第3話 おばあちゃん、優しいから
ピンクの服がとても似合う
それなのに、どうして、倫恵はピンクの服がいやなのだろう?
トリあえず、きいてみる。
「なんでいやなん?」
いや、今回はもう「とりあえず」でいいのか。
「女の子やからピンクの着なさい、て」
倫恵は口をとんがらせて、言う。
「わたしの服、おばあちゃんが作ってくれるんやけど」
わたしは正直に驚いた。
「おばあちゃんの手作りなん?」
「いや、そうやないて」
倫恵は否定する。
「おばあちゃんが、家にテーラーさんていうのを招いて、採寸して、注文してくれるんよ」
「はあ」
さすが、お嬢様。
「そのとき、細かいところのデザインとかはきいてくれるんやけどな、色はピンクて最初から決まってて、口、出させてくれへん」
そこまでやってくれはるんやったら文句言うとかぜいたくやろ、というのが、わたしの正直な気もちだったが。
「布地の見本にほかの色のもあったから、いっぺん、わたしが、ピンクやないのを、「こっちがええ」て言うたこともあって、テーラーさんが「それやったら別の色のも見ます?」て言うてくれたのに、おばあちゃんが「女の子なんやからピンクのを着るもんでしょ?」て言うて」
また、口をとがらせてわたしを横目で見る。
横目で見て、全身を見回す。
「
「いやいや」
テーラーさんに家に来てもらって作ってもらってる倫恵にあこがれられるようなものは何もない。
いま着ているのは、デニム地の赤のワンピやけど。
これがうちに届いたとき、お母さんは
「ネットで見てたらこれ安かったから幸子に買ったげた」
と言ったのだ。
だいたい、そんなのばっかり。
幸子の服を選ぶ基準は、似合うかどうかよりも、安いかどうか。
そっちに話が行くのはいやなので、
「それやったら、倫恵、おばあちゃんに正直に言うてみたら?」
と、倫恵に言った。
「倫恵やったら、そういう話し合い、できるやろ? 委員長としていつもやってたことを、おばあちゃん相手にやればいいんやから」
学級委員会のときとか、クラスのなかで対立があっても、それぞれの意見をきいて、最後にまとめてしまう。
そういう話し合いができるのなら、おばあちゃん相手に、服の色について話をするのもできそうなものだ。
「うーん」
と倫恵はいやそうな声を立てた。
「おばあちゃん、優しいからさあ。あんまり
わたしは
「それやったら、しようがないね」
と言うしかないと思う。
でも、ちょっと待った。
ちょっと待ったら、倫恵は
「うん。でも、言うてみるわ。ありがとう」
とわたしに言ってくれた。
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