第6話 『Unmemory Dungeon』講座3

「そして、このアイテムパネル。見た目がスキルパネルと瓜二つな上に、スキルパネルと同じように格納するとMPが減るわん」

 どう見ても手抜きな感がある。スキルパネルから仕組みを流用したに違いない。


▽[お、おぉ、それはアイテム持つ制限がきついな]

◆[消費するのほんとにMP? HPじゃなくて?]

※[ちょっ、まじで? 単にミスな気が……どう考えてもHP消費で良いよねぇ]


「だよねー、HPかVITの消費でないと困るわん。うん、これは運営さんに報告しとくわん」


 拾った飲み物をアイテムパネルに詰め込む。


名称:ダンジョンのおいしい水

説明:特に効果のないおいしい水

   (満腹度+5%)


「どう見ても只の水なんだよね。満腹度の補充用わん」

 アイテムパネルに格納するのも無駄にコストが高いため両手に容器を持ち飲みながら進む。


―― ポヨンポヨン


「おおっと」

 現れた青いポヨポヨに両手の空き瓶を投げつけ、初心者の槍を取り出す。


「そいや! あ、また水が落ちたわん」

 ポヨポヨが光となって消えた後には何度目かわからない水の入った瓶が落ちていた。


▽[ポヨポヨ相手とはいえ、相変わらず強いな。そういえばレベルあげてないよね]

∈[ポヨポヨばっかりもあきたにゃ。普通すぎるダンジョンも考えものにゃ]

◆[レベルの上げ方とかチャージのタイミングはどうなってるんだ?]


 アンメモのレベルアップは任意のタイミングでMPメモリーポイントを消費することで行う。

 なお、MPメモリーポイントはお金としての意味合いもあるため装備品を買う場合はタイミングも重要となる。


「レベルアップ方法は変わらないわん。ただ、安全地帯セーフティエリアがないから戦闘中でなければレベルアップもチャージも可能わん」

 ちなみにチャージとはステータスのMPを回復することだ。

 ステータスのMPはスキルを使用する際に使用されるポイントでよくあるゲームだとマジックポイントでMPとされているやつだ。アンメモではこれも共通でMPメモリーポイントである。

 このようにアンメモにおいては普通のゲームでのお金としてのMPと魔力としてのMPがあり、魔力をお金でチャージするような仕様となっている。

 ちなみに魔力の自然回復手段はなく手動でチャージしかないのはプレイヤーからの不満点として毎回あげられるほどだ。


◎[あれ? けど、わん太はレベル上げてないよね、1のまま?]

∪[てっきり自動でレベルアップしてるものと思ってた]

∴[あ、わかった。もしかして武器が初心者の槍だから?]


「せいかーい! 初心者の槍はレベルが低い程攻撃力があがるので特に問題がなければレベル1のままのほうが強いわん」


▽[ん?! まてまて、ということはその槍は本当に初心者の槍で効果もフレーバーテキストの通りってことか?]

∈[あ、もしかしてダンマスだからしってたのかにゃ? ずるじゃないかにゃ?]


「うーん、ダンマスだからってわけではないわん。ちなみにドロップアイテムの設定も知らないアイテムは不確定名になってる力の入れっぷりというか、どちらかと言うと手の抜きっぷりわん」

 アンメモにおけるアイテムなどの名前のほとんどは本当にプレイヤーが名前をつけるまでは決まっていないのだろう。

 このほとんど現実リアルと変わらないような世界でそこらに生えている雑草一つ一つに名前をつけておくわけにもいかないと考えると一つの解ではある。


「それで、このローグライクな不確定アイテムだけど昔ながらのゲームと違って実際のアイテムを知っていると当然ながら判別はできるんだわん」


◆[あー、確かに。特に武器とかなら形や装飾でわかるか]

◎[それって、ローグライクなコンセプトの敗退なのでは……]

◯[草www ただのハクスラ]


「はうっ、確かに。ちなみにハクスラは敵を殲滅してアイテム収集するようなゲームわん」


◆[雑なハクスラ解説w ハクスラでも良い気がするけど、それならそれでボス戦っぽいのとかはあるの?]

▽[あっ、ボス戦はありそうだぞ。ほら、その部屋の中央見てみろ]

∈[転移陣にゃ! でも、なんか禍々しいのにゃ]


 五層へと通じる転移陣はこれまでと違って明らかに何かあると言わんばかりの禍々しい光を放っている。


「なかなか、良い勘をしてるわん。そう、五層毎にボス戦を実装することになったわん。ダンジョンに入れる時間が限られてるし、メリハリをつける必要もあるからってことで――」


―― 次の階に移動しますか?

  【*】 移動する/ボス戦(未実装)

   * 移動しない

   * ログアウトして中断する

   * ダンジョンから帰還する


◯[ん? んんん~ん?! 未実装?]

∴[ダンジョンから帰還するがあるな。これは、どういう扱い?]

▽[おい、ここまで期待させといて未実装ってなんだよ未実装ってwww!]


「いや、ほら、時間とかコストとかそこはそれいろいろあるわん……。まあ、一旦置いといて、ここで『ダンジョンから帰還する』メニューが増えるわん」


 ボス戦前後の転移時のメニューには『ダンジョンから帰還する』が増える。

 死なずに帰還した場合、アイテム、スキルの一部をそのまま取得できる。


∈[持ち帰れるのは一部なのかにゃ?]

◆[見るからにドロップ率が高いから全部持ち帰れたら色々破綻するだろ……]

▽[アイテムはともかく、スキルは入手手段が限られてくるから欲しいな]


「やっぱりスキルは欲しいよねぇ、って今回一つも拾ってないわん? あれ?! 基本的なスキルは拾える設定だったはずなのに……」


◎[で、このダンジョンはいつ潜れるようになるん?]

※[う、運営からアナウンスがあってからじゃないかな……]

∈[今のところわん太だけがアイテム取り放題かにゃ?]


 ダンジョンマスターはダンジョンを管理し、モンスターやドロップアイテムを設定することができる。

 それは上位の生産スキルと言っても過言ではないだろう。


「そう思ってた時がボクにもあったわん……。けど、けどね、各種設定にはMPを使うわん。そして、造ったダンジョンに入ってもデバッグモード扱いでアイテムもスキルも実際には手に入れることが出来ないんだわん……」

 ちょっと思い出して崩れ落ちる。


∈[そ、それは大変だにゃ……]

▽[お、おう、それじゃダンマスのメリットってなんかあるのか?]


「……ダンジョンで遊べる? ほ、ほら、配信はしていいから配信者としては今のところオンリーワンのコンテンツわん。というわけで、みんなからは面白そうなダンジョンのアイディア募集中わん。良いダンジョンができたらまた配信するってことで、今回はここまでわ~ん!」


―― 本日の配信は終了しました……






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