新たな世界で統一国家を作るまで
百日紅琥珀
第1話ぼくは転生した
民は喝采をあげている。空は青く、雲は一つもなく、世界の統一を喜ぶかのように。
ぼくは死んでしまった。とある大学の法学部で政治を学んでいた学生だったが、ある日の事故で命を落とした。ぼくには夢があった。それはこの国をより良い国にするという政治家としての夢だ。しかし、死んでしまったことでその夢を叶えることはできない。叶わぬ結末に悔いが残った。
「生きたい…」 そう願った時、ぼくは奇跡を目の当たりにした。
「奥様、よくおがんばりになりました。元気な子がお生まれになりましたよ。」
そう言ったメイドらしき女性がぼくをおくるみで包み、別の一際目立つ服を着た女性に手渡した。
「あら、よく泣く可愛い子ね。」
「アンナ、よく頑張ったわ。」
今、ぼくを抱いているこの女性がぼくの母親であり、名前はアンナらしい。そして、もう一人、喜んでいる男性がぼくの父親、フリードリヒだ。ぼくはどうやらこの裕福な貴族の家に生まれ変わったようだ。ぼくは前回叶えられなかった夢をこの世界で叶えると誓う。
しかし、生まれたばかりでまだすることが限られている。話を聞くに、この国はノルトシュタイン王国だという。そして、うちが公爵様の領地の一部を任せられている子爵家であることがわかった。公爵様の名前はまだわからないが、うちがハーゲン家だということもわかった。そして、ぼくの名前はカールだ。
そうこうしているうちに3年の月日が経った。
「カール様、お着替えをお手伝いに参りました。寝ぼけていてはお食事に間に合いませんよ。」 この食事や着替えといった身の回りの世話をしてくれているのがぼくのお付きのメイド、メリィだ。彼女は少しドジなところがあるが、優しくて素晴らしいメイドだ。ちなみに、スタイルもいい。
「父上、母上、おはようございます。」
『カール、おはよう』
父と母はほぼ同時に挨拶を返した。このことからも、ぼくの父と母は仲がいいことが伺える。また、母のお腹には新しい命が宿っており、弟か妹かはわからないが楽しみだ。
「カールは今日は何をするのかい?」
「父上、今日はメリィとこの国についての勉強をする予定です。」
「カールはまだ3歳なのに、勉強なんてえらいなぁ!うちの子は天才かもしれない。ははっ!」
そして、父は続けざまに
「まだ早いと思っていたが、家庭教師をつけてもいいかもなぁ」
と言う。通常、家庭教師は子供が6歳になるとつけるのが当たり前である。このことにぼくはこの機会を逃すわけにはいかないと思った。この国をよくするためには、もっとこの世界の知識が必要だと思ったからだ。しかし、その時、
「まだこの子には早いんじゃない?言葉を覚えるのは早かったけど、もう少し自由にさせるべきだわ」と母が言う。
やばい、このままでは家庭教師が来るのが遠のいてしまう。と思ったぼくはとっさに
「いえ、母上。私はこの国のことがもっと知りたいのです。」 と言った。
すると母は
「あら、カールは勉強が好きなのね。ごめんなさいね。私はカールのしたいことをさせたいと思っていたのに。」 と言うので、
「いえいえ。母上は私のことを思って言ってくれたのだと理解しています」と答えた。この時、ぼくはこの二人の元に生まれてよかったと思った。
この後、家庭教師が決まり、うちに来ることになった。
朝食が済んだ後、メリィとの勉強の時間が訪れた。勉強といっても、自由時間の中で屋敷の図書館で本を読みながら、分からないことはメリィに質問するといった時間だが、うちの屋敷のメイドは領内の村の中から選ばれ、簡単な教育しか受けていないため、わからないことも多い。そのため、メリィにも理解できないことが多い。それでも、この時間をぼくは大切にしていた。小さな時からそばにいてくれたメリィと話すことができるからだ。メリィはときどき申し訳なさそうにしているが、そこまで気にする必要はないとぼくは考えている。
そのようにメリィとの勉強を続けて数日が経ち、ついに家庭教師が来る日が訪れた。父フリードリヒの仕事部屋へと呼ばれたぼくは、扉を開けて驚いた…
新たな世界で統一国家を作るまで 百日紅琥珀 @shirokuma0110
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