わたしの好きないろ

冬野瞠

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「わたしの好きないろ

 三年二くみ  わたらい はな


 わたしの好きないろは『あかいろ』です。お父さんが作ってくれるのみものがあかいからです。

 そののみものを、お父さんはいつもとくせいドリンクと言っています。そのときのお父さんのかおわとてもうれしそうです。

 わたしは学校からかえるとあかいのみものをのみます。お父さんはのみものをひやしてくれていて、夏にのむとすごくおいしいです。わたしはあかいろが好きだから、ゆっくりのみものを見ていたい。ですが、お父さんははやくのみなさいと言ってきます。それがちょっとだけいやです。

 のみものはじかんがたつときれいなあかいろがちゃいろになってしまって、味もあまりおいしくありません。なのでお父さんがそう言うのもしかたないと思います。おいしくなくてもお父さんがせっかく作ってくれたので、がんばってのみます。

 わたしはとくべつなにんげんなので、お父さんはわたしにとくべつなのみものを作るそうです。わたしの中にふうじられた『ぬぶろいさま』をしずめるためには、とくべつなのみものをまいにちのまないといけないとお父さんのくちぐせです。

『ぬぶろいさま』はいつもわたしやわたしたちを見ています。」




 別紙に示した作文は、令和×年×月×日に当校の職員室にて発見されたものです。提出された三年二組の作文課題に混入していたものですが、「わたらい はな」という生徒は現在も、記録をさかのぼっても当校には在籍しておりません。

 また、作文の文字の成分解析をおこなったところ、豚と犬と猫の血液、その他データベースに存在しない血液を混合して筆記に使用しているとの結果を得ました。

 当校の教職員の皆様におかれましては、以下三点の周知をお願い致します。


 一、同様の作文を発見した場合は、速やかに教頭に届け出ること。

 二、「ぬぶろいさま」に関しては絶対に調べないこと。

 三、放課後に渡り廊下を通る際は目を伏せること。


 以上、よろしくお願い致します。

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