私が実際に体験した怖い話

こーろぎガラガラ

深夜のトイレで…

 これは、私が高校2年生だった頃に実際に体験したお話です。


 当時、私はコツコツと勉強をするのが苦手で、いつも試験日の前になると慌てて知識を詰め込むように勉強をする、というのが習慣になっていました。

 そのため、いつも試験日前には深夜遅くまで起きて泣きそうな顔をしながら、赤点だけは取らないよう必死に試験範囲の暗記をしていました。


 高校2年の最後の期末テストの前夜にも、私はなんとか留年だけは回避しようと必死に深夜まで勉強をしていたのですが、季節は冬だったこともあり、眠くなるから暖房もつけずに机に向かっていたことが災いしたのか、私は深夜の2時過ぎくらいにお腹を壊してしまいました。


 トイレの中に、試験範囲のノートを持ち込んで腹痛と闘いながら必死に暗記をこなしていると、私の背中側にある換気用の小窓から、コツンと何かが窓に当たったような音がしました。


 私が昔住んでいた実家は、そこそこ田舎なところで、家の周りにはいくつかの民家を除いてほとんど田んぼしかないような所でした。

 そのため、窓に虫がぶつかって音を立てることなんてしょっちゅうで、いつもの私なら対して気にもとめないようなことでした。


 しかし、その日は試験前で気が立っていたこともあり、背後から聞こえたコツンという音が妙に気になってしまい、私は背後を振り返り音がしたであろう窓を凝視していました。


 時間にして数秒ほど小窓を眺めていた私でしたが、よく見るとトイレに入ってきた時と少し違っていることに気がつきました。


 スライド式の2枚の小窓の、左側のガラス部分の1番下の所に小さな紅葉のようなものが張り付いていたのです。


 私は、それをみて一瞬なにか違和感を覚えつつも音の正体がわかって少しだけ安堵しました。


 しかし、なぜだか妙な胸騒ぎがした私は窓から幽霊が飛び出してきたらどうしよう、パンチって当たるのかな?なんてことを考えて気を紛らわそうとしました。


 そして、ふと窓のロックに目をやった時鍵がかかっていないことに気がつきました。

 いくら、人が入らないくらいの大きさの小窓とは言え一階のトイレの窓が鍵もかかっていないとは不用心だなと思い、私が小窓のロックに手を伸ばそうとした瞬間でした。


 左側の小窓が、ズズッという音を立て右に一センチほど動いたのです。


 私は、伸ばそうとした手でとっさに窓をパンチして、ものすごい速さで窓にロックをかけました。


 ばくばくと高鳴る心臓と、ものすごい速さで巡る思考とでパンクしそうになった私は、すぐにトイレから飛び出して布団の中に頭を突っ込んでしまいました。


 私は、布団の中で震えながらも少しだけ冷静になった頭で状況を整理しました。

 つまり、私がトイレの小窓に張り付いた紅葉だと思っていたものは、紅葉などではなく、実は人間の3本の指だったのです。


 その後私は、何故だか音を立てたら殺されるかもしれないという強迫観念にかられてしまい、勉強はおろかろくに寝ることもできずに結局朝まで布団の中で震えて過ごしました。


 次の日の朝、家族にそのことを報告するとどうして私達をそのときすぐ起こさなかったのかと両親からは怒られてしまいました。

 そして、トイレの外側の壁の方になにか痕跡が残っているかもしれないと父が言ったため、両親と私で現場を確認しに行きました。


 そこには、壁の砂煙の汚れの中に、人が背中を押し付けて座っていたような跡がはっきりと残っていました。


 後日、私の実家の風呂場やトイレの窓には外側に鉄製の格子が取り付けられることになりました。


 以上が、私が実際に体験したトイレで出会した幽霊よりも怖い人間のお話でした。

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私が実際に体験した怖い話 こーろぎガラガラ @koh_rogi

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