運命を受け入れた吸血鬼の語る葛藤と苦悩、愛の物語

 自らを訪ねて来た話者に対し、吸血鬼が己の半生を語り聞かせるという構成に、今なおインポッシブルなミッションに挑む某ハリウッドの名優が若き日にヴァンパイアを演じた古い映画を思い出しました。

 というのはともかく、後半の冷静な語り口調の文のはしばしに、吸血鬼の運命に対する話し手の葛藤や苦悩、そしてなにより彼の抱いた愛情を感じました。

 最後にはその愛すらも手放し遠ざけて自らの運命を受け入れる結末に、淋しくもほのかな温かさを感じる読後感の作品でした。