第4話 嫉妬というのをはじめて感じた

 それからしばらくして、倫恵ともえはピンクではない服を着て来るようになった。

 レモン色のふりふりの服に白のスカートを着て来たときには、倫恵の、柔らかい、優しいキャラが現れていると思った。

 胸の下に白いラインが入っている濃い紺色のワンピのときには、この子、こんなに「男前」だったのか、とひそかにびっくりした。面と向かって

「あんた男前やなあ」

とか言うと怒りそうなので、何も言わなかったけど。

 赤のジャンパースカートを着て来たときには、この子、こんなに活発でやんちゃやったんや、と思った。

 これだけ短い期間に新しい服を何着も揃えられるというのは、さすがお金持ちのお嬢様。

 それに。

 倫恵、何を着ても似合う。

 何を着ても似合う、というのは、それぞれの服が引き出す「個性」みたいなのを、それぞれきちんと持っているからだと気づいた。

 うらやましい。

 嫉妬というのを倫恵に対してそのときはじめて感じた。

 いや。

 いい子のお嬢様の倫恵に対して嫉妬なんか感じたのは、これまで、そのときだけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る