人それぞれの、色

蔵樹紗和

第1話

「私……人には、”色”がある気がする」

「どうしたの? 急に」


唐突に思いついたことだった。チラッと口に出してみたら、隣に座る友人の芽郁めいに変な目で見られている。


「ほら、イメージカラーとかそういうやつ。なんかある気がしない?」

「う〜ん、そうかな」


さぁと肩をすくめる芽郁。絶対に”色”、あると思うんだけどなぁ……。


「じゃ、じゃあ、私の色はどんな色だと思うの?」


理解してくれなかったことを残念に思ったのを察したのか、芽郁は話に入ろうとしてくれる。


うん、今はそれだけでもありがたい……。


「えーっとね、水色……かな」

「水色?」


首をかしげる芽郁。とりあえず、理由を言ってみよう。


「うん。まずはしっかりしているから。なんとなく、その性格が雰囲気にもにじみ出てる気がするの」

「ふ〜ん、それで?」


お、もっと食いついてきた。私はだんだんうれしくなってくる。


「次は、好きな色。水色が好きでよく小物買ってるでしょ」

「う、うん。合ってる」


そりゃそうだよ。私、これでも長く芽郁の友達なんだよ? 一緒によく買い物に行くでしょ?


「ね、水色でしょ?」

「そう言われてみれば、納得できるかも」


頷いている芽郁。


ここまで説明して、私は自分の色も聞いてみたくなってきた。


「ねぇ、私の色は何だと思う?」

「雪香の色……? う〜ん、白……いや、桃色も良いな」


あれ、軽く聞いたつもりだったのに真剣に悩み始めてしまったみたい。


そんなにしっかりやらなくて良いんだよ、芽郁!


「やっぱり……雪香は白だね!」


一分くらい悩んだ芽郁は、満面の笑みを浮かべて結論を出す。


芽郁の中でははっきりしたようだ。


「何で?」

「えーっと、まずは雪香が私の色を言ったときと同じく性格。ふわふわした感じだけど、しっかりしているところが白っぽい」


確かにそうかも。私は何度か頷き同意する。


「それで?」

「名前! 香だから!」


え、名前? 名前は……関係なしで考えて欲しかった。


拍子抜けしてしまった私だった。

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人それぞれの、色 蔵樹紗和 @kuraki_sawa

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