黒歴史

クライングフリーマン

黒歴史いっとせるふ

 さて、何から話そうか。

 コンピュータの専門学校の夜間部等を経て、私は、あるソフトハウスに就職した。

 そこでは、専門学校で習った言語とは違う言語を使用していた。

 言語と言うのは、「人工言語」である。通常、私達が音声や文字で他の人間に情報伝達をする言語(日本語、英語、フランス語、ETC.)に対して、コンピュータと対話させ命令伝達する言語体系を「人工言語」と言う。

 コンピュータは、「機械語」と言われる、「自分で解析し行動する言葉」でしか理解出来ない。膨大な数の「0」と「1」の組み合わせだ。

 人間が、0と1を駆使して、コンピュータに命令出来れば一番いいかも知れないが、そう簡単にはいかない。

 そこで、生み出されたのが、言語体系を組み合わせて、命令を伝える、言わば「翻訳」または「通訳」に相当する存在だ。詰まり、0と1に置き換えて、コンピュータに命令をする。

 通常、キーボードからキーを選択し、パソコン等を操作する。キーボードの中の「翻訳機」がパソコンに置き換えた命令を伝達する。「1」のキーを押して「1」と理解する訳ではない。

 そのソフトハウスに就職したのはいいが、ある事件をきっかけに、後から入って来た専務と専務派の人間に追い出されることになった。

 退職した先輩から受け継いだシステムを顧客に納品、メンテを行っていたが、「ここまで」という会社の方針を社長から、その悪玉専務から、そして、私から言われているにも拘わらず、オペレーション(操作手順)が分からないだけで、私を呼び出し、面倒を見させた。果ては会社に電話をしてきた。最初は、「ここまでですよ」と釘を刺していたが、「甘え」が昂じたたのだ。永久にメンテするなんて、契約もしていないし、契約書も交わしていない。

 専務は、顧客を説得する代わりに私に「肩叩き」をした。私のことが気に入らなかった専務派にとって、「渡りに船」の出来事だった。

 私は、、顧客に別れの挨拶を電話した。、「あなたのお陰で解雇されました。」と「真実」を言って。

 顧客も甘かったし、私も甘かった。大晦日も元日も、休日返上で尽くしてあげたのに仇は大きかった。

 だが、何度もメンテする内に、システムのバグ(プログラムの欠陥)は全て改修した。

 私には、「技術」という名の知識経験が残った。

 すぐには就職出来ないので、繋ぎでやっていたことのあるバイト先に行って、日銭を稼いだ。その会社では、アルバイトから準社員になった。だが、ゆくゆくは正社員に、という話は嘘だった。正社員とは、ルートが違うのだ。

 プログラムが組めることで重宝された私は、様々なシステムを組んだが、全て無給だった。

 バーコードを利用した、出退勤システムは傑作だった。入った時の上司は左遷され、引き継いだ課長代理は、社長派だと勘違いして、色々と意地悪をした。

 ある時、納品ミスで、会社の存亡がかかることになった事態が起こった時は、私に責任転嫁して(スクープゴートにして)、難を逃れようとした。潔白は、本社の調査で判明した。

 それでも、私は耐えていた。

 ある日、系列会社出向に行っている正社員を呼び戻す、課長代理の悲願が叶いそうになった。それには、正社員のトレードが必要になった。本社の部長も課長も、私を正社員に格上げすれば叶うと説得したが、課長代理はクビを縦に振らなかった。

 結果、出向に行ったままの彼の親友でもある正社員は帰って来られなくなった。

 他の正社員も手放したくない彼は、正社員の異動も叶わず、私を「出向させることで追い出すチャンス」も棒に振った。

 私は、覚悟を決めた。出退勤システムを「小遣い稼ぎ」の為に他社に売って、人事もちゃんと出来ない上司を見限った。

 出退勤システムを密かに「時限付き」の細工をし、タイムオーバーをすると、使用不能になるようにした。犯罪ではない。このシステムは、「私用」のものであり、このシステムを含めた私のシステムに会社から「対価」が支払われた事がないのだから。退職後、タイムオーバーした後で、何度か妙な電話がかかって来た。1度、女事務員に「天誅!と奇声を上げさせた。

「天誅」は笑った。そのシステムのメンテが出来る者はいない。システムの代わりに、通常のタイムレコーダーを使用すれば出退勤の管理は出来るし、システムが必要なら、どこかに「外注」すればいい話。変な留守電は全て無視した。

 風の噂に、課長代理が、出向社員とトレードになったと聞いた。

 この話の前にも、この話の後にも「黒歴史」はある。

 今日は、このくらいにしといたるわ!!

 ―完―


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