人を真似して生きよとて
明鏡止水
第1話
明鏡止水は、元気だが元気がない。
初めに行っておくと面接は「採用」された。
良かった。
病気のことも気遣ってもらえる。
小説を二作ほど書いて、一つは消去したのだが、リストにはまだ残っている。不思議だ。
自分は一体何が書きたいんだろう。
買い溜めしていた漫画を一冊読んだ。
メルカリでローゼンメイデンの漫画を探した。
昨夜は深夜まで動画配信サイトでPSYCHO-PASS3を頑張って見ていた。3月中に見ないと配信停止になってしまう。くにづかやよいさんが出てきてくれて嬉しい。
就職に必要な書類も集めている。
車に関するものからマイナンバーカードとか運転免許証とかそれの写し。
住民票とかも必要らしい。
初めてコンビニで出してみた。ちょっと感動。
今まで市役所でやってたもんね。
健康診断も受けなきゃらしいけれど用紙も貰わなかったし、3項目だけ調べればいいらしい。尿とか。
朝だけ食べなければいい、と思って夜中にチョコレートや納豆ご飯を食べたらしっかり、ちょびっと蛋白が出てると言われる。あと脱水。
脱水?
みたいな。
職業訓練の元クラスメイトは今台湾にいて台湾のフルーツや犬さんを見ているらしい。
私も海外行ってみたいな。
30過ぎたらもう怖いものってないと思ってた。
でも実際はまた乗り物恐怖症になるのが怖いし、新幹線のニュースも複雑な気持ちで見ている。
せっかく面接先に採用されたのだから喜べばいいのだが。
なんだかなあ、である。
母が焼肉をしよう! といってカシラやタン、豚ステーキを買ってきてくれた。
そこ、外食じゃないんだ……。まあ、母外食嫌いだしな。コンビニも嫌ってるし。
シャトレーゼの、ショコラケーキも買ってもらった。縦長に大きくて餅が乗っている。
全部食べるのも気が引けるので弟と半分こした。
祝福はされている。
4月の初めに勤めようと思っている。
それまでに旅行に行きたかったなあ。
そんなお金はないのだけど。あってもびっくりするくらいの金額をグッズに使っているのだけど。
姪っ子と甥っ子が私の勉強が修了したこと、とある施設に採用が決定したことを知ると姪が、
「じゃあ、おいわいしなくちゃねっ!」
と、すぐ折り紙で作品を作ってそれにメッセージを書いて、さらにそれを折り紙の台紙に貼って飾ってくれた。
困惑した。
学校を頑張ること、お仕事を決めること、これから頑張ることを、素直に応援してもらえる。
私はもらった作品のメッセージから目を逸らすわけにはいかない。
飾らなくては。
飾って、仕事が上手くいかなかったらこれを見て頑張る。
そんな自分を、これから作らなければいけない。
子供の純粋な応援に、私は気負っていた。
喜びとか励みとかより、こんなにしてもらって、自分は思いに応えられるだろうかと怖気付いていた。
世の中ではよく子供が両親のお仕事をする姿を応援しているが、世の親はこんなに複雑な気持ちだったのか。
頑張ってやりたいけど、ほどほどの方が長続きするし、生活と家族を支える収入のためにやっているし。子供達にパパ! ママ! 仕事がんばってね!
いつもありがとう、と言われる気持ちがほんの少しだけ分かった。
がんばってやりたい。
がんばってやっている。
その笑顔と言葉がどれほど尊いかよくわかっている。
それでも、親戚の子供たちからエールを送ってもらった自分はビビっている。
こんなに応援してもらえたのに、すぐダメになったらどうしよう。
企業で戦う戦士たちよ、尊敬します。
明鏡止水は、ビビってる。
こんな時は自分を統合失調症にした奴のことを考える。あの女が不幸になっていることを望んでいる。末代先まで呪ってやる。
それでももし、私が人を呪うせいで、姪や甥や妹たちに不幸が舞い降りるなら、私はこの呪を止める。
でも、障がいのあるきょうだいのことは嫌いなので、そいつが傷つくのはいい気がする。
あいつはよく作業所にしっかり通うし、家の手伝いもする。皿洗いも丁寧にしてあとで食器も拭く。はっきり言って私よりいろんなところへ行って清掃などや会社見学、実習をしている。
それでも、私はあいつが嫌いだ。チビの頃は可愛かったと思う。でも、あいつが中学生くらいの時に気持ち悪くなって家族でも嫌になった。
あいつと将来一緒に住みたくない。
殺意はわかない。でも病気や事故は願っている。
金だ、金。金があればいい。
きょうだいも深夜1時まで幻覚を見て一人で喋って他の人格と喋ってる。
狂ってる。
もっと、普通に生きたかった。私も台湾や韓国やもっと遠いところに行きたい。東京を庭だと思いたい。
何が言いたかったんだろう。
とりあえず。
明鏡止水。採用される。
自分の人生を採用できないのに。辛い。
人を真似して生きよとて 明鏡止水 @miuraharuma30
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