第12話 三人でお風呂に



「いっただっきまーす!」




 先程までベッドの隅で縮こまっていたサヤの声が響く。


 テーブルの上には様々な料理たち。

 海鮮の焼き物一式に、粉もの一式。様々な料理たちと言ったが、この二種類しかテーブルに並んでいない。

 海の家ではフランクフルトなんかも焼く予定だが、おじいさんのメモ帳を見ても焼くしか書いてなかったので調理不要だと判断した。

 他にも練習不要だと思ったのを作らないでいると偏った料理ばかりになってしまった。

 それでもサヤは大喜びだ。




「んっ、イカ美味しい!」


「まあ、焼くだけだからな。メモ帳通りに味付けもしたが、こんなもんだろ」


「いけるいける、これ売れるよ。あっ、ホタテも美味しい」


「そっちは醬油をかけて焼いただけだからね」




 サヤは次々と食べていき「美味しい!」と言ってくれるが、本番前の予行が成功かどうかは不明だ。

 なにせここに並べられてあるもののほとんどが焼いて味付けするものばかりなのだから。


 結局のところ、事前練習なんてしなくても良かったのではないだろうか?


 そう思ったが、作っている最中にわからないことがあって雨奈に何度か聞いた。だが明日からは雨奈が隣にいないので、やらないよりはやった方が良かったのだろう。


 それに、




「あっ、お好み焼きも美味しい! これヨルっちがひっくり返したの?」


「ん、ああ、まあな」


「一発でできたの?」


「夜斗くん、ひっくり返すの躊躇って何度も「ちょっと待て」ってフライパンに言ってたよ」


「なにその面白い姿。あたしも見たかったなー」


「そんなの、別に見なくていいだろ」


「写真撮ったから見る?」


「見る見る!」


「おい!」




 料理を作って、誰かに食べてもらうこの時間は楽しい。

 なのでこの体験が明日からの営業に生きるかは不明だが、夜斗の人生で考えるなら体験してみて良かったといえる。


 それからも三人は食事を楽しんだ。

 早々にお腹いっぱいと離脱したサヤに代わって、ほとんど夜斗が食べた。

 雨奈もまだ食べられそうに見えたが、自分の少しだけ膨らんだお腹を撫で、何かを察したのか食べるのを止めた。


 食事が終わった頃には窓の外はすっかり暗くなっていた。

 夜の海を見に行きたいとサヤが言い出したが明日から朝早く、それに移動もあって見えない疲労があるだろうから止めておいた。


 あとはお風呂に入って、寝るだけ。




「……お風呂、どうしよっか」




 料理の片付けを終えると、サヤが不安気にしながら夜斗と雨奈を見る。




「どうするって、別に三人で入ればいいだろ」


「「……」」




 優枝ともよく一緒にお風呂入るしな。

 とは言わなかったが、特に何の考えもなく言った。

 すると、二人は何か言いたげにこちらを見つめる。




「なんだよ」


「なんでもない。でも、さすがにいきなり三人でってのは、ねえ……?」


「うん、ちょっと恥ずかしいかな」 


「恥ずかしい? 別にお互いの裸なんて何度も見たことあるんだから平気だろ」


「「……」」




 お互いに見せあっているんだから平気だろ、なんで恥ずかしいんだ?

 そもそも雨奈とは何度か一緒に風呂入ったことだってあるんだ、なんの問題も無いだろ。


 というデリカシーのない夜斗の考えを言っただけなのだが、二人はまた無言でこちらを見る。

 先程よりも謎の圧が強い。




「はあ……」




 サヤは大きくため息をつく。




「まあ、三人でいっか。どうせこの後いろいろあるし。お湯沸かしてくる」




 そう言って風呂場へ向かうサヤ。




「何が不満なんだ?」


「んー、サヤちゃんもわたしと同じ考えなら、三人でってのがちょっとね。例えば夜斗くんが逆の立場だったとしたら、もう一人の男の人の目って気にならない?」




 男二人に女一人ってことか。

 少しだけその光景を想像してみたが気乗りはしなかった。




「まあ、知らん男と三人でするのは気が乗らねえな」


「そうじゃなくて、んー、どう例えたらいいんだろ。夜斗くんはわたしの裸を見て興奮してくれるでしょ?」


「まあな」


「その興奮している自分を、もう一人の男の人に見られるのって変な感じじゃない?」


「まあ」


「しかも友達に。それ、やっぱ恥ずかしいよね。見るのも、見られるのも」




 要するに、友達の前で牝の顔を見せたくない、見られたくない……ということなのだろうか。




「……まあ、恋愛感情がないセフレだったらこうはならないんだけどね」


「なんか言ったか?」


「ううん、なんでもない」

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