【観測者】

水城みつは

【観測者】

 犬は色の識別能力が低いんだそうだ。

 人が赤緑青の三色を感じ取れるのに対し、犬は赤と青の二色の光だけと言われている。

 昆虫の中には人が認識できない紫外線を色として感じ取れるものもいるらしい。


 そんな昆虫の見る世界は気になるところだが、そもそも人が皆同じ色を視ているのだろうか。

 私の視ている赤と他の人が視ている赤が同じものである保証はないのだ。


 そんな風に思うようになったのは役職ロールが発現し、あるスキルを得てしまったからだ。


 迷宮ダンジョンが発生した現代では、役職ロールを発現するとファンタジーのような力を手に入れることができた。

 ステータスとも呼ばれるその力は一般人の数倍の力やスタミナを備え、ダンジョンに現れる魔物モンスターへの対抗手段となった。


 もっとも、その恩恵がダンジョンの中だけの限定的なものだったのは、幸か不幸かは意見が分かれるところである。

 ステータスの恩恵は魔力に依存する。魔力は主にダンジョン内のみに存在するため、ダンジョンの外ではステータスは発揮されない。

 ただし、全く魔力が存在しないわけではないため、高ランクの探索者シーカーであれば一般人よりは強かったりする。


 そして、私はその魔力をることができる。


―― 役職ロール観測者オブザーバー

 1.全てを観測します。

 2.全てに関知しません。

 3.全ては秘匿されます。


 観測者のスキル【魔力視】、魔力を色として視ることが出来る。

 このスキルで魔力の流れを視るとダンジョンの魔力を吸収してから魔法やスキルが発動しているのがわかる。

 人は魔力を持たず空気中の魔力を利用しているだけなのだ……と思っていた。


 なのに、この人は何なのだ。

 彼は真神まがみしろと名乗る季節外れの転校生の一人だった。


 黒く光る魔力をまとった白髪赤目の彼から目を離すことができなかった。


「シロ君に色目? その良く見えそうな眼は必要かな?」

 もう一人の転校生、麻桜まおう 彩花さいかと名乗った黒髪の美少女に耳元で囁かれた私は只無心に首を横に振った。


 私は【観測者オブザーバー】、全てに関知しないのだ。


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【観測者】 水城みつは @mituha

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