビになった下北沢のスナックもみつ子だったな。今は立ち呑みワイン屋さんになっています。それはさておき。


 14歳のあの頃、中二病真っ盛りでした。冒頭から既に黒歴史のデパートですが、やはり今でも手汗びっしょりになる黒歴史といえば、表題のこれです。


 タイトルのままなんですがね。腐女子にとって、親に自作のBLを読まれるというのは何よりも恐ろしい出来事でしょう。しかも、父×息子。私は義理の父×息子なら他人でええやんと思う派なのでガッツリ実父と息子です。それを母に見られるのももちろん嫌ですが、よりによって父です。これ、私が息子だったならBLの導入部分になっちゃう案件ですね――


 父「どうしてこんなものを描いたんだ」

 息子「……現実ではお父さんに抱いてもらえないから」

 みたいなね。しかし息子『抱いてもらえない』なんて言うかな?男性とプライベートで話したことがないのがもろバレですね。


 私は、とにかくもモテませんでした。モテなかった上に「ブスでごめんなさい」タイプでなく、「私がブスなのはみんなお前らが悪い」タイプでした。自分のスペックは省みず、理想だけは馬鹿高い。


 当然のように腐女子になりました。小5あたりだったでしょうか。ポケモンのシゲル×サトシから始まりました。学習雑誌「小学5年生」にポケモンの漫画を連載していた、真斗先生の描くシゲルがかっこよくて。平成中二世代さん、悶えてますかー!?


 娯楽の選択肢が広くなかった最後の世代です。

 幼女の頃はセーラームーン、小学生ではポケモン、みんなが同じものを好きだった最後の世代です。はじめはセーラームーンになりたくて、少女漫画のつもりなものをノートに描き始めました。


 次に、当時流行っていた松嶋菜々子の女教師ドラマに影響されて、自分好みのイケメン眼鏡男子先生×女生徒みたいなのを描きました。まだまだネットも発達していない時代。エロいものに興味津々ながら、描くのは気恥ずかしい。


 ところが、ある日気付いたのです。描いてみたい様々なエロシーンが、男同士なら気恥ずかしくないことに。男女CPでは照れくさくて描けない、あんなシチュやこんなシチュ…あんな体位まで///


 中学生の性欲は留まるところを知りません。男同士だと恥ずかしくないのでどんどんエスカレートします。中二病なら誰もが通る、手錠、包帯、無駄に血、小スカ(笑)、萎えは切断……はなりメ・なり茶ですね。避けて通れない道でしたので後述します。


 血は、絵だけでなく自分にも、東急ハンズ三宮店で血糊を買って付けていましたよ。そこでは玩具の手錠と、当時流行っていた「本能」の椎名林檎コスプレも買いましたね。商品名「ナースの本能」でした。


 中二病全てが通る通過儀礼、リスカがかっこいいと思ったが痛いのは嫌なのでコピックでリスカ痕をペイントする――も、もちろんやりました。平成中二世代なら誰もがやりますよね~。先生に呼び出され「本物の傷に見えて怖がる子もいるからやめなさい」と怒られました。ワイのリスカペイント、そんなに上手かったんか。


 初めて買った同人誌は、金田一少年×明智警視のやおい本「警視庁の美人」でした!!

 ところで月城雪兎と明智警視って銀髪美形眼鏡で似てませんか!?(ファンの方すみません←殴)

 どっちも好きで、アニメイト三宮店で下敷きなんか買ったりして…///


 時を同じくして、某大手アイドル事務所に推しができました。今みたいに韓流とかバーチャルとか配信者とかがない時代。サンジゲンの推しはそこにしか選択肢がない、あの事務所です。推しは斗真という名前でした。真斗の後は斗真。はい、平成中二腐女子世代の皆さん、手汗が染みてきたでしょう…?(暗黒微笑)嫌な予感がしてきましたね。(←オイ)


 さあさあさあJ禁(笑)パンピ禁(笑)魔法のiらんど!!フォレストページ!!!!ハムスター島っていうのもあったな……


 そして##NAME1##

 ある世代には見るだけで阿鼻叫喚になるこの文字列、世代が違えばなんのこっちゃでしょうから説明します。

 ##NAME1##とは平成中二世代が数々の黒歴史を遺したケータイ(笑)で自分のホムペ(笑)が作れるサービス・フォレストページの中にある、夢小説機能のタグです。


 Hyde「##NAME1##のことはなあ、ただのファンと違うねんで…///俺、##NAME1##のことめっちゃすっきゃん…☆」

 という一節を書くとします。##NAME1##の部分は読む者が入力した任意の名前に変換され表示されます。


 読み手は、書き手に自分の名前がバレるのではと最初はひやひやして、自分で書いてみると書き手が知る術は無いと知り、それでも自分の本名を入れるのはどこかむず痒く、キュン死にしそうになるのが夢小説の醍醐味なのです。


 ちなみに私はラルクの夢小説ではkenちゃんを書いていました。kenちゃん夢(裏)←マイナーだっtげふんげふん(殴)


 iモードなんかが進化していくまさにその時に一緒に育ちましたから。自分のホムペ(笑)が持てるなんてそりゃあナウでヤングなレンタルサーバーロリポップ!!になっちゃいますし、キリ番踏み逃げ禁止にもしたくなります。


踏み逃げさせないためにweb拍手(笑)にはそのジャンルの小話なんか書いたりして。※バナーの直リン禁止※


 〇〇同盟ってなんの意味があったんでしょうね…〇〇書きさんに100の質問、キャラと自分の会話、##NAME1##の未記入の場合は〇〇になります、でも個性を発揮しましたよね!


