第5話 わたしらしいからピンク
初夏になって、みんな夏服を着てくるようになった。
この季節になって、
薄手のピンクのブラウス、ピンクの
ピンクのTシャツを着て来たときには、そのTシャツの下の胸がいい具合にふくらんでいるのがわかって、わたしはごくっと生唾を飲み込んだけど。
どの服も、倫恵の、活発で、だれも拒まない性格が出ていると思った。
思ったけど。
また、帰り道に倫恵にきいてみた。
「倫恵、夏になって、着るもんみんなピンクに戻ったけど、なんでなん?」
すると、倫恵は
「いろいろ着てみて、やっぱりわたしにはピンクが似合うて気ぃついたから」
と幸せそうに言った。
「それに、来年になったら中学生やから、制服として自分の好きな色の服を選ぶわけにはいかへんやろ? ピンクの服着たいからて、制服のない学校を選ぶ、いうのも違うと思うし。そやから、いまのうちやと思てな」
倫恵はことばを少し切ってから、
「女の子らしいからピンク、やのうて、わたしらしいからピンク。それでええと思うてな」
そう落ち着いた声で、わたしのほうを見て、笑った。
大人っぽい、でも、これまで倫恵が見せていたいいところをぜんぶすくい取ったような、いい表情だった。
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