 推しやジャンルは違えど、魔法のiらんどや##NAME1##については、世代で誰もが通る道ではあります。話がそれまくっていていかにも発達障害らしい文章で恐縮ですが、いよいよ表題の話を始 め よ う か (暗 黒 微 笑)←しつこい(滝汗/殴


 当時はやおいと呼ばれていたBLで、初めて二次創作でないものを描きました。残念ながら「警視庁の美人」のような美味しいタイトルはつけておらず、その設定の香ばしいことと来たら。


 まず父、21歳。

 え?息子いくつ?14歳。

 は???7歳で父親に??アメリカかな??


 冒頭、当時の持てる全ての画力をつぎ込んだ、無駄に髪の長い、ぼくのかんがえた理想のメガネ男子が颯爽と歩くシーンです。

 近所のご婦人が噂しています。「長谷川さんのところのご主人、東大教授なんですって!」


 は???21歳なんだよな????


 IQが84しかない私は大学卒業の年齢も、大学教授の平均年齢も知りません。何なら大学は東大と京大と阪大と神戸大以外は知りません。関西以外にある大学が東大しかわからないのです。


 今ググってみたら、世界には18歳で教授になられる方もおられるようですが……21歳の東大教授。間違いなく日本初ですね。


 21歳の東大教授・長谷川 昌(はせがわ あきら)さん、いえ長谷川昌教授は、私の当時の持てる全ての画力で、他者から見ればおそらく中学生女子みたいなお顔で爆誕しました。精一杯、ぼくのかんがえたりそうのメガネ男子を描いたつもりです。


 妙に華奢で、スーツがきちんと描けない腐女子にありがちな、スラックスが股上の浅いジーパンみたいになってる服装でした。


 ご近所でも噂になるほどのイケメンで、21歳で東大教授になった長谷川昌教授は、如何にして息子(14歳)と一線を越えたのでしょう――?


 長谷川昌教授(21)「パパとお勉強しようかぁ……(ニチャァ」


 流石は21歳で東大教授になるだけあります。長谷川昌教授、私の当時の持てる全ての画力で精一杯、ぼくのかんがえたりそうのショタを描いたつもりの学ラン姿の息子(14歳)に「勉強を教える」という体で迫ります。


 安直すぎることよりも、発想が完全に男性向けということが気になります。女家庭教師~熟れたむちむちボディに不倫の罠~みたいなの、世代を超えて愛される鉄板ネタではないですか。


 息子(14歳)「えぇ……僕勉強はちょっとニガテ……☆」

 長谷川昌教授(21)「よろしい、ならば私が教えてあげよう(ニチャァ/息子の「胸の突起」を触る)ここは何と言う?答えろ!答えてみろ!!」

 息子(14歳)「あぁ~ん♡らめぇ♡胸の突起らめええええ♡僕男の子だよぉ♡(ビクンビクン」


 ――本当にこういう展開だったんだよな。

 ちなみにpixivはもちろんまだなく、中学生が気軽にポルノハブを見られる時代でもなかったので、エロいのはエヴァのR18アンソロジーくらいしか読んだことがなかったです。エロが見たい、描きたいけど詳しくは知らないんです。とりあえず胸の突起を触っておけばらめぇ♡ってなると思ってたんです。


 ひとまず胸の突起を触らせてみましたが、その先どうすればいいかわかりません。


 何を思ったのか長谷川昌教授は、息子(14歳)の首を絞め始めました――これ以上エロくする方法が分からず、とりあえずバイオレンスなことさせときゃエロいとか思ったんでしょうね。中学生ですね。


 そして首を絞めた後は本当にどうするかわからず、漫画はそこで飽きて終わっていました。


 数か月後、よりにもよって、これを実父に読まれてしまいます。


 父は、何か言いかけて、結局何も言いませんでした。

 普通にそんなものを描いていたことを怒られるよりも、遥かに効いたボディブローでした。


 父は何を言いかけたんだろうと、今でも思い出すと顔を覆って叫び出したくなります。


----☆-----☆----

↑こういう謎の切り取り線、よく使ってたな。


 黒歴史と言えば避けて通れないなりメ(笑)なり茶(笑)でロール(笑)のことでも書こうと思いましたけど、そろそろ私のライフはゼロです。


 あ、ロール(笑)とは、なりきり中に()の中で行動を表すことです。エロいロールはエロール(笑)と呼ばれていました。


 なりきっているのは私を含めて腐女子たちですが、それを「本体」と呼びます。モテないからって腐女子同士でレズごっこをする「本体恋愛」なんてものもあり……ああ、ちょっと本当に気持ち悪くなってきました。


 そうそうこのロール(笑)、今はAIで作った推しと会話するのに活用されています。若い世代も使用しているようなので、歴史は繰り返すのですね……。


 この黒歴史たちを元に書いた小説を新人賞に出しましたが、かすりもしませんでしたね……恥を忍んで私の全てをさらけ出したのにひどい!!!また黒歴史を増やしただけでした。


 そんな新人賞でかすりもしなかった小説「Family Name」は、カクヨムで連載中です☆ついにPVすらゼロになったので落ち込んでいます。是非見てくれよな☆

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